ココに入ったらタダのケダモノ

まめ太郎

文字の大きさ
34 / 241

34

 翌朝、朝霧はようやく正午少し前に起きると、夏川お手製のホットケーキ、フルーツなどを食べ、15時過ぎに夏川の車の助手席に乗りこんだ。
「出発するよ」
 今日の夏川はざっくりとしたホワイトのニットにジーンズを合わせ、眼鏡をかけていた。
 そう視力は悪くないはずだが、夏川はたまに黒縁の眼鏡をかける。
 朝霧が会社でしているような眼鏡とは全く異なる、おしゃれな眼鏡は、夏川によく似合っていて、一度でいいからそれを付けたままヤッてみたいと密かに朝霧は望んでいた。

「道、空いてて良かった」
 運転をする夏川に見惚れていた朝霧はハッと意識を会話に集中させた。
「うん、送ってくれてありがとう」
「何言ってんの。帝が終電逃したの俺のせいじゃん」
「うっ、いや、でも俺も結局楽しんだし」
「それは知ってる」
 夏川はそう言うと機嫌良さそうに笑い声をたてた。

 夏川のマンションから車で1時間ほどで、朝霧の自宅に到着した。
「送ってくれてありがとう」
 助手席に座る朝霧の頬にそっと夏川が触れた。
 その瞳には別れがたいという想いが、ありありと浮かんでいた。

「連絡するから……来週また、やどり木で」
「うん」
 朝霧は夏川と見つめ合いながら頷いた。
 朝霧はこの夏川の表情を信じて、ちゃんと付き合おうと自ら言えばいいのかもしれないと考えた。
 しかし今日もその言葉は朝霧の口からでなかった。

 朝霧は車を降りると、走り去っていくBMWを見送る。
 ため息をつき、朝霧はアパートの階段を登り始めた。

 玄関の扉を開けると、どこか饐えた匂いを感じ、朝霧は窓を全開にした。
 本当だったら送ってくれた夏川に、お茶でもだしたかったのだけれど。

 そんなことを考えながら、朝霧は1LDK、家賃7万5千円の部屋を見渡した。
 足元には雑誌や部屋着などが散らばり、床はほとんど見えない。

 こんな部屋見たら、流石に夏川も引くよな。
 朝霧は料理だけではなく、家事全般が苦手な男だった。
 来週はいい加減部屋の掃除をしなければと考えながら、朝霧はリュックから高級なスーツを取り出した。
 ふわりと麝香の香りが漂う。
 夏川の付けている香水の香りだった。
 それを嗅いだだけで、朝霧の体は熱を帯びた。
感想 182

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

BL短編まとめ(現) ①

よしゆき
BL
BL短編まとめ。 冒頭にあらすじがあります。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

【創作BL】溺愛攻め短編集

めめもっち
BL
基本名無し。多くがクール受け。各章独立した世界観です。単発投稿まとめ。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。