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65 勉強合宿

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▫︎◇▫︎

 ーーーカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ、

 部屋中にシャープペンシルや鉛筆、ボールペンを走らせる音が響くお泊まり施設の集会場にて、心菜もまた自分のシャープペンシルをカリカリと動かしていた。何がどうなったらこんな偶然が起きるのか分からないが、心菜の席は知り合いに囲まれていた。
 隣は立花、目の前と斜め前はクラスメイトで、片方は幼稚園の頃からの幼馴染。後ろの席と斜め後ろの子は同じ塾でちょこっとお話ししたことのある子だ。

(うげっ、これ難しい………)

 心菜がシャープペンシルを動かす手を止めても、周りの子供たちは難なくペンを動かしている。心菜はぐっと悔しくなりながらも、がむしゃらに問題を解いていく。いつもは簡単な解き方をして逃げ道を使ってしまっているが、今回はそうはいかないようだ。
 必死になって高校入試の模試問題を解き終えた心菜は、ほうっとため息をついた。

 ーーーゴーン、ゴーン、

 テスト終了の合図だ。心菜は自嘲気味な苦笑いを浮かべて、集められていく解答用紙を見つめた。

(時間ギリギリだなんて初めて。………これはやばいな………)

 周囲の子供たちの反応はバラバラで、心菜のように自嘲している生徒もいれば、ズーンと沈み込んでいる生徒もいて、ぐすぐす泣いてしまっている子もいる。中には強者な満面の笑みもいるが、そんなのは少数派だ。
 目の前の幼馴染のように、強い精神を持った子など、なかなかいないはずだ。

「ここちゃんどうだった?」
「………終わったかな」
「そっかー、かのんは解けたよー!!」

 イェイ!とピースをする幼馴染が、妙に遠く感じられた。かのんこと、小笠原果音おがさわら かのんは、幼稚園の頃からの幼馴染で、比較的とても仲がいい。勉強は心菜のほうが上だが、運動神経がとても良く、心菜が本気で取り組んでも水泳以外は付いてきてくれる、一緒にいて楽な幼馴染なのだ。問題は、楽観的すぎる性格と、異常なまでのフットワークの軽さくらいだろう。
 ちなみに、彼女は陸上部所属で、走り幅跳びが得意だ。長距離走もとても早いらしいが、残念ながら、うちの学校にはもっと早い化け物クラスがいるらしく、選手になれないらしい。
 上には上がいるとはよく言ったものだ。

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読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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