クロスオーバー・ラブ

…just a bit digress.２

　

「…」

　下着に靴下、しわしわになったワイシャツに不承不承の体で袖を通した快斗は、ベットの上で安眠を貪っている知徳を見ると、思いっきり鼻の上に皺を寄せ、しかめっ面を作った。


（すっげぇ不本意だけど）


　後を引きずらないようにするためにもここの部屋代はオレ持ちだ、と言わんばかりに財布から取り出した万札を置くと、なるべく音を立てないようにしながら夜明けの街を抜け出し、家路に着いたのだった。


（――…つー訳で。）


「取り合えず、今日の予定はこれだけだ。――以上、解散」

「はーい」

「『はい』は短く。…ちゃんとしろ、コラ」

「すみませーん」


　課の、朝礼がてらのミーティングが終わると、三々五々自分たちのディスクへ散って行くの同僚たちを見ながら、快斗は肩でため息をついた。


　…幸いなことに、昨日着ていたスーツには、あまり皺が寄っていなかった。


　その代わり、と言うべきか、結構お気に入りだったワイシャツの方は知徳の『おいた』のせいで再生不能かもしれない皺が刻み込まれていて、捨てるべきかと少し頭を悩ませられた。


　が、実際、頭を悩ませねばならない問題は、今ここに、目の前に…あった。


（気まずくなることに、気づいてなかった、…ってぇ訳じゃないよな）


　ミーティングの最中、快斗と眼が合うたびに赤面して、もじもじと指を揉んでいた知徳。


　その都度、睨みつけるようにして見つめ返すとぱっと目を逸らし、俯くことで快斗の視線を躱していた。


　…当然知徳は、ミーティングどころではなかっただろう。


　自ら招いたこととはいえ、そわそわと身を捩り、落ち着かない態度を見せていた。


　それに気がついた者からすれば、知徳が人の話を全く聞いていないということは、一目瞭然のことでもあった。



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