ひとりよがりなFalse Face

水戸けい

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胸中で毒づく恭平の苛立ちに、不安が寄りそう。

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「別に、ウソだとは言ってねぇだろ」

「信用もしてくれてないでしょ」

「まあな」

 めんどくせぇなと思いながら閉店作業を済ませ、恭平はバックヤードに入った。

「先に着替えろよ」

 鞄を取り出し美佐に言えば、それじゃあと遠慮がちに彼女は更衣室に入り、カーテンを閉めた。

 テーブル席が六卓。カウンターが五席しかないチェーンのコーヒーショップは、バックヤードが狭い。荷物を入れる小さなロッカーと、店長室と言われている発注などを行うパソコンや書類などが詰め込まれている、ひとり入れば一杯となる鍵付きの小部屋。それと半畳程度の更衣室があるだけだ。当然、一人ずつしか着替えはできない。

 美佐を先に着替えさせて帰し、売り上げを夜間金庫に預けに行っている店長を、恭平は一人で待つつもりでいた。

 スマホを取り出し、ラインやメールの確認をする。いくつかに返事をしながら、譲からの連絡が無いことに肩を落とした。

 あれから待ち合わせのベンチに戻り、ギリギリまで待っていた。けれど譲の姿が見えるどころか、連絡すらも来なかった。

 ――待ってても無駄だからな。相模原恭平。

 忌々しい枝野晴彦の声を思い出して、歯噛みする。

 なんなんだ、アイツは。なんで譲は俺との事を、アイツに話したんだ。アイツとどういう関係なんだ。なんでアイツが電話に出たんだ。それほど親しいということか。なんでアイツ越しに、来ないと告げられなきゃいけねぇんだ。

 胸中で毒づく恭平の苛立ちに、不安が寄りそう。

 俺に会いたくないと、言いづらかったのか。だから変わりに、枝野晴彦に電話に出てもらったということなのか。

「そんなことを頼めるほど、アイツと仲がいいのかよ」

 小さく呻きながら、スマホを握りしめる。食いしばった自分の歯が擦れて鳴る音にすら、恭平はイライラした。

「お先にぃ」

 間延びした声で、美佐が更衣室から出てきた。

「おう」

 無意識に不機嫌な声で返事をし、恭平は美佐と交代した。

「先、帰ってろよ」

 じきに、店長が帰ってくるだろう。二人で待つ必要など無い。

「一緒に帰りたいな」

 もじもじとしてくる美佐に一瞥をくれて、恭平は更衣室のカーテンを引いた。強引に先に帰らそうとしても、食い下がられそうだ。
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