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45 心菜は怒鳴られる

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 心菜は必死になって優奈の手をぎゅっと握って、立花たちの後を追った。紐に繋がれるなんて不名誉なことはごめんだ。心菜は無心になって立花たちの後ろ姿を見つめ続けた。

「ふうぅ………、」

 そして、心菜は無事に南公園に辿り着くことができた。奇跡的すぎて、心菜は一瞬泣きかけた。

「良かったね。心菜。こんなのめっちゃくちゃレアケースだよ!!」
「そうだね。………奇跡だ」

 周りからドン引きしている気配がするが、心菜にとっては本当にびっくりするような出来事だったのだ。ここ数年、ずっとずっと迷子迷子迷子迷子迷子!!!心菜は毎度出かけるたびに迷子の連続だったのだ。

「もしかしなくとも、これってすげーことなの?」
「うん、ここなにしたらね。久しぶりだよ。ここまでここなが迷子にならないのって」
「………そーいえば、久遠っていっつも遠足やら旅行やらで途中でぱたりといなくなってたよな………………」
「みんなで必死になって探したよね………」

 優奈と有栖川の疲れ切った声に、心菜はうっ、と言葉を詰まらせた。迷惑をかけてしまっていたのは重々承知だった。けれど、かけられた側の疲れはある意味しっかりと理解できていなかった。心菜は良心が痛んで俯いた。

(そーいえば、今年は修学旅行があったな………。今回は不参加にしよう。そーしたら、平和だよね)

 心菜は乾いた笑いと共に決めた。
 悲しいが、これが1番平和で誰にも迷惑をかけない道だ。

「こーこーなー。もしかしなくとも、修学旅行、行かないつもりじゃないでしょうねー!!」
「………………」
「ちゃんと探してあげるから、旅行、一緒に楽しもう!!ね?」
「………………」
「ここな………」

 心菜は困ったように無言で笑い続ける。

「あぁー、もう!久遠!!うじうじしてねーで迷惑かけろやドアホ!!」
「!!」

 立花の怒声に、心菜は目を見開いた。ここ数年、心菜は怒鳴られるという経験をしていなかった。だから、余計に困惑しておどおどしてしまう。

「あんなー!!迷惑とか傷付けるとか!そんなこと気にして生きてて楽しいか!?楽しかねーよな!?じゃあ自由気ままに生きろや!ドアホ!!」

 またもや怒鳴られた心菜は、ビクッと身体を揺らした。そして瞳に涙を溜めてプルプルと震えた。けれど、立花から目を逸らすことは決してなかった。

「………迷惑、でもいいの?自由で、いいの?」
「いい。だから、俺らで修学旅行を回ろう」
「ぅん、………うん!!」

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読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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