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67 お腹が空いた

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「そういう割には、元気そうだね、かのん」
「ここちゃんは疲れてないのー?」

 ブイッとピースサインを作りながら、果音は元気いっぱいに心菜に尋ねる。心菜はもうツッコミを諦めて、質問に答えることにした。この幼馴染は、時々突拍子もなくなるから、真面目に相手をするだけ疲れるのだ。

「まあまあかな。ただ、後半は集中力がお空の遠くだったから」
「それダメでしょ」
「うふふふふふっ、」

 真面目な顔にスッと戻った果音に、心菜は美しい笑みを浮かべて笑った。その笑みにゾッとした果音は、すっと視線を逸らした。

(かのんが意地悪いうからよ)

 自分でやったことに自分で言い訳しながら、心菜はもう少しで始まるお夕食へと思いを馳せた。聞いたところによると、カレーだそうだ。

(最近、出先でカレーばかり食べている気がする………)

 カレー好きではない心菜は、そうッとため息をついて、屍と化してしまっている芙美花のことを人差し指でツンツンと突っついた。

「ふみちゃん、もうちょっとでご飯だよ」
「おにゃか、………すいた………………」

 屍原因はどうやら空腹だったらしい。相変わらずちょっとだけずれている芙美花に、心菜はくすくすと機嫌良さそうに笑うのだった。

 ーーーぐうぅー、

 隣から大きなお腹の音が聞こえて、心菜はきょとんと隣を見た。隣に座っている立花は、見た目疲れてもないどころか、楽しい大好きな勉強を続けたことによりツヤツヤとしているが、どうやら相当に空腹だったようだ。心菜は、彼にも小さく笑って話しかけた。

「お腹すいたね、今日はお夕飯はカレーだって」
「へー、またか………」
「まただねー」

 心菜はうんうんと頷いたが、彼はそうじゃないと言わんばかりに首を振る。

「俺の家、昨日の夜カレーだったんだよ。んでもって、朝はその残り。昼の弁当は見た通り、カレーうどんだったんだよ」
「うわー、確かにそれは嫌かも」

 2食続けて同じご飯を食べられない心菜は、ご愁傷様と呟き、肩をすくめた。立花はそれを見て大きくため息を吐く。

「にしても、早くメシになんねーかなー。さすがに12時から何も食わずに勉強し続けたら、腹が減って仕方がねー」
「そうだね。私もお腹が空いた」
「………おっ、あれじゃね!?」

 話していると、ガラガラと大きなお鍋と数台の炊飯器が運ばれてきた。

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読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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