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第5話
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「対象機体の名称は片井小花。今まで感情の起伏が大きいこと以外、特に大きな問題点はありませんが、件の山下加奈と親しい間柄にあったと思われます」
広い会議室で淡々と述べられる報告。
「本機体は山下加奈の事故現場を目撃し、記憶消去が実行される予定でした。しかし、山下加奈の『日記』流出及び、「外」の人間に知られてしまったことことにより実行が留保されています。脱走前には周囲に山下加奈のことを聞いて回る様子も確認されています」
会議室には十数人の人間がおり、皆渋い顔をしている。そのうちの一人が口を開ける。
「やはり、記憶消去を実行するべきではないでしょうか。現に当該機体は暴走し、ゲートを抜けています。市民に被害が出てからでは遅いですし……」
「でも、世間が黙っていないんじゃないですか? 例の山下加奈の件もありますから」
「黙っていれば問題ないでしょう」
「現状、どこから情報が流出するか分かりませんよ?」
「しかし、一々処分を保留していてはこの街の機能が破綻してしまいます」
結論が出ないまま議論は紛糾する。
そんな中、上座に座る年老いた男が提案する。
「ひとまず、彼女の処遇は私に任せてもらえませんか?」
彼の名前は竹内智之。この街の区長をしている人物だ。静岡市の四分の一の自治権を統括している。会議の出席者たちは「区長がそう言うなら……」と賛成の意を示した。
「―再起動プロセス完了しました」
近くから響いてくる声。手を動かそうとして、体に大量の機器が取り付けられていることに気づく。
「不良セクタを検索します」
「それは私がやろう」
見ると、そこには老人が立っていた。見たことがある。確か、この街の区長だ。
「おはよう」
「おはよう、ございます」
「気分はどうかね?」
「気分……」
「どこか調子が悪いとか、違和感を感じるとか」
「特に……」
このやりとりは定期メンテナンスに似ている。
「私は竹内智之。君の名前は?」
「片井小花です」
そうだ、私の名前は片井小花。
「年齢は?」
「十七歳」
「好きなことは?」
「絵を描くことです」
メンテナンスの際に何度も繰り返された質問。だが、次の質問は少し違っていた。
「シャットダウン前に何があったか覚えているかな?」
「シャットダウン前……確か、『びょういん』に行って……それで……山下さんが―」
小春は飛び起きた。繋がれた機器がいくつか引きちぎられる。
「そうだ、私は『外』に出て……!」
小春は竹内にしがみついた。
「山下さんは……山下さんはどこですか!?」
小春の様子に慌てた検査員たちを竹内が抑える。
「山下加奈さんは生きているし、すぐにどうこうなるって訳じゃない。まずは落ち着いてくれると助かるんだが」
竹内の言葉に小春はハッとして掴んでいた手を離した。
「すみません……」
「いや、いいよ。駆動部のチェックが済んだら少し話をしよう。聞きたいこともたくさんあるだろう」
「私は、どうなるんですか?」
「それも、これから」
そう言うと、竹内はしばらく席を外した。
「あの人たちは……」
駆動部のチェックが終わると、小春は部屋を移された。
小さな部屋だったが、そこには小春と竹内が机を挟んで座り、もう一人能面のような人間が隅に立っていた。それは「外」で小春を捕まえた警備兵に似ていた。
「それを説明するにはまず、これを読んでもらいたい」
「これを?」
竹内が手渡した紙の資料を眺める。
「あの、何で紙なんでしょう。データであればすぐに確認できますけど……」
竹内は優しく微笑んだ。
「確かに、データであれば瞬時に情報を読み取ることができるだろう。でも、時間をかけてゆっくり知っていった方がいいこともあるんだよ。心が、壊れてしまわないようにね」
小春は頷いて資料をめくり始めた。
『アンドロイド感情導入実験プロジェクト(ATEP)
