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小糸がサラダを口に入れるのを見計らって、「味、どう?」と尋ねた。
「美味いよ」
「良かった。そのドレッシング俺が作ったんだ」
「ドレッシングって作れるのか?俺、買ってくるもんだと思ってた」
「俺もそう思ってた」
俺がそう言うと小糸が吹き出す。
俺も釣られて笑った。
食事をあらかた食べ終えたところで、二階の俺の部屋に先に行っていてくれるよう小糸に頼んだ。
俺はケーキを冷蔵庫から取り出すと、紅茶を淹れて二階にあがった。
「ハッピーバースデー」
両手を塞がれて小糸に部屋の扉を開けてもらった俺がそう言うと、小糸は嬉しそうに微笑んだ。
ケーキを見て更に笑みが深くなる。
「もうお腹いっぱいだよね?できたらちょっとだけでも食べない?」
「普通にまだ食べられるし、食うよ。これ手作りだろ?」
「うん。ちゃんと味見したから大丈夫だと思うんだけど」
俺はケーキを小さな机に置くと、ナイフを手に取ろうとして、はっと気づいた。
「忘れてた」
部屋の勉強机から、「17」の形をした蝋燭を取り出し、ケーキに上に挿す。
「なあ、このケーキの上のハッピーバースデーって書かれてるチョコの板、すごい数のハートマーク飛んでないか?店の人よく書いてくれたな」
苦笑する小糸に俺は顔を赤くしながら、蝋燭に火を灯した。
「それ、俺が書いた」
「えっ、鈴賀が?器用だな」
俺は立ちあがって部屋の電気を消すと、小糸と向かい合って座った。
「さ、願い事して吹き消して」
「いいよ、そんな。願い事なんて」
小糸が首を振る。
「ダメだって。こういうのはちゃんとやんなきゃ」
「じゃあ、鈴賀の願い事は?ここまでしてもらったから、俺が代わりに鈴賀の願い事をするよ」
「えっ、俺?俺の願い事は……ただずっと小糸と一緒にいられますように」
重かったかな。
そう思って小糸を見ると、小糸の表情は泣き出す直前のそれだった。
俺が驚いた瞬間、蝋燭の火が消え、世界が闇に包まれた。
「美味いよ」
「良かった。そのドレッシング俺が作ったんだ」
「ドレッシングって作れるのか?俺、買ってくるもんだと思ってた」
「俺もそう思ってた」
俺がそう言うと小糸が吹き出す。
俺も釣られて笑った。
食事をあらかた食べ終えたところで、二階の俺の部屋に先に行っていてくれるよう小糸に頼んだ。
俺はケーキを冷蔵庫から取り出すと、紅茶を淹れて二階にあがった。
「ハッピーバースデー」
両手を塞がれて小糸に部屋の扉を開けてもらった俺がそう言うと、小糸は嬉しそうに微笑んだ。
ケーキを見て更に笑みが深くなる。
「もうお腹いっぱいだよね?できたらちょっとだけでも食べない?」
「普通にまだ食べられるし、食うよ。これ手作りだろ?」
「うん。ちゃんと味見したから大丈夫だと思うんだけど」
俺はケーキを小さな机に置くと、ナイフを手に取ろうとして、はっと気づいた。
「忘れてた」
部屋の勉強机から、「17」の形をした蝋燭を取り出し、ケーキに上に挿す。
「なあ、このケーキの上のハッピーバースデーって書かれてるチョコの板、すごい数のハートマーク飛んでないか?店の人よく書いてくれたな」
苦笑する小糸に俺は顔を赤くしながら、蝋燭に火を灯した。
「それ、俺が書いた」
「えっ、鈴賀が?器用だな」
俺は立ちあがって部屋の電気を消すと、小糸と向かい合って座った。
「さ、願い事して吹き消して」
「いいよ、そんな。願い事なんて」
小糸が首を振る。
「ダメだって。こういうのはちゃんとやんなきゃ」
「じゃあ、鈴賀の願い事は?ここまでしてもらったから、俺が代わりに鈴賀の願い事をするよ」
「えっ、俺?俺の願い事は……ただずっと小糸と一緒にいられますように」
重かったかな。
そう思って小糸を見ると、小糸の表情は泣き出す直前のそれだった。
俺が驚いた瞬間、蝋燭の火が消え、世界が闇に包まれた。
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