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【告白】

19.

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「んっ、ふ……、ぅう」

 深い口吸いに、トヨホギは身をゆだねた。ただホスセリを慰めたいという願いが、トヨホギの緊張を解いている。ホスセリはトヨホギのぬくもりを求めて、深く舌を差し入れた。

「ふっ、うう……、ぅんっ、ん、うう」

 激情にまかせたものを覚悟していたトヨホギは、あまりにも優しい舌撫に泣きたくなった。どこまでこの人は、自分を気遣ってくれるのだろうと、愛されている喜びと切なさに胸がふさがる。

 もっと自侭にしてもいいと伝えるために、トヨホギはホスセリの頭を抱きしめ、舌を伸ばした。

「んぅっ、う、ううう……、ふ、うう」

 伸ばした舌をきつく吸われて、快楽が背中を駆ける。思わず浮いたトヨホギの腰に、ホスセリの力強い腕が回った。

「んっ、ぅ、うう」

 浮いた腰がホスセリの腕に支えられる。口吸いの心地よさに肌が粟立ち、四肢が弛緩する。しっかりと淑女らしく閉じられていたトヨホギの脚が、わずかに開いた。ホスセリの太ももがそこに分け入り、自分の体の幅にトヨホギの脚を開かせる。

「んっ、う」

 トヨホギは膝を立てて、ホスセリの腰を挟んだ。ホスセリの手が布越しにトヨホギの乳房を掴む。内側に揉み込むように刺激され、トヨホギは腰を震わせた。

「ふっ、んぅう、うっ」

 口を塞がれたまま乳房をこねられ、トヨホギは甘い刺激に身をくねらせる。ホスセリのたくましい体が重しのようにかぶさって、腰に回った腕が魚のように敷布の上で泳ぐトヨホギの身を逃すまいとしていた。

 どこにも行く気はないと、トヨホギはホスセリの頭を強く抱えて、彼の腰に脚を回した。はしたないという意識は、とっくに霧消している。ホスセリを癒し慰めたいという気持ちで、トヨホギはいっぱいになっていた。

 子どものころから、おまえはホスセリの妻になるのだと言われ続けて生きてきた。そうなるものだと、疑問も持たずに受け止めていた。妻とは夫を支えて守るものだと、母から折に触れて教わった。ホスセリはただの男ではなく、エミナの民を守るために働く人なのだから、心身ともに傷つき疲れ果てて家に帰ってくるだろう。それを癒し、支えて守ることこそが、妻であるトヨホギの役目なのだと。
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