概略
昨今、アンドロイドの活躍には目覚ましいものがある。既に彼らなしには人間の生活は成り立たないであろう。しかし、倫理的見地からアンドロイドは「心」を持たない。そのため、人間との差は大きく、様々な軋轢を生んでいる。そこで、本プロジェクトは過疎化が進む地方都市の中から静岡県静岡市を選出し、その四分の一を特区として設定、新世代アンドロイドによるアンドロイドへの感情導入実験(ATE)を行うこととする。
沿革
二〇八七年 七月 十五日 ATEP発足
二〇八九年 六月 九日 ATE認可
二〇九一年 三月 十三日 区画整理開始
二〇九二年 五月 二十日 ATE開始
二一一九年 五月 十九日 区画整理完了
二一二〇年 四月 一日 アンドロイド研究特区稼働
ATEに於ける諸注意
・区長について
アンドロイド研究特区についてはアンドロイドの暴走への対策として、区長に
人間を起用する。
・壁について
ATEによる他地区への影響、及び情報漏洩を防ぐために特区外周に沿って設け
ている壁の管理には万全を期すこと。また、他地区との境界にアンドロイドが近
づかないように設置されている妨害電波発生装置の点検、アップデートは定期的
に行うこと。
・暴走アンドロイドについて
ATEでは研究のため、アンドロイドに様々なパーソナルデータを組み込んでい
るが、予測不能な事態が発生する恐れがある。暴走したアンドロイドは捕縛後、
暴走原因を究明し、状況により記憶データの削除、パーソナルデータの書き換え、
機体の廃棄を行うこと。
・人間と新世代アンドロイドの共存実験
プロジェクトの最終段階として民間から希望者を募り、特区に一定人数配置、
新世代アンドロイドとの共存実験を行う。プロジェクト参加者は実験の報告義務
を負うものとする。また、機密保持のため、特区内でのあらゆる活動の記録を外
部に漏洩させることは禁止とする。
・第七世代アンドロイドの運用について
ATEPでは新世代アンドロイド(第七世代アンドロイド)を起用する。プロジェ
クト効率化のために一定期間運用した第七世代アンドロイドは廃棄し、次の機体
の導入を円滑に行う。―』
「―尚、ATEPで運用したアンドロイドはプロジェクト終了後全ての機体を廃棄することとする……」
最後の部分を声に出して読み終える小花。彼女は資料に視線を落としたまま、ある予感と共に竹内に声をかける。
「……三つ、質問してもいいですか?」
「私に、答えられることなら」
「アンドロイドって何ですか?」
「アンドロイドは、人間を模した高い知能をもつロボット、つまり人型の機械だ」
「山下加奈さんは、どちらですか?」
「人間だ」
小花は、一瞬部屋の隅にたたずむ能面の彼を見た。そして、視線を戻す。
「その人は……私は……どちらですか?」
竹内は感情を込めずに答えた。
「どちらもアンドロイドだ」
数秒たって、小花は一言だけ発する。
「……そう、ですか」
資料を持つ彼女の手は、震えていた。
「……少し、時間をください」
そう言った小花を、竹内は個室へと連れていった。
部屋は殺風景で、ベッドが一つあるだけだったが、今の小花には何も必要なかった。小花は部屋の隅で丸くなり、思考を巡らす。
(アンドロイド……)
自分のことはずっと人間だと思っていた。自分だけじゃない、周りに生きる全ての人を人間だと思っていた。普通に生活をして、友達とおしゃべりして、学校に通って授業を受けて、食事をしていた。
今思えば、おかしいと思うことはたくさんある。単なる有機物を口に入れて、出すだけの行為。食事とは何のためにあるのだろうか。加奈は「生きるために必要なエネルギーを摂取している」と言っていたが、私たちは炉からエネルギーを得ている。「おいしい」と感じることはあっても、毎日三回必要なことだとは思えない。
子供はどうやって大人になるのだろう。高校生になってから、体は何も変化していない。加奈は「身長が三ミリ伸びた」だとか「ちょっと太った」などと話していた。高校入学までの記憶ならある。だが、自分が機械ならば、その記憶はどこからやってきたのだろう。
