スパダリかそれとも悪魔か

まめ太郎

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1番大切なものは絶対に手に入らないので。3

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 その日の帰り道、いつもよりずいぶん口数が少ない俺を諒一は心配そうにのぞき込んだ。

「楓。どうしたんだよ?どっか痛いのか?」
 俺は諒一の言葉に何も答えず、ただ首を振った。
 家の前で諒一と別れて、自分の部屋に入ると、ランドセルを放り投げ、ベットに倒れ込んだ。

 さっき誰が好きか聞かれたとき、俺の頭に一番に浮かんだのが諒一だった。
 でもそんなことあっちゃいけないんだ。
 男が男を好きになるのはおかしいことなんだから。
 きっと小さい頃、好き好き言いすぎておかしくなっているだけだ。
 俺は布団を頭からかぶると、ぎゅっと目を閉じた。

 そんな自分への言い訳もむなしく、俺は諒一にどんどん引かれていった。
 体育の時間、サッカーでゴールをきめる諒一を見ては胸を高鳴らせ、俺の部屋の俺のベットで無防備に寝転がる諒一を見ては、股間がむずむずした。
 そして恐ろしいことに、俺の精通は諒一にキスする夢を見た日だった。
 そのことで、もう自分の気持ちはごまかせないと俺は悟った。

 でもこの穢れた欲望を諒一にぶつける勇気もなく、中学二年で初めて諒一に彼女ができたときも、俺は自分の部屋で声を押し殺して泣くことしか出来なかった。

 そんな思いを抱えたまま、俺たちは同じ高校へ進学した。
 俺が小学校から使っている学習机で英語の予習をしていると、ノックもなしに扉が開いた。
「楓。どうして今日は先に帰ったんだよ。」
 俺は椅子をくるりと回転させ、諒一を見た。
「諒一は彼女と帰るほうがいいと思ったから、気を利かせて先に帰って来たんだけど。」
「別に、横山とは一緒に帰る約束なんてしていないし、これからだって学校の登下校は、俺は楓とするつもりだ。」

 諒一は実の家族とあまり仲が良くない。
 諒一は四人兄弟の三番目で上に年の離れた兄が二人いて、諒一は愛ちゃんという女の子と双子だった。

 諒一の両親はずっと女の子が欲しくて、やっと生まれた愛ちゃんをそれはもう可愛がった。
 そのせいであまり愛情をかけてもらえなかった諒一は、俺の母親に気に入られていたこともあり、俺の家で過ごすことが多かった。
 俺には三つ年上の姉の紅葉がいたが、姉よりも諒一と過ごす時間の方が長かった。
 いっそ俺と諒一が本物の兄弟だったら、こんな不毛な思いを抱かずに済んだかもしれない。

 とにかくそんな理由で日々べったりだった俺らだが、高校にもなって、特に諒一は彼女がいる状態で、登下校を毎日一緒にするというのはおかしくはないだろうか。

 そんな風に強く思ったのは、今日の放課後、諒一の彼女横山美代(ヨコヤマ ミヨ)と話した内容のせいもあった。
「たまには諒一と一緒に帰りたいから、楓君さき帰ってくれないかな?ねっ。この通り。」
 横山さんは学校一可愛いと言われる女の子で、つぶらな瞳を今は閉じて、こちらに拝むように手を合わせている。
「わかった。もちろんいいよ。」
 俺が作り笑顔でそう言うと、横山さんはほっとした顔をした。
「良かったあ。あっ、あと、私が頼んだことは諒一には黙ってて欲しいんだ。」
 俺はそんな彼女のお願いも笑顔で快諾した。
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