ココに入ったらタダのケダモノ

まめ太郎

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 翌朝、飲み過ぎたせいで酷い頭痛を覚えながらも朝霧はしかめっ面でなんとか出社した。
 酒と泣いたせいで、朝霧の顔はむくんで酷いことになっていた。
 渡会に「おはよう」と声をかけられてもろくに挨拶も返せない。
 こめかみを押さえながら何とか自席に朝霧は座った。

「夏川さんと喧嘩した? 」
 渡会の言葉に驚いて、朝霧は勢いよく振り返った。
 そのせいでいっそうずきずきと脈打つように頭痛が酷くなった。
 渡会は自分の席に座って、立ち上がった朝霧のことを見上げている。
 その表情はどことなく楽し気に見えた。

「そんなに怒らなくたっていいだろ。ちょっとふざけただけじゃないか」
 朝霧が頭痛のせいで顔を顰めているのを、渡会は怒っていると勘違いしたようだった。
「いや、怒ってはいないけど。えっ、ふざけたって何の話? 」

 朝霧が首を傾げると渡会はまずいという風に、自らの口を慌てて押さえた。
 そうして渡会は観念したかのように肩を竦めてみせる。
「昨日飲んだ時、ちょっとふざけて、お前の首のところにキスマークつけたんだよ」
「はあ?! 」
 フロアに響くくらいの大声を朝霧が上げる。
「声でかいって」
 渡会が辺りを見回す。

「今そんなこと言っている場合か?! なんだよ。ふざけてって。冗談ですまないからな」
 朝霧はふと、昨日夏川が自分の首筋に何度も吸いつき、おびただしい数のキスマークを残したことを思い出した。

 リョウはきっと渡会が付けたキスマークに気付いたんだ。
 昨日、顔を合わせた時、リョウが怒っているように感じたのはそのせいだったんじゃないか。
 昨夜の夏川の様子を思い出し、おろおろしている朝霧に渡会がのんびりとした声で話しかけてきた。

「なあ、悪かったって。ちょっとした、いたずらだろ。そんなに怒るなよ」
「何がちょっとしたいたずらだよ。全然笑えないから」
 朝霧はため息をつくと、再度謝ってくる渡会を無視して座りなおし、自分のパソコンの電源を入れた。
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