vamps

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「ねえ、ヒューイ。あなたは私に感謝しているって言ってくれたじゃない。本当に感謝しているなら今、その借りを返して欲しいの。一か月で良いわ。傍に居てくれない？　誰かが傍に居てくれないと私、めちゃくちゃになっちゃいそうで」
　シュリのすすり泣く声が部屋に響く。
「俺が愛しているのはアレンだけだ。そんな俺でも傍に居て欲しいのか？　」
　ヒューイの問いに何度もシュリは頷いた。
「ええ。ええ、そうよ。いて欲しいわ。お願い」
「分かった。ちゃんと毎日見舞いに来るよ。でも一か月だけだぞ」
「ありがとう、ヒューイ」
　さっき泣いていたのが嘘みたいに、シュリが笑う。
　
　シュリの家から歩いて、帰路についているところで、ヒューイが大きなため息をついた。
「結局、こうなっちまってすまない」
　俺は首を振った。
「仕方ないよ。今のシュリを一人にしておけない気持ちもわかるし。それに俺のことを考えてくれたせいもあるんだろ？　俺がテロリストの仲間だなんて、警察に言われないように」
　ヒューイが大きなため息をついた。
「警察の奴らだって、そんな馬鹿な嘘、簡単に信じるとは思わない。けど、また前みたいにお前が長いこと警察に拘束されたりするのは嫌だしな。本当にすまない。シュリの奴、ちょっとおかしくなっているみたいだ」
「あんな理由で婚約破棄されたら、落ち込んでおかしくなる気持ちは分かるよ」

　ヒューイは俺の両手を握りしめた。
「アレン、一か月だけだ。それに勘違いしないで欲しい。確かに俺は前にシュリに好意をもっていた。でも今俺が好きなのはお前だけだから」
　ヒューイの言葉に俺は強ばっていた体から力が抜けるような思いがした。
　これから一か月、ヒューイはシュリと同じ部屋で過ごすことが増える。その大半の時間は2人きりだろう。
　過去、どれだけヒューイがシュリに焦がれていたか知っている身としては、不安な気持ちもあった。
　それでもヒューイが俺のことを好きだと言ってくれる間は、その気持ちを信じたい。