哀しい愛

まめ太郎

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 それから俺達は、ほぼ毎日のようにプレハブ小屋で抱き合った。
 その皆から忘れ去られた場所は、騒々しい校内で切り取られたかのように静かだった。
 寒さが厳しくなってくると何処から持ってきたのか、小糸は小さな石油ストーブを用具室に置いた。寒さを理由に小糸にくっつくことを目論んでいた俺は、当てが外れてがっかりした。
 その日の行為後、小糸は珍しく眠ってしまった。
 俺は小糸が熟睡しているのを確認すると、予想よりズシリとくる頭を持ち上げ、自分の膝の上に載せた。
 これくらい、許されるよな。
 小糸はべたべたするのが嫌いなのか、必要以上に俺に触れてこない。
 セックスの最中ですら、ぎゅっと抱きしめてくれることは稀で、終わるとすぐに服を着て出て行ってしまう。
 俺は男だから、見ても触っても、小糸は楽しくないのかもしれない。
 癖のない小糸の黒い髪をそっと撫ぜながら、そんなことを考えてしまう。
「うっ、ううう」
 ふいに小糸がうめいた。
 起きたのかと俺がその端正な顔を覗き込むと、小糸は目を閉じたまま苦悶の表情を浮かべていた。
「おいっ。小糸、大丈夫か?」
 大声で名前を呼び体を揺さぶると、小糸が飛び起きた。
 肩で息をし、俺を凝視する。
「あっ……、うなされてたから、俺」
 小糸は俺から視線を逸らすと「悪かった」と言い、床に散らばった制服を拾い始めた。
「ちょっと休んでいった方がいいんじゃない?」
「必要ない」
「でも」
 俺がシャツの裾を引っ張ると、小糸は制服のボタンを留める手を止め、迷惑そうに俺を見た。
「何?何か言いたいことでもあるの?」
「小糸って俺のこと本当に好き?」
「はあ?」
 言うまいと思っていた言葉が小糸の冷たい態度に後押しされ、するりと口から零れる。
「だって小糸、いつも俺のこと置いて先に帰っちゃうし。好きとか、あんまり言ってくれないし」
「好き好き好きー。これでいい?」
 馬鹿にしたような口ぶりが悔しくて、俺は下唇を噛むと涙を堪えた。
 頭上から小糸の呆れたようなため息が聞こえる。
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