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2章 邪月の都ルナ
52.争いの前日
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平穏な平原にとても豪華な屋敷があり、そこには一つの家族がいて、その家族は満面の笑みで戯れていた。
そこにいるウォーロックは微笑ましく見る。すると家族の一人である少女がウォーロックを呼ぶ。
『ウォーロック、一緒に遊びましょー!』
まだ幼さが残る少女は元気よくウォーロックを呼ぶ。ウォーロックは「この幸せがしばらく続いて欲しい」と願い、少女の所に向かう――その時だった。
ウォーロックが一歩進む、すると平穏な平原から一変おぞましさが醸し出す真夜中の山岳にいた。それにウォーロックの姿が、大人から幼い少年になっている。
「ナッ、ここは――!」
ウォーロックは周りを見てハッと驚く。その顔は懐かしさと言うよりも、心の傷を触れたような驚きだった。
驚いたと同時に足元から何かが生えてくる、ウォーロックは息を荒く冷や汗を流しながら足元を見る。
なんと足元を掴んでいたのは、ウォーロックと同じ姿をした狼人だった。
ウォーロックは怯えた目で足元を掴んでいる狼人に叫ぶ。
「父さん……母さん!」
懐かしい両親を呼ぶ、だがその姿は生きている者とは真逆だった。
腐りはてた四肢、たれだす臓物、ねじ曲がった片腕、うじ虫が蠢く肌、肉を突き破る骨、その姿はまるでむごたらしく殺された死体だった。
ウォーロックはあまりのおぞましさに体がこわばって動けずにいる。すると父親らしき狼人が歯を強くギシギシとなり呟く。
「何で……何でお前だけのうのうと生きているんだ?」
「ウ、ウゥ……」
父親の恨み節を聞いたウォーロックは小さく後ずさり、その恨み節を聞いた他の狼人が次々と恨み言を言う。
「そうだ……お前だけ幸せになるなんてふざけるな!」
「そうだぞ、党首の息子でありながらも私達を殺した奴に従うなんて!」
「そんなの、認められるか! 俺達の復讐を果たせ!」
「あ、アァ……」
当主の息子と呼ばれたウォーロックは、あまりの恐ろしさとおぞましさに耐え切れずこの場から逃げ出す。
しかしウォーロックの背中に何かが当たって、ウォーロックは恐ろしくゆっくりと振り向く。するとそこには仮面を着けた緑髪の青年がおり、青年はウォーロックに囁く。
「お前は悪だ。悪には生きる価値が無く、他者を不幸にさせる事しか出来ない」
ウォーロックは青年の言葉を聞く、それと同時に足元にいた狼人達が自分の周りを囲んで叫ぶ。
「「果たせ……果たせ……復讐を果たせぇぇぇ!」」
「ウワァァァァァ!」
狼人はそう言うと同時に異形の怪物に変わり、一斉にウォーロックに襲い掛かり、ウォーロックの悲鳴が真夜中の山岳に響いた。
▲▽▲▽▲▽
「ウワァァァァァ!」
ウォーロックは大きな悲鳴を上げて起き上がる。ウォーロックは息を荒くしつつ周りを見て少しだけ胸を撫で下ろす、しかし彼は壁を強く叩いて叫ぶ。
「クソッ! まただ……またあの記憶が……!」
ウォーロックは悔しさと後悔が混ざった声で呟いて布団を強く握る。
その様子を見ていたアマンは扉から離れてどこかに歩く。その時に一体の悪魔が話しかける。
『アマイ――』
悪魔がアマンの本名を言おうとする、だがアマンが素早く悪魔の口を塞いで黙らせる。
少しだけ塞がれて悪魔は慌てて良い直す。
『あ、アマン様。あの狼人に何かしたのですか?』
悪魔が呼びなおしたのを聞いて、アマンは塞ぐのを止めてさっきの事を話す。
「あれか? あいつに掛けたのは絶望の悪夢だ」
『絶望の悪夢ってそんな効果ありましたか? 俺が使ったときは動きを封じる程度だったすけど?』
悪魔は首を傾げる。
絶望の悪夢は相手の恐怖を元に動きを封ずる呪怨系統の魔法だ。だがそれは相手の心が強靭だと効かなく、アマンはその質問を軽く答える。
「確かに絶望の悪夢は相手の心が強靭だと効かない。だがそれは相手の心の傷を追体験させる事ができる」
『相手の心の傷……って! まさか……』
悪魔はアマンが言った言葉を理解しそれを見たアマンは呆れる。
絶望の悪夢は恐怖を元に相手の動きを封じる魔法だ。
しかしもう一つの効果は相手の心の傷を追体験……つまり、トラウマをもう一度体験させたり少し加えたりする事ができ、下手すると相手を廃人まで追い込むことから一部から禁術と呼ばれている。
アマンは下手褒めする悪魔を横目に考える。
(あの時に見た弾丸……初めて見たけどかなり凄い技術だ。もしアレを作った奴が俺達に牙を向けると厄介だな。予備のために他の連中に始末するように言わないとな)
アマンはそう思いながらこの場から去る。
▲▽▲▽▲▽
アリスとヴィンセントが味方になって一週間が経った。俺は今、お嬢様用の武器をヴィンセントとアリオンと共に最終段階に移っている。
明日早く屋敷から出て、ルナに向かう船に乗ってフォルトさんと合流する。それまでにアレを完成したかったがまさかここまで完成するなんてすごいな。
さすが魔鉱姫と呼ばれることもあるし、ヴィンセントは魔法具開発に選んで器用さが上がってさらに芸当が細かくなっているからな。
俺は二人に労いの言葉をかける。
「二人とも悪いな。俺だけで完成するのは難しくて、『船が動く中で開発しなきゃいけない』と思っていたけど二人が手伝ってくれたことで何とか間に合った」
俺は少し褒めるが二人は謙遜に返す。
「イエ、アレス様に褒められるなんて滅相ですわ!」
「いやいや、自分は少し手癖をいいだけだ。それにアレスが持つ知識や技術が凄いからな」
そうか? 俺は日本にいたころの記憶を再現しようとしているだけど? 二人には凄い事だろうな。
そう思いながら弾丸の最終チェックを終え、明日に向けて寝ようとする。
その時に誰かがドアをノックし、誰だろうと思いながら開けるとアリスが寝間着でいた。
アリスが着ている寝間着は少し青みがあって、彼女が好む青色のマントに似ていてとても既視感がある。
俺は少し首を傾げながらアリスに聞く。
「アリス、こんなに遅くにどうしたんだ? いつもはお嬢様と一緒に寝ているのに?」
いつもならお嬢様と姉妹のように寝ているのになんか珍しいな。そう思っているとアリスは恥ずかしそうに頼む。
「えっと……今日一緒に寝てくれないかな?」
「エ?」
俺は少し驚きつつアリスと寝るのが久しいなと思い一緒に寝る。
にしても本当に懐かしい。けどそれはまだ幼くて小さい子供だったからで、今は大人で肉体的に成長して特に腕にとても柔らかいものが押し付けられる感覚がする。
いや~アリスって意外と着やせするんだな~ってそんな問題じゃない! ヤバイ、とにかくいろいろとヤバイ! いまだに俺は童貞でこんなの心臓に悪い、膨れ上がる煩悩に耐えるためにアリスに聞く。
「えっと……アリス、少し野暮かもしれないけど、魔術師学校を飛び出して大丈夫なのか?」
俺の質問にアリスは満面の笑みで答える。
「大丈夫だよ。私は+Aだから学校に行かなくていいの」
「そ、そうなんだな……」
俺はアリスの成長っぷり少し驚く、凡人がかなり努力して良くても-Bだ。
ちなみにヴィンセントは俺が知っている異世界知識をもとに、様々な魔法具を作り出して卒業資格を手にしたらしい。
アア……これが才能の差か……。孤児院にいた頃、ヴィンセントは「異世界の知識を持っていてすごい」と言っていたが、元々俺はただのサラリーマンだから驚きを通り越して呆れてしまうからな。
そう思って言うと、アリスが俺の腕をさらに強く押し付ける。
「ファッ!?」
俺は思わず声に出して驚いてしまう。
腕に感じる柔らかさがさらに強くなっているし、理性の鎖がかなり削られる! このままじゃアリスに襲い掛かってしまう、急いで心の中で般若心経を詠んで落ち着かせる。
するとアリスは一筋の涙を流す。俺はアリスに心に過ぎったことを言う。
「もしかして心配していたのか?」
「……ヴィンセントが『アレスはよく察しやすい』って言っていたのが分かるよ」
アリスはそう言ってぽつりぽつりと訳を話す。どうやらアリオンの話を聞いて最初は否定した、しかし心の奥底で「もしかして本当だった……」と思い今に至った。
俺はその言葉を聞いて暴走寸前だった煩悩が収まり、アリスを優しく抱く。
するとアリスは顔を真っ赤にして焦る。
「エエッと、アレスどうしたの?!」
俺は少しだけ強くして囁く。
「すまん、アリスを心配させて悪かった。これからは俺が守るから心配しないでくれ」
「……うん」
そう囁くとアリスは少しだけ頬を赤らめ、俺達は目を閉じる。
その後は起きるとヴィンセント達が扉の隙間を見て、俺は驚きつつも「アリスに変な事はしていない!」と言って解散させた。
