ココに入ったらタダのケダモノ

まめ太郎

文字の大きさ
35 / 241

35

「付き合おう」と朝霧から言ってしまえばいいのかもしれない。
 自分の我儘のせいで、朝霧は夏川に無理をさせているのを自覚していた。
 2人でいる時以外は、名前を呼ばれたくないと言ったのも朝霧だった。
 『やどり木』の誰かに自分達の関係を知られるのが嫌だった。
 そのくせ、『やどり木』で夏川が他の若い男と親しくしているところを見ると、朝霧は毎回嫉妬してしまう。
 そんな権利など俺にはないのに。
 朝霧は自嘲の笑みを浮かべた。

 ちゃんと付き合ったら、そういう悩みからも解放されるかもしれない。
 しかし朝霧が告白しようとする度、過去の男達から投げつけられた言葉を思い出し、躊躇してしまう。
 いつか過去の男達のように、夏川も自分から離れていってしまうのではないか。
 結局朝霧はそんな思いを振り払えずに、夏川との関係はセフレ止まりとなっていた。
 いっそもう一度、夏川の方から告白してくれないかと、他力本願な願いは到底口にはだせずに、朝霧の日曜の夕方は過ぎていった。

 翌朝、隈のない顔で出社した朝霧は席に座る渡会を見て、目を見開いた。
「早いな」
 今週は急ぎの仕事が多く、金曜日に早く帰るため、朝霧は月曜から出社時間を早めたのだ。
 そのため広いオフィスにはまだ朝霧と渡会の他に2.3人しか出社していない。

「ああ、事情があって昨日はネットカフェに泊ったんだけど、椅子が硬くて、まともに眠れなくてさ」
 渡会は疲れ切った表情で首を振った。
「どうしたんだよ」
 普段は同期とはいえ、他人の私生活に興味や関心を抱かないようにしている朝霧だが、流石に気になり尋ねた。

「実はさ、昨日彼女が家まで来て」
 渡会が大きなため息をついた。

「俺は今週は会えないって言ってあったんだよ。ガチャの更新日だからさあ」
「ガチャってスマホゲームのか? 」
「そう。新キャラが当たるか当たらないか。大事な日なんだ。もし当たったら、試しに使ってみたいし。でも馬鹿正直にゲームのこと話すと、彼女がキレると思ったから、家で処理する大事な仕事があるから来るなって言っておいたんだ。そうしたら昨夜、仕事を頑張っているのを応援しようと思って、夕飯を作りに来たっていきなり彼女がさ」
感想 182

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

BL短編まとめ(現) ①

よしゆき
BL
BL短編まとめ。 冒頭にあらすじがあります。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

【創作BL】溺愛攻め短編集

めめもっち
BL
基本名無し。多くがクール受け。各章独立した世界観です。単発投稿まとめ。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。