ひとりよがりなFalse Face

水戸けい

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「俺が男って、わかってるもんな。女のふりしてんの、気持ち悪いんだろ」

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「緊張しすぎ」

「こういうところ、入ったことがないし。どうすればいいのか、ぜんっぜんわかんないからさ」

「自然でいいよ。いつもの、譲のままで」

 そう言われても、恭平はいつもの恭平ではなく、本田薫になりきっている。自分もそれなりの演技をしなければいけないのではないかと、譲は記憶の中にあるドラマや漫画などの恋人同士のシーンを思い出そうとして、恋愛ものはさっぱり観ても読んでもいないという事実に行き着いた。

「ごめん」

「何が」

「なんか、俺、その……ごめん」

 恭平の顔が険しくなる。

「やっぱ、気持ち悪いか」

「えっ」

 低くなった声が聞き取りづらく、譲は前にのめって恭平の声を拾おうとした。

「俺が男って、わかってるもんな。女のふりしてんの、気持ち悪いんだろ」

 そんなふうに自分の態度が受け止められたなど、譲は思いもよらなかった。

「違うって。なんか緊張しすぎて彼氏らしいことできてないのが、なんか、悪いなと思って。それで、だから、別にその、そんなことは、思ってない」

 否定の声がつい大きくなって、離れた席にいた客がこっちを向いた。視線を浴びて気恥ずかしくなった譲が、さまよわせる目のふちを赤くする。

「スープでございます」

 店員がかぼちゃのポタージュを運んできて、気恥かしさをごまかすために譲はスプーンを手にし、あわてて口をつける。

「あつっ」

 予想以上の熱さに水を飲もうとし、飲み干して空になっていたグラスに気づき、伸ばした手を途中で止めた。格好悪すぎる自分にへこみ、消えてしまいたくなる。

「はい」

 恭平が、譲の手にグラスを押し付けた。

「あ、ありがとう」

 にっこりとする恭平を見つめたまま、譲は水を飲んだ。

「気負わなくていいから」

「うん、ごめん」

 幸せそうにクスクス笑う恭平が、スープを吹き冷ましながら飲み、譲もそれに倣う。サラダが運ばれてきて、恭平が取り分けた小皿を受け取った。パスタも同じように恭平に取り分けてもらい、パンのおかわりは店員が籠を持ちテーブルに回ってくるたびに、恭平が譲に「おかわりは?」と問うてくれた。
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