チートは必要でした

エイリス

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災害まで2日

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目覚ましのベルで目を覚まし起き上がる。
「てい!あれ、休日じゃん・・・そうか、バイトに行く約束したんだっけ?」
休日に早く起きるなんって、高校時のネットゲームでボス狩り以来か?
休日限定で出現するモンスターで、確率で出るレアドロップ狙い。
課金アイテムで率アップらしいが・・・
無課金の俺は、倒しまくって出るのを待つしかない。

「懐かしいなぁ。落ち着いた後に後継のゲームがでたけど」
両親が残した遺産とバイトでお金を貯めて、国立医療大学に入ったんだよなぁ。
勉強とバイト生活で、ゲームをする時間も無くなかった。

どうせ一緒にゲームする仲間もいなかったし。

ツーーー

頬を涙が伝う。
ふとした瞬間に涙が出る。涙脆くなったかなぁ。

あの日、涙は枯れたと思ってたんだがな・・

違う世界。俺の世界とは違う。そうは思うんだけど。
もう会えないと思ってた人と話せる・・

ふぅぅ。深呼吸する。

「よし。バイトまで少し出かけるか」
家にいると、余計な事を考えそうだ。

家を出て、近所の店に行く事にする。

「おおお」
お店に到着して感動する。
本屋だーー。

通ったなぁーここ。

本屋の中に入り、本を物色・・・物色・・・

知らない本ばっかりだ・・
知ってる本も中身が違うとか・・・
9個のボール集めになってる・・
山賊王になるって、駄目じゃね?

欲しい本はなかった・・・読んだら心が折れそうだ・・

「んーー。早いが伊藤の家に行くか・・」


そして・・・
「待て待て待て、俺は着ないって言ったよな?」
「まあ、良いから、良いから。似合うよきっと」
「そう言う問題じゃねぇ!ってかなんで俺のサイズがあるんだよ!」
伊藤の家に着いて、部屋に案内されて出されたのは
フリフリのメイド服だった・・・謀ったな!

「そこの柱で身長が分かるんだって」
「測ったな!」
「この前のエプロンつける時に、サイズとか見たらしいよ」
「なんてこった!」
抵抗むなしく、服を着せられ化粧をされ、もうどうにでもなれとウィッグを被って完成。

「うわ。誰だよ!こいつ・・」
「私の腕よ!」
凄いな。化粧って。衝撃過ぎる・・・

「でも、声でバレないか?」
「大丈夫よ。男の娘もいるって書いてあるし」
知らんかった・・

厨房及び接客の手伝いまでやらされた・・・
美人な新人ちゃんが入ったねぇー

と言われて鳥肌が立った。明日は断ろうかな・・

「セイちゃん。7番おねがーい」
「う、うっす」
「セイちゃん?それ、かわいくない」
俺の返事に、伊藤姉が不機嫌な顔をする。

「セイちゃん。7番おねがーいねw」
「くっ・・はーいw(裏声)」
やけくそに答える。

地獄の時間であったと記しておく。

そして、俺は気付いていなかった・・
この時、客が俺の写真を撮りSNSに挙げているのを・・

「お前、良く平気だよな」
「いや、平気じゃないから」
ピーク時間が過ぎ、控室で燃え尽きてる俺が、由紀に告げたが真っ赤な顔で否定する。
ああ。かわいい。かわいい。
いかん。俺!壊れるな!正気を保て!

「ノリノリじゃん!」
「もう慣れるしかないんだよ!抵抗は無駄なんだ!あの姉だよ?わかる?」
わかる・・

「ネットゲームの課金を稼げると思ったのが運の尽きだよ!厨房は料理が出来なくって、
配膳って話で、最初は執事みたいな服だったんだ。」
「そうなのか?」
「そうなんだよ。そしたら姉さんが、この服着てみろってメイド服渡してきて。
最初は抵抗したけど、バイト代に負けてきたんだ・・・」
他人事じゃないな・・・

「そしたら姉さんよりも人気になっちゃって」
ん?

「毎週の人気投票で1位に選ばれちゃって」
そんなのあるん?心なしか嬉しそうなんだが?

「俺目当てのリピーターが増えて、し、仕方なく。えへへ」
こいつは手遅れだ・・

「そ、そっか、じゃあ。そろそろ帰るから」
「え?ちょ、ちょっと待って」
逃げるように控室から逃げようとする俺を由紀が手をつかんで止める。

「明日は、もしかしたら・・・」
「明日もお願いね、セイちゃん」
来れないと言って、出て行こうとした俺にドアを開けた先で伊藤姉が笑顔でお願いしてくる。

「えっと」
「お・ね・が・い・ねw」
「・・・はい」
あっさりと敗退した。

「じゃ、また明日・・」
「だから待って」
意気消沈して帰ろうとした俺を由紀が離してくれない。

「なんだよ」
「その恰好で帰るの?」
・・・・・・・・・・・・・

うぎゃあああ。女装したままだった・・・

赤面になりながら服を着替え、カフェから逃げるように出て行った。

「なんか。もう。疲れたな・・帰るか・・」
独り言を呟き、家路へと着いた。

疲れ果てた俺は、夕食(今日は父さんが作った)とシャワーを浴びて(風呂に入る力が残ってなかった)眠った。
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