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はじまり~魔法使い編

7.追体験

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 夢かと思い目を擦っていても豪雨が降り注ぐ古城の島にいて自分の手を見ると右腕が怪物に似た醜悪な形になっていた。

「如何した相棒?」

 声が聞こえて振り向くと顔の半分が老けていて右腕は俺のとは違って目玉が大量に付いているうえに蠢いていた。
 知らない人が声を掛けた事に俺は驚きながら質問する。

「あんたは一体誰だ? それにここは何所だ?」
「誰だって何を言っている? 君の相棒マーリンだぞ」

 マーリンと言う男は風が吹く方を指しながら説明する。

「私たちは魔物リヴァイアサンを討伐するためにこの場所にいるだろ」

 そう言うと風が吹き出す方に進むと少し考えると今が何年なのか浮かび上がる。

「今は何年だ?」
「何年って、神像歴三六五年だがそれがどうした」

 三六五年ってずい分昔の上にトウキョウ王国が生まれ前じゃないか!
 あまりの昔にいる事に驚いて気になる事が浮かび上がる。

「待てよ、それじゃあ……」

 気になる事を言おうとしたがマーリンが止まる。

「お喋りはここまでだな」

 マーリンがそう言うと目の前に魔物が現れた。
 その姿は目がルビーのように赤く体はネズミが纏わり付いているようになっている。

「あれは何だ!?」
「あれはゴブリンと言う魔物だ」
「あれがゴブリン」

 ゴブリンと呼ばれる魔物は奇声を上げるとそこから仲間を呼び出す。

「ゴブリンは魔法で生み出された毒で耐えきれたネズミが集合体として生まれた魔物だ」

 マーリンが教えてくれる間にもゴブリンが俺達に襲い掛かる勢いで向かってくる。

「もし魔法の詠唱を忘れているなら見本を見せるぞ」

 マーリンはそう言うと懐から動物の喉笛を取り出して唱える。

「我が魂の咆哮は野犬の咆哮なり! 野犬のハウンド喉笛トラウト!」

 唱え終えたとたんに野犬の遠吠えが聞こえてゴブリンが吹き飛ばされて壁に叩きつけられる。

「このように魔法を詠唱すれば発動する事が出来る、試しに剛腕魔法を唱えて見ろ」

 マーリンに言われたように懐から人の骨みたいな物を握り魔法を唱えてみる。

「我が右腕は古代の巨人の右腕なり! 巨人族のジャイアント腕《アーム》!」

 魔法を唱え終えると人骨が粉状になり自分の右腕に纏った瞬間に右腕を肥大化して巨人族の腕になった。
 ゴブリンが俺に向かって飛んでくるが巨人化した右腕を振り回す。

「セイッ!」

 ゴブリンが右腕に当たると後ろに吹き飛ばされ倒れていると体から黒い泥が出てくる。

「その泥は本来の姿を隠すための泥で止めを刺す場合は生贄か救済をする事が出来る」

 マーリンが俺の疑問を答えつつ次々にゴブリンを倒していく。
 マーリンに言われたことを覚えてゴブリンだったネズミに近づき自分の右手を翳して生贄にする。
 生贄にしたとたんネズミが断末魔を上げて死ぬと赤黒い霧が自分の右腕に纏って右腕に吸収される。
 その感覚は気色悪い液体が右腕に浸って行き吐き気がするくらい気持ち悪かった。

「大丈夫か? まるで始めて生贄にしたような反応じゃないか?」

 マーリンが気遣ってくれるが魔物を全員殺す俺にとってこんな事を慣れなくてはいけないと思ってマーリンが倒した魔物も生贄にする。
 生贄にするほど右腕に不快感が流れてくるが歯を食いしばってゴブリン達を生贄にする。
 どれくらい生贄にしたのか分からないが気付くとゴブリン達はいなかった。

「大丈夫か? 少し休んだ方がいいぞ」
「分かった」

 マーリンに言われて倒れている柱に座って少し休む。
 マーリンを見て観るとやはり顔の半分が老人みたいになっている。

「マーリンその顔はどうかしたのか?」
「アア、この顔は私の能力による代償だ」

 如何やらマーリンは未来を見る事が出来るが代償に通常の倍に年を老いてしまうようになっているが魔物を生贄にすれば若返るようになるらしい。

「すまん、お前が若返るための魔物を全員殺して」
「イヤなぜかお前はいつもより魔物に関して恨んでいたから大丈夫だ、それに……」

 マーリンは風が吹いている方を向いていると地響きが起きる。

「いったい何が起きて――!?」

 マーリンに聞こうとするが目に映る魔物を見て驚く。
 その姿は一言でいえば首が長すぎる鰐だった。
 首の長さは気が遠くなるほど長く頭部は鰐の口と青年の顔を合わせたような姿になっている。

「マーリン、あれって!」
「アア、あれこそ私たちが討伐する魔物リヴァイアサンだ!」

 リヴァイアサンが遠吠えすると他の魔物たちが現れる。

「構えろ!」

 急いで剛腕魔法を唱えて身構える。
 巨大な魔物だが畏怖よりも魔物に対する怒りで勇気が溢れる。

「来るぞ!」
「嗚呼!」

 戦闘開始の合図と共にリヴァイアサンが雷雨と合わせるように咆哮する。
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