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7 クラスメイト

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 心菜は有栖川から求められた握手に応じた。

「そうね。久しぶり、有栖川」

 昔から寸分の狂いのない笑顔に、心菜は居心地が悪くなった。

「えぇー、こんなちょー美人と知り合いとか、立花も有栖川もずりーぞー。俺、新谷優斗あらたに ゆうと。久遠、よろしくな」

 『美人』という聞き慣れた社交辞令に、心菜はどう反応するか一瞬困ったが、とりあえずいつも通りスルーすることにした。

「よろしく。新谷さん」
「えぇー、呼び捨てにしてくれねーのー?」
「………分かった。新谷」
「よし、それで満足」

 びっくりするくらいに近い距離感に、心菜はたじたじになりながらも作り笑いを崩さなかった。作り笑いほど社交において便利なものはない。心菜は中学2年間でこのことを嫌と言うほどに学んでいた。

「えっと、君は………」

 ここまで自己紹介してもらっていては、最後の1人だけ聞かないというわけにもいかない。心菜は作り笑いのままもう1人の真面目そうなひょろひょろに話しかけた。

門川直人かどかわ なおひと。呼び捨てで構いません。久遠さん」

 呼び捨てで構わないと言いながら、さん付けの門川直人に心菜は苦笑した。

「じゃあ私も呼び捨てでお願いします」
「はい、これからよろしくお願いします。久遠」
「よろしくお願いします、門川」

 何というか、距離感の測り方がよく分からない。びっくりするくらいに近いと思ったら、今度の男の子の距離はびっくりするくらいに遠い。性格がここまで違うメンバーの集まりというのも、不思議なものだ。普通は近しいものが集まるのではないのだろうか。

「ここなはコミュ症だから、あまり困らせちゃダメだからね」
「おぉ、ゴリラがなんか言ってるぞー!!」
「あぁん?立花お前今なんつった?」
「メスバカゴリラ」

 立花の戯けた言葉と共に、優奈と立花の追いかけっこが始まった。というか、馬鹿にする立花を優奈が一方的にしばこうとして思いっきり空振っている。

「あぁーあ、まぁーた始まった」
「有栖川、コレいつもなの?」
「あぁ、いっつもこう。高梨はアレのどこがいいんだか」

 有栖川は肩をすくめて困ったように笑った。確かに、優奈はあんな酷い悪口を言う立花のどこが好きなのだろうか。心菜には分からない。けれど、何故か意地悪なはずの立花が輝いて見えた。

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読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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