小さな別れは、淡く儚い恋を呼ぶ

桐生桜月姫

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68 お夕食

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 生徒たちは皆顔を輝かせてお鍋を見つめ始めた。なんだかカオスな状況だなとお鍋の方を見つめていたら、端の生徒たちから順番に、塾の先生に連れられてお盆をとお皿を取ってカレーを貰い始めた。

「うくー、ず、ずるい!!」
「順番をちゃんと待ったら来るんだから、ハンカチ噛まないの」

 芙美花の奇行を苦笑しながら諫めた心菜は、人差し指を口元に持っていきながら、ニヤリと笑う。

「それに、どうせ全員にお夕食が届くまで食べられないんだったら、最後の方にもらってほくほくのまま食べたいでしょう?」
「あ、その考え方いいかも!!」
「でしょう?」

 きらんと目を輝かせた芙美花を見て安心したかのような表情を浮かべた心菜は、隣でそれでも物欲しそうにカレーをもらっている生徒たちを見つめている。

「カレーはもう食べたくないんじゃなかったの?」
「………食べたくないとは一言も言っていない」
「あ、そ、そう」

 意気込んだ言葉に、心菜は苦笑してやってきた自分の番を見て生徒たちの列に加わった。カレーから甘い香りがして用意されている味が辛口でないことに安心しながら、心菜はそうっと自分の席に持って帰る。カレーの量は大・中・小と選べたが、付け合わせのサラダの量は選べなかった。1~10まで苦手なものしか入っていないサラダを見つめて、心菜は引き攣った笑みを浮かべる。

「それ、食べてやろうか?」
「? サラダ?」
「そうそう、それ、苦手な分類だろ?レタスと玉ねぎときゅうりの組み合わせの時、いっつも給食減らしてんじゃん」

 心菜は自分を気遣ってくれた立花に、きらきらした尊敬の念を抱いた。そして、彼の好意に甘えることとした。

「じゃあ、お願いします」
「おう、」

 みんなで『いただきます』をしてワイワイ食べるご飯は美味しくて、最初は食べられないかなと思っていたいつもよりも圧倒的に量の多いお夕食を、心菜はばっちり食べ切ることができた。
 だがそれでも、胃に入る量というのは決まっているもので、心菜は食べきってすぐにお腹が痛くなった。

(うぅー、)
「あーあ、久遠食い過ぎた」
「よ、………よけいな、おせわよ」
「うひゃー、怖い」

 棒読みでの心配にイライラしながらも、心菜はうぐーっとうずくまっていた。そして、やっぱり周りの雰囲気に流されず、食事というのは自分で食べられる量というのを見極めながら食べることが大事だと学んだ。

*******************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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