クロスオーバー・ラブ

黒崎由希

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目が覚めたら、後輩と…2

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「んっ…」


 歯列を割り入った舌先が、鼻裏の辺りを擦る。


 口の中では一番感じる箇所を舌先で弄られた快斗の鼻筋から色っぽい声が出ると、知徳の舌は味をしめたかのように快斗の舌に自身の舌を絡ませ、その滑りを愉しむかのように艶かしく蠢かせた。


(なんで、いきなり)


 酔っ払いとディープキスしてんだよこいつは、と思いつつ、それでも抵抗する力を振り絞ってまで抵抗する気力がなかった快斗は、甘んじて知徳のディープキスを受け続けた。

「…っ、…すみま、せん…」

「──お、前…」

 お互いの息が乱れるほど長い間し続けたキスのせいで、唇を離した知徳との間に、透明な滴りが糸を引く。

 寛げられた首筋から覗く胸板を軽く上下させ喘いでいた快斗は、熱に浮かされたような目差しで見つめてくる知徳から視線を逸らし、息を整えつつ口火を切った。

「酔っ払いにキスなんかして…ゲロったら、どうする気だったんだよ」

「…それは、考えて…ませんでした」


(本能に、従順になってしたってか?)


 何が知徳のスイッチを押し、男とキスしたいと思わせたのかは分からないが、酔っ払っているのは自分だけではないという証拠かもしれない。


 …コップ酒で酔うほど下戸ではない。


 しかし疲れた体にアルコールは覿面に利いたらしく、恐らくそれは後輩で同僚の知徳も同じなのかもしれないと思うと、怒る気にもなれなかった。



 酔っぱらいの戯れ。



 あ~、よくあるよくある~…と、泥沼へ沈み込むような眠りに誘われ頭をベッドに戻すと、すーっ…と、穏やかで心地好い眠りに全身が吸い込まれる。


 このままこの暗闇に落ちれば、きっと気持ち良く寝られる…


 と、意識を手放そうとした…瞬間。


「やっぱおれには、興味持ってもらえないんですね」

「……あ?」

 寝入りばなを挫く後輩の声に、快斗の口から不機嫌な声が漏れ出す。


(寝かせろよ)


 明日仕事なのはお互い同じだろ、と思いながら、相変わらず快斗の上にいる知徳を睨みつけた。

「やっぱ、いーんですか?」

「あぁ?」

斉藤さいとう課長です。…あの人と付き合ってるから、他には目が向かないってことなんですよね」

「ッ」

 酔っ払いの耳にもはっきりと聞こえた、明瞭な語り口。

 普段の知徳にない、歯切れの良い言葉遣いで名指しされたその名前に驚いた快斗の目が開き、完全に眠気を忘れたかのような光を宿した。


 ――斉藤課長。 快斗と知徳が所属している課の長であり、同僚女子たちに

『エロフェロモン垂れ流しの、セクシー番長』

 と言わしめるほどの、男前な壮年男子。


 三十代の時に一度結婚歴があるもののその後は独身を貫いており、五十代に入っているとは思えない若々しい容姿と雄のフェロモンを漂わせていることから、斉藤課長の『人生』という名の隣の席を、虎視眈々と狙っている女性の影が常にちらついて見えていた。


 が、実はその部下でもある快斗と褥を共にしていることは、二人だけの秘密なはずだ。

「どう、して…」

 酔いが回り、くらくらする頭で快斗が紡げた言葉はそれだけだったが、馬乗りの体勢を続けている知徳には、その呟きだけで快斗が何を知りたがっているのかが分かったようだった。



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