体調を悪くした時、加奈は鼻から妙な液体を垂らし、ゴホゴホと口からおかしな音を出していた。自分には、そんな症状は現れたことがない。
授業はなぜかいつもアナログだった。データを転送すればいいものを、わざわざノートに取るように言われた。
今まで何の疑問も持たなかった全てが分からなくなっていく。
(山下さん……)
一人の少女の姿が思い浮かぶ。
(山下さんは、アンドロイドのことを、どう思ってたのかな……私のことを、どう思ってたのかな……)
高校生活を共に過ごしてきた少女。
(楽しかったな……)
時にふざけ、時に真剣に。色々なことを共有した。
(山下さんは、楽しかったのかな……楽しいって……何だろう…………)
久しぶりに起動した脳回路が休息を求めている。
小花は、膝を抱えたまま眠りについた。
「おはよう」
目が覚めて数十分ほどすると、竹内がやってきた。
「おはよう、ございます」
「気分はどうだい?」
「体の調子は普通です。でも……」
「でも?」
「……何だか、よく分かりません」
「そうか」
「あの」
「何か?」
「私って、記憶を消されちゃうんですか?」
「どうして?」
「規則を破ったから」
「確かに、普通ならそうだろうね。でも、今はちょっと状況が複雑だから何とも言えないかな」
「たぶん私は良くないことをしたんだと思うんですけど、何で私に秘密を教えたんですか?」
「それは、僕がそうしたかったから、かな」
「竹内さんて区長さんですよね? そんな勝手なこと、できるんですか?」
「まぁ、怒られるだろうね」
「じゃあ、何で……」
「それは、この人が教えてくれるかもしれない」
竹内はニコッと笑って扉の前からよけた。
「こんにちは」
タイミングを見計らっていたのだろう、見たことがない女性が顔を出した。
「あなたが片井小春さんね。思った通り、可愛らしい子だわ」
その女性は初老にさしかかったくらいの年齢だった。しかし、年齢に似合わず、人懐っこい笑顔を浮かべていた。
「あの、あなたは……」
「この人は、山下亜子さん。君に色んなことを教えてくれる人だよ」
「山下……?」
「そう。初めまして、山下加奈の母、山下亜子です。よろしくね」
広い会議室で淡々と述べられる報告。
「本機体は山下加奈の事故現場を目撃し、記憶消去が実行される予定でした。しかし、山下加奈の『日記』流出及び、「外」の人間に知られてしまったことことにより実行が留保されています。脱走前には周囲に山下加奈のことを聞いて回る様子も確認されています」
会議室には十数人の人間がおり、皆渋い顔をしている。そのうちの一人が口を開ける。
「やはり、記憶消去を実行するべきではないでしょうか。現に当該機体は暴走し、ゲートを抜けています。市民に被害が出てからでは遅いですし……」
「でも、世間が黙っていないんじゃないですか? 例の山下加奈の件もありますから」
「黙っていれば問題ないでしょう」
「現状、どこから情報が流出するか分かりませんよ?」
「しかし、一々処分を保留していてはこの街の機能が破綻してしまいます」
結論が出ないまま議論は紛糾する。
そんな中、上座に座る年老いた男が提案する。
「ひとまず、彼女の処遇は私に任せてもらえませんか?」
彼の名前は竹内智之。この街の区長をしている人物だ。静岡市の四分の一の自治権を統括している。会議の出席者たちは「区長がそう言うなら……」と賛成の意を示した。
「―再起動プロセス完了しました」
近くから響いてくる声。手を動かそうとして、体に大量の機器が取り付けられていることに気づく。
「不良セクタを検索します」
「それは私がやろう」
見ると、そこには老人が立っていた。見たことがある。確か、この街の区長だ。
「おはよう」
「おはよう、ございます」
「気分はどうかね?」
「気分……」
「どこか調子が悪いとか、違和感を感じるとか」
「特に……」
このやりとりは定期メンテナンスに似ている。
「私は竹内智之。君の名前は?」
「片井小花です」
そうだ、私の名前は片井小花。
