52 / 80
リューイが、花が開くようにほころんだ。
しおりを挟む
「そこから、アレスティは落ち着いた。でも、馴染んだわけじゃない。諦めた、とも違う。……うまく言えないけれど、抜け出したりすることは、しなくなった」
そうして、王子としての教育を共に受けながら育ったのだと、フェリスの肩で顔を隠したまま、リューイは話し続ける。
「誰も、アレスティの深い部分はわからないんだと、思う。タレンティも、俺も、きっと知らないんだと思うんだ。その、誰にもわからない部分でアレスティはフェリスのことを受け止めて、あんなことを」
深いため息をつき、リューイは顔を持ち上げてフェリスの頬を掌で包み込んだ。
「アレスティを、嫌わないで」
(ああ)
リューイに見つめられながら、彼がアレスティの事を強く案じ、愛しているのだと感じた。彼という存在を、かけがえの無いものとして受け止めているのだろうと。その人の名誉を守るために、彼を止められなかった自分を悪く言い、彼の過去を語り、彼に向けられるかもしれない負の感情をフェリスから取り去りたいと、願っているのだろう。
「大丈夫よ、リューイ。私は、アレスティを嫌ったりなど、しないわ」
小さな子どもに言い含めるように、言葉を切って丁寧に伝える。リューイが、花が開くようにほころんだ。
(でも――)
フェリスの胸は、陰る。同情でも、何でも無く愛していると告げたアレスティの心は、本当にフェリスを愛しているのだろうか。母親と似た境遇のフェリスに、母の面影と憐れを感じているだけなのではないだろうか。だからこそ、フェリスを抱いたのではないのか。
そんな疑念が、浮かんだ。
――何を思って逃げようとしたのかは知らねぇが、メイドとわかったんなら王女として扱う必要もねぇ。知っているのは、俺たち二人とタレンティだけだ。――この意味が、分かるか。
あれは、どんな気持ちで口にしたのだろう。今すぐにドレスルームの扉を開けて、隠れているアレスティに聞いてみたい。けれど、今はリューイがいる。
(どうして、あの時あれほど乱暴に私を扱ったのかしら)
けれど、本当の行為に及ぶときにはフェリスの体を気遣うように、腰に枕を当ててくれた。
(わからない)
アレスティは何を思い、何を考えて自分をベッドに押し倒し、乱暴に扱ったのだろう――乱暴に扱うふりを、したのだろう。
そうして、王子としての教育を共に受けながら育ったのだと、フェリスの肩で顔を隠したまま、リューイは話し続ける。
「誰も、アレスティの深い部分はわからないんだと、思う。タレンティも、俺も、きっと知らないんだと思うんだ。その、誰にもわからない部分でアレスティはフェリスのことを受け止めて、あんなことを」
深いため息をつき、リューイは顔を持ち上げてフェリスの頬を掌で包み込んだ。
「アレスティを、嫌わないで」
(ああ)
リューイに見つめられながら、彼がアレスティの事を強く案じ、愛しているのだと感じた。彼という存在を、かけがえの無いものとして受け止めているのだろうと。その人の名誉を守るために、彼を止められなかった自分を悪く言い、彼の過去を語り、彼に向けられるかもしれない負の感情をフェリスから取り去りたいと、願っているのだろう。
「大丈夫よ、リューイ。私は、アレスティを嫌ったりなど、しないわ」
小さな子どもに言い含めるように、言葉を切って丁寧に伝える。リューイが、花が開くようにほころんだ。
(でも――)
フェリスの胸は、陰る。同情でも、何でも無く愛していると告げたアレスティの心は、本当にフェリスを愛しているのだろうか。母親と似た境遇のフェリスに、母の面影と憐れを感じているだけなのではないだろうか。だからこそ、フェリスを抱いたのではないのか。
そんな疑念が、浮かんだ。
――何を思って逃げようとしたのかは知らねぇが、メイドとわかったんなら王女として扱う必要もねぇ。知っているのは、俺たち二人とタレンティだけだ。――この意味が、分かるか。
あれは、どんな気持ちで口にしたのだろう。今すぐにドレスルームの扉を開けて、隠れているアレスティに聞いてみたい。けれど、今はリューイがいる。
(どうして、あの時あれほど乱暴に私を扱ったのかしら)
けれど、本当の行為に及ぶときにはフェリスの体を気遣うように、腰に枕を当ててくれた。
(わからない)
アレスティは何を思い、何を考えて自分をベッドに押し倒し、乱暴に扱ったのだろう――乱暴に扱うふりを、したのだろう。
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす
小木楓
恋愛
完結しました✨
タグ&あらすじ変更しました。
略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。
「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」
「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」
大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。
しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。
強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。
夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。
恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……?
「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」
逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。
それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。
「一生、私の腕の中で溺れていろ」
守るために壊し、愛するために縛る。
冷酷な仮面の下に隠された、
一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。
★最後は極上のハッピーエンドです。
※AI画像を使用しています。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる