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26 心菜のお誘い

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 チョコロールと紅茶の相性の素晴らしさについて語ろうとしたところで、心菜と優奈は学校についてしまった。何という残念なところだろうか。心菜は今からが良いところなのにという気分で学校の校舎をぐっと睨めつけた。スイーツ&チョコレートオタク心菜は、まだまだ語り足りない。

「おっはよー!高梨!!」
「おはよう!立花!!朝から元気だねー!!」
「そりゃ、こっちの台詞セリフだ」

 心菜は鞄の持ち手をぎゅっと握り込んで、深く呼吸した。
 オタクトークに夢中でも、やっぱり彼と話すのは緊張してしまう。どうしてここまで苦しいのだろうか。

「久遠もおはよう!!」
「っ、おはよう、立花」

 心菜は上手に挨拶ができた気がして、ほっと息を吐き出した。普通とはここまで難しいものだっただろうか。心菜には分からない。

「そーいえばさー、久遠のノートって超綺麗なんだろ?」
「え、あー、綺麗かどうかは分かんないけれど、よく褒められるよ」
「じゃあさ、昨日のお礼に、理科と社会のノートを今度見せてよ」
「分かった」

 こくんと頷くと、立花は満足そうに笑った。子供っぽい笑顔なのに何故か妖艶にも見えてしまう、不思議な笑みだ。

「きょ、今日の放課後ってみんな空いてる?」

 心菜が意を決して話しかけると、優奈と立花は笑顔のまま普通に返してくれた。

「私はフリー」
「俺もー」

 ほっと息を吐いて、心菜は昨日の夜お布団の中で考えてた計画を反芻しながら。2人に必死な思いで提案をする。心臓がバクバクととっても五月蝿うるさい。

「きょ、今日の放課後みんなでカフェ行かない?き、昨日ね、抹茶の新作ラテの広告を見たんだ。ゆーなちゃん行きたいかなーって」
「マジ!?行く行く!!」

 優奈は心菜と正反対で重度の抹茶オタクだ。抹茶が苦手で苦手で仕方がない心菜には羨ましくもある。彼女なら部活動中に立てるお抹茶で苦労することもなさそうだ。

「た、立花はノート見たいんでしょ?昨日のお礼も兼ねて1杯奢るよ」
「………ノート見せてもらうだけで十分だぞ?」
「私は満足できない」

 ここだけは心菜も譲れない。ノートを見せるだけで昨日のスイーツとジュース代を全て持つなんて論外だ。せめて2倍の値段でお返ししなければならない。
 変に燃え上がってしまっている心菜を見て、立花は黙って心菜に奢られることにした。

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読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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