スパダリかそれとも悪魔か

まめ太郎

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 自分の左手が何かに触れているような感覚があって、俺は二、三回瞬きした。

 部屋は早朝なのかもう十分明るく、薄いブルーの明かりに包まれていた。
 俺の隣で下着姿の怜雄が胡坐をかいて座っている。

「起こしちまったか。」
 怜雄の言葉に俺は上半身を起こすと、目を擦った。
 目を擦った時の違和感で、自分の左手に目をやる。
 薬指に、じんわりと光る銀色のリングがはまっていた。

「これ・・・。」
「優の二十歳の誕生日プレゼント。ちゃんと就職したら、もっといい物買ってやるけど、とりあえずはこれつけてて。」
 怜雄が俺の左手を取り、リングに口づける。

 俺の左手を軽く握ったまま、リングを親指でなでつつ、怜雄が言う。
「本当はもう少し前に渡したかったんだけど、俺のせいでいろいろあったし。」
 怜雄が唇の端に苦い笑みを浮かべる。

「俺、自分が他の奴と違って何か大切なものが欠けてるって分かってるたんだ。だけどそれが何なのか、どうやったら埋まるのかずっと分からなかった。でも、優と一緒に居ると俺のここがすごく満たされる。俺の欠けた何かを、優が埋めてくれているように感じるんだ。」
 そう言いながら、怜雄が自分の胸を拳で叩く。

「だから俺のそばにずっといて、俺の不格好な心を満たして欲しい。優が俺のことを信じられないって言うなら、一生かけて信じさせてみせるから。」
 怜雄が俺を真剣な瞳で見つめて言う。

 俺は微笑んで怜雄に言った。
「怜雄、指輪本当に嬉しい。ありがとう。こんな俺でよければずっと…ずっと怜雄にそばにいたいっ…。」
 涙をこぼす俺を怜雄がぎゅっと抱きしめる。
「笑うか泣くかどっちかにしろよ。」
「だって。だってえ。」
 俺は益々涙が止まらなくなり、恥ずかしかった。額を怜雄の首筋に擦り付け、ずっと鼻をすする。

「怜雄のぶんの指輪はないの?」
 俺は怜雄に背中を撫でられ、しばらくしてようやく落ち着くと言った。
「俺の分は優が買ってよ。俺の誕生日にさ。」
「分かった。バイト増やす。」
「それはダメ。」
 怜雄は笑って俺を抱きしる腕に力を込めた。
 
 その日から俺の薬指に輝く指輪に対し、友達に色々言われ、答えるのは大変だったがやはり嬉しかった。

 一週間後、怜雄に同じ指輪を買わなくてはと、指輪の内側に刻印されたブランドロゴを見て俺が絶叫するまで、誕生日の幸福な余韻はずっと続いた。
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