「年齢は?」
「十七歳」
「好きなことは?」
「絵を描くことです」
メンテナンスの際に何度も繰り返された質問。だが、次の質問は少し違っていた。
「シャットダウン前に何があったか覚えているかな?」
「シャットダウン前……確か、『びょういん』に行って……それで……山下さんが―」
小春は飛び起きた。繋がれた機器がいくつか引きちぎられる。
「そうだ、私は『外』に出て……!」
小春は竹内にしがみついた。
「山下さんは……山下さんはどこですか!?」
小春の様子に慌てた検査員たちを竹内が抑える。
「山下加奈さんは生きているし、すぐにどうこうなるって訳じゃない。まずは落ち着いてくれると助かるんだが」
竹内の言葉に小春はハッとして掴んでいた手を離した。
「すみません……」
「いや、いいよ。駆動部のチェックが済んだら少し話をしよう。聞きたいこともたくさんあるだろう」
「私は、どうなるんですか?」
「それも、これから」
そう言うと、竹内はしばらく席を外した。
「あの人たちは……」
駆動部のチェックが終わると、小春は部屋を移された。
小さな部屋だったが、そこには小春と竹内が机を挟んで座り、もう一人能面のような人間が隅に立っていた。それは「外」で小春を捕まえた警備兵に似ていた。
「それを説明するにはまず、これを読んでもらいたい」
「これを?」
竹内が手渡した紙の資料を眺める。
「あの、何で紙なんでしょう。データであればすぐに確認できますけど……」
竹内は優しく微笑んだ。
「確かに、データであれば瞬時に情報を読み取ることができるだろう。でも、時間をかけてゆっくり知っていった方がいいこともあるんだよ。心が、壊れてしまわないようにね」
小春は頷いて資料をめくり始めた。
『アンドロイド感情導入実験プロジェクト(ATEP)
概略
昨今、アンドロイドの活躍には目覚ましいものがある。既に彼らなしには人間の生活は成り立たないであろう。しかし、倫理的見地からアンドロイドは「心」を持たない。そのため、人間との差は大きく、様々な軋轢を生んでいる。そこで、本プロジェクトは過疎化が進む地方都市の中から静岡県静岡市を選出し、その四分の一を特区として設定、新世代アンドロイドによるアンドロイドへの感情導入実験(ATE)を行うこととする。
沿革
二〇八七年 七月 十五日 ATEP発足
二〇八九年 六月 九日 ATE認可
二〇九一年 三月 十三日 区画整理開始
二〇九二年 五月 二十日 ATE開始
二一一九年 五月 十九日 区画整理完了
二一二〇年 四月 一日 アンドロイド研究特区稼働
ATEに於ける諸注意
・区長について
アンドロイド研究特区についてはアンドロイドの暴走への対策として、区長に
人間を起用する。
・壁について
ATEによる他地区への影響、及び情報漏洩を防ぐために特区外周に沿って設け
ている壁の管理には万全を期すこと。また、他地区との境界にアンドロイドが近
づかないように設置されている妨害電波発生装置の点検、アップデートは定期的
に行うこと。
・暴走アンドロイドについて
ATEでは研究のため、アンドロイドに様々なパーソナルデータを組み込んでい
るが、予測不能な事態が発生する恐れがある。暴走したアンドロイドは捕縛後、
暴走原因を究明し、状況により記憶データの削除、パーソナルデータの書き換え、
機体の廃棄を行うこと。
・人間と新世代アンドロイドの共存実験
プロジェクトの最終段階として民間から希望者を募り、特区に一定人数配置、
新世代アンドロイドとの共存実験を行う。プロジェクト参加者は実験の報告義務
を負うものとする。また、機密保持のため、特区内でのあらゆる活動の記録を外
部に漏洩させることは禁止とする。
・第七世代アンドロイドの運用について
ATEPでは新世代アンドロイド(第七世代アンドロイド)を起用する。プロジェ
クト効率化のために一定期間運用した第七世代アンドロイドは廃棄し、次の機体
の導入を円滑に行う。―』
「―尚、ATEPで運用したアンドロイドはプロジェクト終了後全ての機体を廃棄することとする……」
