哀しい愛

まめ太郎

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 季節が秋に移り変わる頃、俺は悩み事のせいで毎日胃痛や、頭痛に悩まされていた。

 家を出ると、学校まで徒歩25分の道のりをゆっくり歩く。
 校門に着き、顔を上げると今日もそこに彼女はいた。
 俺は目の前が真っ暗になったような気分で、ふらふらと校門に近づいた。

「おはようございます」
 俺の目の前にさっと手紙が差し出される。
「あの、こういうの止めてもらえないかな?何度も言ってるよね。迷惑なんだ」
 そう言うと、近くの県立中学の制服を着た女の子はきょとんとした顔で俺を見た。

 おかっぱの黒髪に包まれた卵型の顔は中学生にしては大人びて、整っていると言えるのかもしれない。
 ただ今の俺には、迷惑な存在で悩みの種である彼女のことを綺麗だなんてとても思えなかった。

 一か月ほど前から毎朝彼女は手紙を持って現れるようになった。
 普通手紙を受け取ってもらって返事がなければ、振られたと分かって、こんなしつこくなんてしないだろ。と俺は苦々しい気持ちで唇を噛んだ。
 過去には携帯番号を教えろだとか、付き合ってくれとか直に言われて経験もあったが、全てきっぱりと断ったら大概の女の子はそれっきりとなった。
 それなのにこの子だけは何度断っても、こうやって俺を待っていて、手紙を渡そうとしてくる。
 それだけでも迷惑なのに、どうやら時々下校の際、俺の跡を彼女はつけているようなのだ。
 たまたまそれに気付いて追いかけたが、彼女は走って行ってしまった。中学生の駆け足に追いつけない自分の体力のなさをその時ばかりは嘆いた。

「迷惑なんて言わないでください。私と天使様が運命で結ばれているというのは、これを読んでくれれば分かりますから」
 天使様などと呼ばれ、苛立ちを覚えた俺に脈打つような頭痛が襲う。
「前回の手紙、読んだよ。君の気持には応えられない。君のこと好きじゃないんだ。言ってること分かるだろ?」
 はっきりと断ってるのに彼女は笑顔で「有希子って呼んで下さい」と見当違いのことを言ってくる。
 俺は話にならないと、手紙だけ受け取ると、校舎に走った。
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