偽姫ー身代わりの嫁入りー

水戸けい

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リューイが、花が開くようにほころんだ。

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「そこから、アレスティは落ち着いた。でも、馴染んだわけじゃない。諦めた、とも違う。……うまく言えないけれど、抜け出したりすることは、しなくなった」

 そうして、王子としての教育を共に受けながら育ったのだと、フェリスの肩で顔を隠したまま、リューイは話し続ける。

「誰も、アレスティの深い部分はわからないんだと、思う。タレンティも、俺も、きっと知らないんだと思うんだ。その、誰にもわからない部分でアレスティはフェリスのことを受け止めて、あんなことを」

 深いため息をつき、リューイは顔を持ち上げてフェリスの頬を掌で包み込んだ。

「アレスティを、嫌わないで」

(ああ)

 リューイに見つめられながら、彼がアレスティの事を強く案じ、愛しているのだと感じた。彼という存在を、かけがえの無いものとして受け止めているのだろうと。その人の名誉を守るために、彼を止められなかった自分を悪く言い、彼の過去を語り、彼に向けられるかもしれない負の感情をフェリスから取り去りたいと、願っているのだろう。

「大丈夫よ、リューイ。私は、アレスティを嫌ったりなど、しないわ」

 小さな子どもに言い含めるように、言葉を切って丁寧に伝える。リューイが、花が開くようにほころんだ。

(でも――)

 フェリスの胸は、陰る。同情でも、何でも無く愛していると告げたアレスティの心は、本当にフェリスを愛しているのだろうか。母親と似た境遇のフェリスに、母の面影と憐れを感じているだけなのではないだろうか。だからこそ、フェリスを抱いたのではないのか。

 そんな疑念が、浮かんだ。

 ――何を思って逃げようとしたのかは知らねぇが、メイドとわかったんなら王女として扱う必要もねぇ。知っているのは、俺たち二人とタレンティだけだ。――この意味が、分かるか。

 あれは、どんな気持ちで口にしたのだろう。今すぐにドレスルームの扉を開けて、隠れているアレスティに聞いてみたい。けれど、今はリューイがいる。

(どうして、あの時あれほど乱暴に私を扱ったのかしら)

 けれど、本当の行為に及ぶときにはフェリスの体を気遣うように、腰に枕を当ててくれた。

(わからない)

 アレスティは何を思い、何を考えて自分をベッドに押し倒し、乱暴に扱ったのだろう――乱暴に扱うふりを、したのだろう。
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