最後の部分を声に出して読み終える小花。彼女は資料に視線を落としたまま、ある予感と共に竹内に声をかける。
「……三つ、質問してもいいですか?」
「私に、答えられることなら」
「アンドロイドって何ですか?」
「アンドロイドは、人間を模した高い知能をもつロボット、つまり人型の機械だ」
「山下加奈さんは、どちらですか?」
「人間だ」
小花は、一瞬部屋の隅にたたずむ能面の彼を見た。そして、視線を戻す。
「その人は……私は……どちらですか?」
竹内は感情を込めずに答えた。
「どちらもアンドロイドだ」
数秒たって、小花は一言だけ発する。
「……そう、ですか」
資料を持つ彼女の手は、震えていた。
「……少し、時間をください」
そう言った小花を、竹内は個室へと連れていった。
部屋は殺風景で、ベッドが一つあるだけだったが、今の小花には何も必要なかった。小花は部屋の隅で丸くなり、思考を巡らす。
(アンドロイド……)
自分のことはずっと人間だと思っていた。自分だけじゃない、周りに生きる全ての人を人間だと思っていた。普通に生活をして、友達とおしゃべりして、学校に通って授業を受けて、食事をしていた。
今思えば、おかしいと思うことはたくさんある。単なる有機物を口に入れて、出すだけの行為。食事とは何のためにあるのだろうか。加奈は「生きるために必要なエネルギーを摂取している」と言っていたが、私たちは炉からエネルギーを得ている。「おいしい」と感じることはあっても、毎日三回必要なことだとは思えない。
子供はどうやって大人になるのだろう。高校生になってから、体は何も変化していない。加奈は「身長が三ミリ伸びた」だとか「ちょっと太った」などと話していた。高校入学までの記憶ならある。だが、自分が機械ならば、その記憶はどこからやってきたのだろう。
体調を悪くした時、加奈は鼻から妙な液体を垂らし、ゴホゴホと口からおかしな音を出していた。自分には、そんな症状は現れたことがない。
授業はなぜかいつもアナログだった。データを転送すればいいものを、わざわざノートに取るように言われた。
今まで何の疑問も持たなかった全てが分からなくなっていく。
(山下さん……)
一人の少女の姿が思い浮かぶ。
(山下さんは、アンドロイドのことを、どう思ってたのかな……私のことを、どう思ってたのかな……)
高校生活を共に過ごしてきた少女。
(楽しかったな……)
時にふざけ、時に真剣に。色々なことを共有した。
(山下さんは、楽しかったのかな……楽しいって……何だろう…………)
久しぶりに起動した脳回路が休息を求めている。
小花は、膝を抱えたまま眠りについた。
「おはよう」
目が覚めて数十分ほどすると、竹内がやってきた。
「おはよう、ございます」
「気分はどうだい?」
「体の調子は普通です。でも……」
「でも?」
「……何だか、よく分かりません」
「そうか」
「あの」
「何か?」
「私って、記憶を消されちゃうんですか?」
「どうして?」
「規則を破ったから」
「確かに、普通ならそうだろうね。でも、今はちょっと状況が複雑だから何とも言えないかな」
「たぶん私は良くないことをしたんだと思うんですけど、何で私に秘密を教えたんですか?」
「それは、僕がそうしたかったから、かな」
「竹内さんて区長さんですよね? そんな勝手なこと、できるんですか?」
「まぁ、怒られるだろうね」
「じゃあ、何で……」
「それは、この人が教えてくれるかもしれない」
竹内はニコッと笑って扉の前からよけた。
「こんにちは」
タイミングを見計らっていたのだろう、見たことがない女性が顔を出した。
「あなたが片井小春さんね。思った通り、可愛らしい子だわ」
その女性は初老にさしかかったくらいの年齢だった。しかし、年齢に似合わず、人懐っこい笑顔を浮かべていた。
「あの、あなたは……」
「この人は、山下亜子さん。君に色んなことを教えてくれる人だよ」
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