まったく、俺の事を何だと思っているんだ? そう思いつつ俺達は船に乗ってルナに向かう。
そこにいるウォーロックは微笑ましく見る。すると家族の一人である少女がウォーロックを呼ぶ。
『ウォーロック、一緒に遊びましょー!』
まだ幼さが残る少女は元気よくウォーロックを呼ぶ。ウォーロックは「この幸せがしばらく続いて欲しい」と願い、少女の所に向かう――その時だった。
ウォーロックが一歩進む、すると平穏な平原から一変おぞましさが醸し出す真夜中の山岳にいた。それにウォーロックの姿が、大人から幼い少年になっている。
「ナッ、ここは――!」
ウォーロックは周りを見てハッと驚く。その顔は懐かしさと言うよりも、心の傷を触れたような驚きだった。
驚いたと同時に足元から何かが生えてくる、ウォーロックは息を荒く冷や汗を流しながら足元を見る。
なんと足元を掴んでいたのは、ウォーロックと同じ姿をした狼人だった。
ウォーロックは怯えた目で足元を掴んでいる狼人に叫ぶ。
「父さん……母さん!」
懐かしい両親を呼ぶ、だがその姿は生きている者とは真逆だった。
腐りはてた四肢、たれだす臓物、ねじ曲がった片腕、うじ虫が蠢く肌、肉を突き破る骨、その姿はまるでむごたらしく殺された死体だった。
ウォーロックはあまりのおぞましさに体がこわばって動けずにいる。すると父親らしき狼人が歯を強くギシギシとなり呟く。
「何で……何でお前だけのうのうと生きているんだ?」
「ウ、ウゥ……」
父親の恨み節を聞いたウォーロックは小さく後ずさり、その恨み節を聞いた他の狼人が次々と恨み言を言う。
「そうだ……お前だけ幸せになるなんてふざけるな!」
「そうだぞ、党首の息子でありながらも私達を殺した奴に従うなんて!」
「そんなの、認められるか! 俺達の復讐を果たせ!」
「あ、アァ……」
当主の息子と呼ばれたウォーロックは、あまりの恐ろしさとおぞましさに耐え切れずこの場から逃げ出す。
しかしウォーロックの背中に何かが当たって、ウォーロックは恐ろしくゆっくりと振り向く。するとそこには仮面を着けた緑髪の青年がおり、青年はウォーロックに囁く。
「お前は悪だ。悪には生きる価値が無く、他者を不幸にさせる事しか出来ない」
ウォーロックは青年の言葉を聞く、それと同時に足元にいた狼人達が自分の周りを囲んで叫ぶ。
「「果たせ……果たせ……復讐を果たせぇぇぇ!」」
「ウワァァァァァ!」
狼人はそう言うと同時に異形の怪物に変わり、一斉にウォーロックに襲い掛かり、ウォーロックの悲鳴が真夜中の山岳に響いた。
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「ウワァァァァァ!」
ウォーロックは大きな悲鳴を上げて起き上がる。ウォーロックは息を荒くしつつ周りを見て少しだけ胸を撫で下ろす、しかし彼は壁を強く叩いて叫ぶ。
「クソッ! まただ……またあの記憶が……!」
ウォーロックは悔しさと後悔が混ざった声で呟いて布団を強く握る。
その様子を見ていたアマンは扉から離れてどこかに歩く。その時に一体の悪魔が話しかける。
『アマイ――』
悪魔がアマンの本名を言おうとする、だがアマンが素早く悪魔の口を塞いで黙らせる。
少しだけ塞がれて悪魔は慌てて良い直す。
『あ、アマン様。あの狼人に何かしたのですか?』
悪魔が呼びなおしたのを聞いて、アマンは塞ぐのを止めてさっきの事を話す。
「あれか? あいつに掛けたのは絶望の悪夢だ」
『絶望の悪夢ってそんな効果ありましたか? 俺が使ったときは動きを封じる程度だったすけど?』
悪魔は首を傾げる。
絶望の悪夢は相手の恐怖を元に動きを封ずる呪怨系統の魔法だ。だがそれは相手の心が強靭だと効かなく、アマンはその質問を軽く答える。
「確かに絶望の悪夢は相手の心が強靭だと効かない。だがそれは相手の心の傷を追体験させる事ができる」
『相手の心の傷……って! まさか……』
悪魔はアマンが言った言葉を理解しそれを見たアマンは呆れる。
絶望の悪夢は恐怖を元に相手の動きを封じる魔法だ。
しかしもう一つの効果は相手の心の傷を追体験……つまり、トラウマをもう一度体験させたり少し加えたりする事ができ、下手すると相手を廃人まで追い込むことから一部から禁術と呼ばれている。
アマンは下手褒めする悪魔を横目に考える。
