ココに入ったらタダのケダモノ

まめ太郎

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「しないの? 」
「たまにはこういうのもいいでしょ」
 夏川は朝霧を抱く腕に力を込めた。
 2人とも話さずに部屋に沈黙が落ちる。

「ルーシーのことごめんね」
 夏川の言葉に朝霧はどきりと体を震わせた。
「俺のことを弟みたいに思っているから、むこうは世話を焼きたがるんだけど、さっきみたいに余計なお世話なことも結構あってさ」
「お前のこと心配してるんだな」
「もう子供じゃないのにね」
 夏川はくすりと笑うと、ふいに真剣な表情になった。

「リサのこと、本当に何でもないから」
「えっ? 」
 朝霧は夏川がゲイではなかったことがショックで、ルーシーとの会話にでてきたリサという子のことはすっかり頭から消えていた。

「リサは2歳年下で、妹みたいな存在だっただけだから。そういう関係にもなっていないし」
「うん」
 そこで朝霧は勇気をだして呟いた。

「俺はリョウがゲイじゃないって知って、驚いた」
「男と寝るようになったのは確かについ最近だから、俺はバイってことになるのかな? でもそれってそんな重要なことじゃないでしょ? 」
 朝霧は反射的に言い返しそうになったが、唇を噛んで、己の言葉を封じた。
「寝ようか」
 夏川が朝霧の背中をぽんぽんと叩く。

「ルーシーに連絡しなくていいのか? 明日会うんだろ? 」
「起きたら連絡するよ。ごめん。明日は昼、ルーシーに付き合わないといけないかも。夜には戻るから待っていてくれると嬉しいけど」
「いや、明日は俺も家に帰るよ」
「そっか」
 夏川は朝霧の額に再びキスをした。

「俺の都合でごめんね。おやすみ」
「おやすみ」
 夏川から規則正しい寝息が聞こえても、朝霧はなかなか眠ることができなかった。
 俺とリョウは違う。ルーシーの言う通り、リョウはきちんと結婚して子供が作れる男なんだ。
 そしてその違いを重要なことじゃないと言い切る夏川を、朝霧は何も分かっていないと思った。
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