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「朝ごはんはいいや。行ってきます」
カレッジに行くにはかなり早い時間だったけれど、俺は家をでた。
1人で色々考えたかった。
ヒューイは自分の胸から痣が消えたことに気付いただろうか。
気付いているなら、どう感じただろうか。
そんなことを考えながら、速足でカレッジを目指した。
カレッジにいる間も、俺は鬱々として過ごし、ヒューイの待ち合わせ時間に合わせ病院へと向かった。
ヒューイは病院の前に立っていた。
俺を見て微笑みを浮かべる。
それはいつもと変わらない笑顔に思えた。
「よう」
ヒューイに案内され、病院内のカフェに入る。
それなりに混雑していて、騒がしいのが、ありがたかった。
今の心境で、静かな場所でヒューイと向き合う勇気が俺にはなかった。
「シュリだけど、電話で言った通り、大丈夫だから。出血の割に、傷は浅くて、明日には退院する予定だ」
「そう、良かった」
ヒューイがコーヒーカップに口をつける。
「今朝、胸の薔薇が消えているのに気付いて。本当に驚いたよ」
俺は目を見開くと、カップをソーサーに戻した。動悸がして、少しコーヒーをこぼしてしまう。
「気付いていたんだ」
「シュリの血を洗い流そうとしてな」
一度着替えに帰ったのか、ヒューイの服は昨日と違い、血もついていなかった。
「そういうことがあるって話は聞いた事あったけれど、驚いた」
「俺も」
「アレン、体調は大丈夫か? 」
「うん、平気」
俺はやつれた顔のヒューイをじっと見つめながら、会話を続けた。
「それでタイのことなんだが」
「うん。これでお互い自由の身だね。良かった」
ヒューイの言葉に被せるように言うと、ヒューイ眉間の皺が深くなった。
「アレン、お前は」
「ヒューイ、こんなところにいたのか」
顔を上げると、そこにいたのはマックだった。
マックは少し痩せたようだったが、仕立てのいいスーツから金の腕時計を覗かせた彼は、相変わらず堂々とした雰囲気だった。
カレッジに行くにはかなり早い時間だったけれど、俺は家をでた。
1人で色々考えたかった。
ヒューイは自分の胸から痣が消えたことに気付いただろうか。
気付いているなら、どう感じただろうか。
そんなことを考えながら、速足でカレッジを目指した。
カレッジにいる間も、俺は鬱々として過ごし、ヒューイの待ち合わせ時間に合わせ病院へと向かった。
ヒューイは病院の前に立っていた。
俺を見て微笑みを浮かべる。
それはいつもと変わらない笑顔に思えた。
「よう」
ヒューイに案内され、病院内のカフェに入る。
それなりに混雑していて、騒がしいのが、ありがたかった。
今の心境で、静かな場所でヒューイと向き合う勇気が俺にはなかった。
「シュリだけど、電話で言った通り、大丈夫だから。出血の割に、傷は浅くて、明日には退院する予定だ」
「そう、良かった」
ヒューイがコーヒーカップに口をつける。
「今朝、胸の薔薇が消えているのに気付いて。本当に驚いたよ」
俺は目を見開くと、カップをソーサーに戻した。動悸がして、少しコーヒーをこぼしてしまう。
「気付いていたんだ」
「シュリの血を洗い流そうとしてな」
一度着替えに帰ったのか、ヒューイの服は昨日と違い、血もついていなかった。
「そういうことがあるって話は聞いた事あったけれど、驚いた」
「俺も」
「アレン、体調は大丈夫か? 」
「うん、平気」
俺はやつれた顔のヒューイをじっと見つめながら、会話を続けた。
「それでタイのことなんだが」
「うん。これでお互い自由の身だね。良かった」
ヒューイの言葉に被せるように言うと、ヒューイ眉間の皺が深くなった。
「アレン、お前は」
「ヒューイ、こんなところにいたのか」
顔を上げると、そこにいたのはマックだった。
マックは少し痩せたようだったが、仕立てのいいスーツから金の腕時計を覗かせた彼は、相変わらず堂々とした雰囲気だった。
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