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「別に。練習期間を取ろうって言いだしたのは、俺だし」
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目元をゆるませ、照れたように恭平が首をかしげる。ふわりと胸が羽毛に包まれたような心地になりながら、期待をしすぎてはいけないと譲は自分を戒めた。
「でも、恭平はなんかいつも忙しそうだし。予定、けっこうあるんじゃないのか」
「彼女はいなくなったし、クリスマスまでの間だけだし。誘われても断るし。つうか、二人の予定が合わない時に、他の奴らと遊べばいいしな」
全力で目の前の遊びに挑もうとする恭平の笑みに、譲の胸がわしづかまれる。頬が熱くなるのを感じた譲は、それを誤魔化すために慌てて味噌汁を掴み、啜った。
「嫌か?」
「別に。練習期間を取ろうって言いだしたのは、俺だし」
「なら、決まりだな。食ったら予定を照らし合わせて、いつ会うかだけでも決めておこうぜ。って、用事があるんだっけ」
恋人のフリをする練習は、せいぜい週に一回だけ。それも、ほんの少しの時間が出来ればいいほうだろうと思っていた譲は、緊張をしたまま心を浮き立たせるという、奇妙な感覚に捕らわれた。
「用事は、後でもいいかも」
さっきまでつかえていたはずの喉が、うそのようにスルスルと食事を通した。
◇◆◇
自室でスケジュール帳を開き眺めながら、譲は自分の頬がだらしなくゆるんでいることを自覚していた。二人の予定を照らし合わせ、少しでもデートの時間を作れると判断した日はすべて、会うことになった。週に、最低でも三日は会える。こんなことなら、もっとバイトのシフトを減らしておけばよかった。
スケジュール帳をしまい、電気を消してベッドに横になれば、恭平の声が耳に蘇る。
――彼女はいなくなったし、クリスマスまでの間だけだし。誘われても断るし。つうか、二人の予定が合わない時に、他の奴らと遊べばいいしな。
つまり『仮の』という言葉つきだが、恭平は自分と優先的に、恋人同士として過ごす気でいるということだ。
友人を騙す練習のためだろうが、女装をしていようが、期間内は恭平と恋人同士。
くふ、と譲の唇が歪んだ。心が羽箒でくすぐられているようだ。譲は自分を抱きしめ体を丸めて、くすくすと全身で笑った。
きっと、終わるときには体中を包み込んでいる、このふわふわとあたたかな感覚の、倍以上の寂しさを覚えることだろう。けれど今は、叶うはずの無かったことが、勝負事のための期間限定であったとしても、実現する喜びに浸っていよう。全力で、恭平との恋人期間を楽しもう。
体の内側をくすぐられているような心地に、譲はせわしなく寝返りを打ち、女装をした恭平と、どんなところに行こうか、どんなことをしようかと考える。
やはり最初は定番の映画デートだろうか。それとも、どこかショッピングモールをうろつくほうがいいか。恭平が普段行くようなカフェに連れて行ってもらうのもいい。デートについて、スマホで色々と下調べをしたり、大学でそれとなく誰かのデート話に聞き耳を立ててみたほうがいいかもしれない。いや、恭平は彼女を切らしたことが無いのだから、そういうことには詳しいはずだ。恭平に色々と聞いたほうが――。
「でも、恭平はなんかいつも忙しそうだし。予定、けっこうあるんじゃないのか」
「彼女はいなくなったし、クリスマスまでの間だけだし。誘われても断るし。つうか、二人の予定が合わない時に、他の奴らと遊べばいいしな」
全力で目の前の遊びに挑もうとする恭平の笑みに、譲の胸がわしづかまれる。頬が熱くなるのを感じた譲は、それを誤魔化すために慌てて味噌汁を掴み、啜った。
「嫌か?」
「別に。練習期間を取ろうって言いだしたのは、俺だし」
「なら、決まりだな。食ったら予定を照らし合わせて、いつ会うかだけでも決めておこうぜ。って、用事があるんだっけ」
恋人のフリをする練習は、せいぜい週に一回だけ。それも、ほんの少しの時間が出来ればいいほうだろうと思っていた譲は、緊張をしたまま心を浮き立たせるという、奇妙な感覚に捕らわれた。
「用事は、後でもいいかも」
さっきまでつかえていたはずの喉が、うそのようにスルスルと食事を通した。
◇◆◇
自室でスケジュール帳を開き眺めながら、譲は自分の頬がだらしなくゆるんでいることを自覚していた。二人の予定を照らし合わせ、少しでもデートの時間を作れると判断した日はすべて、会うことになった。週に、最低でも三日は会える。こんなことなら、もっとバイトのシフトを減らしておけばよかった。
スケジュール帳をしまい、電気を消してベッドに横になれば、恭平の声が耳に蘇る。
――彼女はいなくなったし、クリスマスまでの間だけだし。誘われても断るし。つうか、二人の予定が合わない時に、他の奴らと遊べばいいしな。
つまり『仮の』という言葉つきだが、恭平は自分と優先的に、恋人同士として過ごす気でいるということだ。
友人を騙す練習のためだろうが、女装をしていようが、期間内は恭平と恋人同士。
くふ、と譲の唇が歪んだ。心が羽箒でくすぐられているようだ。譲は自分を抱きしめ体を丸めて、くすくすと全身で笑った。
きっと、終わるときには体中を包み込んでいる、このふわふわとあたたかな感覚の、倍以上の寂しさを覚えることだろう。けれど今は、叶うはずの無かったことが、勝負事のための期間限定であったとしても、実現する喜びに浸っていよう。全力で、恭平との恋人期間を楽しもう。
体の内側をくすぐられているような心地に、譲はせわしなく寝返りを打ち、女装をした恭平と、どんなところに行こうか、どんなことをしようかと考える。
やはり最初は定番の映画デートだろうか。それとも、どこかショッピングモールをうろつくほうがいいか。恭平が普段行くようなカフェに連れて行ってもらうのもいい。デートについて、スマホで色々と下調べをしたり、大学でそれとなく誰かのデート話に聞き耳を立ててみたほうがいいかもしれない。いや、恭平は彼女を切らしたことが無いのだから、そういうことには詳しいはずだ。恭平に色々と聞いたほうが――。
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※作者Twitter【https://twitter.com/tiyo_arimura_】
※マシュマロ【https://bit.ly/3QSv9o7】
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