哀しい愛

まめ太郎

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 俺は読み終えた瞬間、口を手で塞ぎ前かがみになった。意味は分かるが、脳が内容を拒否している。
「大丈夫か?」
 本条の問いに無言で首を振る。
「俺、ちょっと保健室行ってくる。担任に伝えといてもらっていいか?」
「ああ。俺も付いていこうか?」
「一人でいい」
 ふらふらと廊下に出て、階段を降りる。

 保健室の校医は、俺の顔を見て直ぐに家に帰れと言った。
 それほど酷い顔色なんだろうか。
 俺は家に早めに帰宅して、父親にあれこれ言われるのが嫌で、少し寝かしてくれとだけ頼んだ。
 熱もなかったので、渋々校医は具合が悪くなったらすぐに言うようにとベットの仕切りのカーテンを閉めた。
 横になり、目をつぶる。

 あの手紙に書いてあったことは覚えていた。
 先週俺は、帰宅途中に尿意を覚え、どうしても我慢できなくなって、いつもなら絶対に使わない公園の奥の薄汚い公衆トイレに入ったのだ。

 まさかあんなところを覗かれているなんて。

 俺は下唇を噛むと、襲ってくる嘔吐感に耐えた。
 中学生と思って甘くみてたのがいけなかった。一度きつく言わないと、こんなこと続けられたら、俺の頭がおかしくなる。
 俺はうつ伏せになると、顔を枕に押し付け、「ああ」と呻いた。

 翌朝、俺は待ち伏せしている有希子に放課後話があるから、校門まで来てくれと言った。
 有希子は頬を染めると、嬉しそうに頷いた。
 授業が終わると俺は厳しい表情で、さっと立ち上がり校門へと急いだ。

 待っている有希子に「歩きながら話そう」と言い、俺は相手の返事を待たずに歩き始めた。
 後ろから慌てて走り寄ってくる有希子の足音が聞こえる。

「昨日貰った手紙読んだよ」
「本当ですか?」
 並んで歩いているせいで、俺とほぼ同じ身長の有希子の顔がすぐ傍にあった。
 俺は少し距離を取ると息を吐いた。
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