(あの時に見た弾丸……初めて見たけどかなり凄い技術だ。もしアレを作った奴が俺達に牙を向けると厄介だな。予備のために他の連中に始末するように言わないとな)
アマンはそう思いながらこの場から去る。
▲▽▲▽▲▽
アリスとヴィンセントが味方になって一週間が経った。俺は今、お嬢様用の武器をヴィンセントとアリオンと共に最終段階に移っている。
明日早く屋敷から出て、ルナに向かう船に乗ってフォルトさんと合流する。それまでにアレを完成したかったがまさかここまで完成するなんてすごいな。
さすが魔鉱姫と呼ばれることもあるし、ヴィンセントは魔法具開発に選んで器用さが上がってさらに芸当が細かくなっているからな。
俺は二人に労いの言葉をかける。
「二人とも悪いな。俺だけで完成するのは難しくて、『船が動く中で開発しなきゃいけない』と思っていたけど二人が手伝ってくれたことで何とか間に合った」
俺は少し褒めるが二人は謙遜に返す。
「イエ、アレス様に褒められるなんて滅相ですわ!」
「いやいや、自分は少し手癖をいいだけだ。それにアレスが持つ知識や技術が凄いからな」
そうか? 俺は日本にいたころの記憶を再現しようとしているだけど? 二人には凄い事だろうな。
そう思いながら弾丸の最終チェックを終え、明日に向けて寝ようとする。
その時に誰かがドアをノックし、誰だろうと思いながら開けるとアリスが寝間着でいた。
アリスが着ている寝間着は少し青みがあって、彼女が好む青色のマントに似ていてとても既視感がある。
俺は少し首を傾げながらアリスに聞く。
「アリス、こんなに遅くにどうしたんだ? いつもはお嬢様と一緒に寝ているのに?」
いつもならお嬢様と姉妹のように寝ているのになんか珍しいな。そう思っているとアリスは恥ずかしそうに頼む。
「えっと……今日一緒に寝てくれないかな?」
「エ?」
俺は少し驚きつつアリスと寝るのが久しいなと思い一緒に寝る。
にしても本当に懐かしい。けどそれはまだ幼くて小さい子供だったからで、今は大人で肉体的に成長して特に腕にとても柔らかいものが押し付けられる感覚がする。
いや~アリスって意外と着やせするんだな~ってそんな問題じゃない! ヤバイ、とにかくいろいろとヤバイ! いまだに俺は童貞でこんなの心臓に悪い、膨れ上がる煩悩に耐えるためにアリスに聞く。
「えっと……アリス、少し野暮かもしれないけど、魔術師学校を飛び出して大丈夫なのか?」
俺の質問にアリスは満面の笑みで答える。
「大丈夫だよ。私は+Aだから学校に行かなくていいの」
「そ、そうなんだな……」
俺はアリスの成長っぷり少し驚く、凡人がかなり努力して良くても-Bだ。
ちなみにヴィンセントは俺が知っている異世界知識をもとに、様々な魔法具を作り出して卒業資格を手にしたらしい。
アア……これが才能の差か……。孤児院にいた頃、ヴィンセントは「異世界の知識を持っていてすごい」と言っていたが、元々俺はただのサラリーマンだから驚きを通り越して呆れてしまうからな。
そう思って言うと、アリスが俺の腕をさらに強く押し付ける。
「ファッ!?」
俺は思わず声に出して驚いてしまう。
腕に感じる柔らかさがさらに強くなっているし、理性の鎖がかなり削られる! このままじゃアリスに襲い掛かってしまう、急いで心の中で般若心経を詠んで落ち着かせる。
するとアリスは一筋の涙を流す。俺はアリスに心に過ぎったことを言う。
「もしかして心配していたのか?」
「……ヴィンセントが『アレスはよく察しやすい』って言っていたのが分かるよ」
アリスはそう言ってぽつりぽつりと訳を話す。どうやらアリオンの話を聞いて最初は否定した、しかし心の奥底で「もしかして本当だった……」と思い今に至った。
俺はその言葉を聞いて暴走寸前だった煩悩が収まり、アリスを優しく抱く。
するとアリスは顔を真っ赤にして焦る。
「エエッと、アレスどうしたの?!」
俺は少しだけ強くして囁く。
「すまん、アリスを心配させて悪かった。これからは俺が守るから心配しないでくれ」
「……うん」
そう囁くとアリスは少しだけ頬を赤らめ、俺達は目を閉じる。
その後は起きるとヴィンセント達が扉の隙間を見て、俺は驚きつつも「アリスに変な事はしていない!」と言って解散させた。
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