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66 テストの手応え

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 心菜はふっと思い出しながらも、楽観的な彼女が『できたー!!』という姿を羨ましそうに眺めた。

「いいなー」
「いいでしょー!!」

 自慢げな幼馴染にクスッと笑いと、彼女も釣られてクスッと笑う。心地の良い距離感を掴むのが上手な彼女はいつもたくさんに人に囲まれていて、心菜とは正反対だ。けれど、彼女と心菜はなぜか馬がとても合う。

「かのん!!」
「あ、ふみちゃん!!」
(相変わらずかわいいな………)

 心菜の塾の友人、後ろの席の女の子が果音の存在に気がついて手をぶんぶんと振った。心菜はそんなふみちゃんこと、西濱芙美花にしはま ふみかに穏やかに微笑む。

「かのん解けた?」
「できた!!」
「そっか………、さすが楽観的なかのんだね」
「ふみちゃん、それどういう意味?」
「さあ?かのんの馬鹿な頭をフル回転させて考えるんだね」

 芙美花は結構失礼なことを言いながら、ふむふむと頷いた。果音も流石に馬鹿にされたと気がついたのか、むうっとほっぺを膨らませている。心菜はそんな様子を、口元に手を当てながらころころと笑って眺めた。
 元気でスポーツがガリガリできそうな印象のショートカットな果音に、明るくて周りを巻き込むような中心的人物な雰囲気を放つ芙美花、そしてストレートな長い髪に穏やかで優雅な印象の物静かな心菜。周囲から浮いた印象を持つ3人が群がっておしゃべりをする様子は、周囲からとても浮いていたが、本人たちは一切気が付かなかった。

「そうそう、ここちゃんはできた?」
「ううん、満足にはできなかったかな。ふみちゃんは?」
「時間足りなかったー!!」
「そっか………」

 ほのぼのとした会話に、周囲は『おい!ダメだったのになんでそんなに楽しそうなんだよ!!』と、ツッコミを入れたくなったが、残念ながらツッコミ担当は不在だった。

 ーーーゴーン、ゴーン、

「あちゃー、また話そうね。ここちゃん、かのん!!」
「うん」
「おっけー!!」

 この後、1時間で10分休憩というコマで回る授業が幾つも周り、やっとのことで解放されたのは、夕方の7時になってからのことだった。

「つ、つがれだー!!」

 叫び声を上げてガコン!!と机に突っ伏した果音に、心菜は思いっきり苦笑した。なぜなら、果音の顔には満面の笑みが浮かんでいて、とっても嬉しそうだったからだ。


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