スパダリかそれとも悪魔か

まめ太郎

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1番大切なものは絶対に手に入らないので。39

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 俺は目の前にかざされた諒一の手をどかして、顔を上げた。
 諒一は無表情で何を思っているか伺いしれなかった。

「諒一、これ何で?」

 諒一は俺のそばに胡坐をかくと、俺の手を両手で温めるように握った。
 こんな時なのに、俺はそのぬくもりに慰められているような気持ちになった。

「お前が俺と別れた後、絶対に他の男とセックスしてほしくなかった。だけどお前はしたがってたから、俺と別れたら適当な男にヴァージンやるんじゃないかって心配だったんだ。だからゲイサイトで知り合った男に金渡して、お前がそんな気を起こさないようにしてやろうって考えて・・・。」
「俺、お前とセックスしたかったんだよ。だれでもいいわけじゃなかった。お前と別れて自暴自棄になってた時もあるけど、でもまさかお前がそんな風に考えて、こんなことするなんて・・・俺、今だってあの時のこと思い出すと怖くて、フラッシュバックだってするのに・・・酷いよ。」 

 先ほどの映像が頭に蘇り、俺は過呼吸を起こしそうになった。
 そんな俺を諒一がきつく抱きしめる。
「楓。ごめん。楓、落ち着いて大きく息を吐くんだ。そう、そのまま続けて。」
 俺の息が整うと諒一は俺の背を摩りながら話し始めた。
「信じられないかもしれないけど、俺もあそこまであいつがやるなんて思ってなかった。ちょっと脅しの言葉をかけるだけって約束だったのに、あの馬鹿調子に乗りやがって。」
 諒一はぎりりと奥歯を噛みしめた。

 俺は見たこともない諒一の憤怒の表情に怯え、体を離そうとした。
 しかし諒一は俺を抱きしめる腕をさらに強め、それを許さない。
「でも、もう大丈夫だ。楓にあんなことをした奴を俺が許すわけないだろ。あいつ金はいらないから俺につっこんでくれって頼むから、望み通りにしてやったよ。」
「あいつと寝たの?」
 俺の質問に諒一が嫌そうな顔をした。
「そんなことするわけないだろう。俺のものよりだいぶでかいモンつっこんでやったから、あいつ当分尻が緩くて苦労したんじゃないか。二度と俺たちの前に顔を見せるなってきつく忠告したから、もうあいつと会うこともないよ。」
 そう言って笑う諒一は、俺が知らない他人のようだった。
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