哀しい愛

まめ太郎

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「よお、大丈夫か」
 本条が立っていた。
「大丈夫じゃない」
 そう答えると本条は苦笑した。
「会話聞こえたけど、今の子、そうとうやばい子なんじゃね?毎朝立ってるのも異常だし。どうにかした方がいいんじゃない」
「どうにかってどうすればいいんだよ?」
 八つ当たり気味に返すと、本条は天井をむいて考えているようだった。
「警察に相談するとか」
「馬鹿。相手は中学生だぞ?そんなことできるかよ」
「なら、手紙ちゃんと読んでさ。返事出してやれば?いつもみたいに捨てちまわないで」
「読んだよ。レポート用紙にびっしり、俺が漫画のなんとかって主人公に似ているだとか、自分がそのヒロインに似ているから私たちは運命だとか…、意味が分からな過ぎて、本当にまいる」

 ははっと笑った本条は俺の顔が本気で沈んでいるのに気づいたんだろう。
 慌てて自らの口を塞いだ。
「その手紙、読ませてって言ったらだめ?」
 普段は人から貰った手紙を他人に読ませたりなどしない。
 でも本条に読ませることで解決の糸口が見つかれば。
 そんな淡い期待から、俺は今日貰った手紙を封も開けずに本条に渡した。
 本条は俺の前の席に勝手に座ると、さっそく手紙を読み始める。

「うわあ、これやべえなあ」
 本条はまるで汚いものに触れたかのように読み終えた手紙をつまむと、俺の方に投げた。
「だろ?」
「ああ。こんなの完全にストーカーじゃん」
「ストーカー?」
「ここ読んでみろよ」
 机の上に広げられた手紙は前回と同じレポート用紙で、女の子らしい丸っとした文字がびっしりと並んでいた。
 本条が指したところの文章を俺は黙読した。

「この前学校の帰り道、たまたま天使様をお見かけしました。こんな風に待ち合わせもしていないのに、私、天使様とばったり会うことがよくあるんです。これも私達が運命の相手だっていう証拠ですよね?私の前を通りすぎた天使様は、なんだか顔色が悪くて急いでいらしたようなので、私心配になって追いかけました。そうしたら天使様は公園の奥のトイレに一目散で駆け込んで…。私、天使様がご気分が悪いなら付き添わなきゃと、トイレの中を覗きました。言っておきますけど、そんなことをしたのは人生で初めてです。でも天使様が中でお倒れになっているかもしれないと思うと、じっとしていられなかったんです。トイレの便器の前で、天使様は大慌てでチャックを下げて中から、とてもきれいな桃色のものを取り出されました。その時天使様の体の一部を見て、私すごく感激いたしました。私、兄や父の生殖器をたまたま見てしまったことがあって、その時、酷く気分が悪くなったんです。あんなグロテスクな物がこの世の中にあるなんて、それを女性の体に埋め込むなんて(保健体育の時間に習いました)信じられない。気持ちが悪いとずっと思ってまいりました。でも、天使様の生殖器は他の男性と違い、綺麗な色で可愛らしいとさえ思いました。天使様はそんなところまで完璧でらっしゃるんですね。私、天使様になら何をされてもかまいません。セックスだって怖くありません。だから恥ずかしがらずに、私達が運命の相手であると、早く認めてください。」
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