ひとりよがりなFalse Face

水戸けい

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「俺が、譲に惚れてることを感づいてたって――?」

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 鏡の中の自分を覗き込み、くるりと後ろを向いて肩越しに背後を確認し、最後に前を向いて全体をチェックし終えると、本田薫になった恭平は部屋を出て、履きなれてきたパンプスに足を入れた。

 女装をして家を出ることを、妹の和音は面白がり、両親ははじめ苦い顔をしていたが、恭平が何を言っても聞く耳は持たないと知っているからか、和音が何か言ったのか、五度目になれば平然と見送るようになっていた。

「いってきます」

「今夜も、晩御飯はいらないのよね」

「食べてくるから」

「譲君のおこづかいに、頼りすぎちゃだめよ。たまには、ウチに連れてきて御飯を食べなさい」

 キッチンから出て来た母親の言葉に、恭平は目を丸くして振り向いた。

「なんで」

「うすうすはね、感じていたのよ。恭平が、譲君の事が好きだって事。これでも母親ですからね。――それが、とうとうこうなっちゃったんだなぁって。まあ、和音が入り婿を探してくれるっていうし、孫の心配はしていないから。がんばってらっしゃい」

 何もかもを受け入れたと言いたげな母の、包み込むような微笑に恭平は眉根をぎゅっと寄せた。

「そういうんじゃ、ねぇし」

 顔をそむけた恭平に、母親が気づかわしげに笑みを深める。

「おとうさんとも和音とも相談して、恭平を応援することに決めたから。今はホラ、そういうのってアレなんでしょう? テレビでも、そういう人たちは苦労してるって特番をしていたし。だからね、家族が受け入れてあげないとって」

「っ、だから! そういうんじゃねぇから」

 吐き捨てるように言って飛び出した恭平は、しばらく走って立ち止まる。自分の知らないうちに、どんな家族会議がなされたのかは知らないが

「俺が、譲に惚れてることを感づいてたって――?」

 はっ、と鼻で笑う。この状況をいちいちうるさく言われることが無いのは、ありがたい。恭平の気持ちを尊重し、受け入れようとしてくれる家族というものも、とんでもなくありがたいのだろうとは思う。母親の場合は、テレビの影響が多分にあるのだろうが。

「期間限定だから、心配する必要なんかねぇよ」

 自分の呟きが呼び寄せた、冬の初めの空気よりもずっと冷たい風が、恭平の胸に吹いた。

◇◆◇

 待ち合わせ場所には、いつも譲が先にいる。こちらに意識を向けながら、けれど顔は反対側を見ている譲の肩を叩いて、お待たせと声をかけるパターンが定着していた。

「今日は、何しよっか」
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