ココに入ったらタダのケダモノ

まめ太郎

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「いい彼女じゃないか」
 朝霧の言葉に渡会は信じられないと驚愕の表情を浮かべた。

「どこが? 俺は来るなと言ってあったんだぜ。それをたいして美味くもない肉じゃがの材料もって家に突撃してくるなんて、迷惑以外の何者でもないだろ」
「いやでも、彼女はお前の為を思って……」
「ああ、そういう考え、マジで勘弁」
 渡会は舌打ちした。

「俺は来るなって言ってあって、彼女はそれを了承した。まだ約束を破って家に来たのは百歩譲って許すとしても、まずは謝罪じゃないか。なのに彼女、『何、ゲームなんかやってるの? 仕事じゃなかったの? 』とか怒鳴り始めて、あんまりにもうるさいから『付き合いきれない。別れる』って言って、俺の方から家を飛び出してきたんだよ」
「せめて話し合えよ」
 朝霧の言葉に渡会はきょとんとした表情を浮かべた。

「なんで? 別れるって決めたなら、話し合う時間がもったいなくね? ぎゃあぎゃあ騒ぐ女が傍に居たら、ゲームに集中できないし」
「お前、最低だな」
 朝霧は渡会の性格を知っていたが、それでも酷いと、ため息をついた。

「そうか? まあ、確かに今回は仕事って嘘ついた俺も悪いけどさ。本当に仕事が忙しいのに、会おう会おうって言ってくる女だっているじゃん。あれ、なんだろうね。そもそもどんなに好きだって俺は毎週なんか会いたくないのに」
「好きなら、毎週会いたいって思う方が普通だろ」
 朝霧の言葉に、渡会は嫌悪感を隠しもしなかった。

「ああ、朝霧そういうタイプ? だけど相手が俺みたいに忙しいとそういうの重くて疲れるだけだから、気を付けろよ」
 そこまで話すと、渡会は振動した自分のスマホを見つめて目を細めた。

「彼女が『ごめん、やり直したい』だって。誰がやり直すかよ。ブロックと着信拒否しとこ」
 そこまで呟くと、渡会は立ち上がり、大きく伸びをした。

「やっぱり寝不足で頭働かねえわ。仮眠室で1時間寝てくる」
「ああ」
 渡会が去っていった後、朝霧はパソコンの電源を付けたが、仕事は捗らなかった。

「俺は重いタイプなんだろうか」
 独り言が口から漏れる。
 夏川は会社を経営しているだけあって、忙しそうだ。
 それにも関わらず、毎週末朝霧との時間を必ず捻出してくれる。
 朝霧も仕事が忙しく、帰宅が深夜になる時もあるが、基本休日出勤はないし、カレンダー通りの休みが貰える。
 しかし夏川の仕事はそう言う訳にはいかないだろう。
 先ほどの重くて疲れると言った渡会の言葉が、朝霧の脳内で、夏川の声で再生されてしまう。

「仕事の邪魔はしたくないな」
 決意のようにそれだけ呟くと、朝霧は目の前の仕事に集中した。
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