13 / 66
13
しおりを挟む
「これ、解き方も説明しようか?」
「わー、助かる」
ノートを手渡されると俺は頬を染め、目の前の小糸に微笑んだ。
小糸は転校してきてからすぐに人当たりも見た目も良いせいで、クラスに馴染んだ。さらに先日返された期末テストで学年一位を取ったことで、尊敬の眼差しまでも集め始めていた。
今まで県立の高校に通い、この学校の大半の生徒がそうであるようなお坊ちゃまではないらしい小糸だったが、それを理由に彼を爪はじきにしようとする奴は誰もいなかった。
俺はそんな小糸を日々見つめるだけで精一杯だった。話しかけたかったけれど、彼のことを意識しすぎてしまい、目の前に立つと緊張して、石像のように固まってしまう。
クラスメイトとの会話の中で小糸が、朝早く登校して授業前に勉強しているというのを偶然耳にした。
「ええっ、お前まじ偉いじゃん」
「俺、勉強って朝が一番捗るんだよ。学校帰って来てからだと、なんか疲れちゃって。受験意識して焦ってんだよ、俺」
小糸は以前は近くの県立高校に通っていたが、難関大学の合格を目指しているため、受験対策をしっかりしている本校に転入してきたという話をその後にしていた。
小糸、朝早く学校来てるんだ。
その情報を知った俺は、翌日から30分早く家を出るようにした。
初めて小糸に早朝教室で会った時、俺は「奇遇だなあ。俺、今日の数学の小テストの勉強しようと思ってさ」なんて言葉を声を裏返らせ、つっかえながら小糸に告げた。そんな俺に小糸は穏やかに微笑むと、「じゃあ、一緒に勉強するか」と言って受け入れてくれた。それから一か月経った今では毎日授業前に勉強を教え合う仲だ。もっとも教えを乞うのは俺の方ばかりだが。
「やっぱり小糸はすごいなあ。俺、この数学の問題、もっと回りくどい解き方をしていたよ」
俺のノートを見るために、小糸が身を乗り出した。
指で俺の文字をなぞる。
小糸のシャンプーの匂いが俺の鼻孔に届き、無意識にスンと息を吸う。
あの節ばった長い人差し指でそっと俺の頬に触れてくれたら…。
「でも答えはちゃんと当ってる。時間はかかるかもしれないけど、この解き方もいいんじゃないか?」
小糸の声が妄想に耽っていた俺の意識を現実に戻す。
やばい、俺。小糸の目の前で何考えてるんだよ。
赤い顔で頭を振っている俺を小糸が不思議そうな表情で見る。
「鈴賀(スズカ)、大丈夫か?顔が赤いけど熱でもあるんじゃ」
そう言いながら、小糸が俺の額に触れる。
俺は勢いよく椅子ごと後ろに下がり、更に顔を赤くした。
「大丈夫。なんかちょっと暑かったから」
「確かに暑いな。クーラーが授業開始の時間からじゃないとつかないのが不便だよな。窓でも開けようか?」
そう言って小糸は立ち上がると、窓を大きく開けた。
ふわりとクリーム色のカーテンが風を受け、膨らんだ。
「わー、助かる」
ノートを手渡されると俺は頬を染め、目の前の小糸に微笑んだ。
小糸は転校してきてからすぐに人当たりも見た目も良いせいで、クラスに馴染んだ。さらに先日返された期末テストで学年一位を取ったことで、尊敬の眼差しまでも集め始めていた。
今まで県立の高校に通い、この学校の大半の生徒がそうであるようなお坊ちゃまではないらしい小糸だったが、それを理由に彼を爪はじきにしようとする奴は誰もいなかった。
俺はそんな小糸を日々見つめるだけで精一杯だった。話しかけたかったけれど、彼のことを意識しすぎてしまい、目の前に立つと緊張して、石像のように固まってしまう。
クラスメイトとの会話の中で小糸が、朝早く登校して授業前に勉強しているというのを偶然耳にした。
「ええっ、お前まじ偉いじゃん」
「俺、勉強って朝が一番捗るんだよ。学校帰って来てからだと、なんか疲れちゃって。受験意識して焦ってんだよ、俺」
小糸は以前は近くの県立高校に通っていたが、難関大学の合格を目指しているため、受験対策をしっかりしている本校に転入してきたという話をその後にしていた。
小糸、朝早く学校来てるんだ。
その情報を知った俺は、翌日から30分早く家を出るようにした。
初めて小糸に早朝教室で会った時、俺は「奇遇だなあ。俺、今日の数学の小テストの勉強しようと思ってさ」なんて言葉を声を裏返らせ、つっかえながら小糸に告げた。そんな俺に小糸は穏やかに微笑むと、「じゃあ、一緒に勉強するか」と言って受け入れてくれた。それから一か月経った今では毎日授業前に勉強を教え合う仲だ。もっとも教えを乞うのは俺の方ばかりだが。
「やっぱり小糸はすごいなあ。俺、この数学の問題、もっと回りくどい解き方をしていたよ」
俺のノートを見るために、小糸が身を乗り出した。
指で俺の文字をなぞる。
小糸のシャンプーの匂いが俺の鼻孔に届き、無意識にスンと息を吸う。
あの節ばった長い人差し指でそっと俺の頬に触れてくれたら…。
「でも答えはちゃんと当ってる。時間はかかるかもしれないけど、この解き方もいいんじゃないか?」
小糸の声が妄想に耽っていた俺の意識を現実に戻す。
やばい、俺。小糸の目の前で何考えてるんだよ。
赤い顔で頭を振っている俺を小糸が不思議そうな表情で見る。
「鈴賀(スズカ)、大丈夫か?顔が赤いけど熱でもあるんじゃ」
そう言いながら、小糸が俺の額に触れる。
俺は勢いよく椅子ごと後ろに下がり、更に顔を赤くした。
「大丈夫。なんかちょっと暑かったから」
「確かに暑いな。クーラーが授業開始の時間からじゃないとつかないのが不便だよな。窓でも開けようか?」
そう言って小糸は立ち上がると、窓を大きく開けた。
ふわりとクリーム色のカーテンが風を受け、膨らんだ。
6
あなたにおすすめの小説
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?
中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」
そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。
しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は――
ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。
(……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ)
ところが、初めての商談でその評価は一変する。
榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。
(仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな)
ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり――
なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。
そして気づく。
「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」
煙草をくゆらせる仕草。
ネクタイを緩める無防備な姿。
そのたびに、陽翔の理性は削られていく。
「俺、もう待てないんで……」
ついに陽翔は榊を追い詰めるが――
「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」
攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。
じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。
【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】
主任補佐として、ちゃんとせなあかん──
そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。
春のすこし手前、まだ肌寒い季節。
新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。
風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。
何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。
拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。
年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。
これはまだ、恋になる“少し前”の物語。
関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。
(5月14日より連載開始)
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡
なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。
あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。
♡♡♡
恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!
のろまの矜持 恋人に蔑ろにされすぎて逃げた男の子のお話
月夜の晩に
BL
イケメンエリートの恋人からは、雑な扱いばかり。良い加減嫌気がさして逃げた受けくん。ようやくやばいと青ざめた攻めくん。間に立ち塞がる恋のライバルたち。そんな男の子たちの嫉妬にまみれた4角関係物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる