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92 先生からのご褒美

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▫︎◇▫︎

「せーの!」
『お疲れ様でしたー!!』

 運動会終了後、3年生と保護者の希望者によって運動会で使用したテントや機材の片付けを終えた、3年2組のメンバーは、教室にて、立花の声に合わせて思いっきり手を上に上げて全員でぐちゃぐちゃのハイタッチをしようとして失敗していた。なんともまあ締まりの悪いことだ。

「みなさんお疲れ様でした。くったくたのみなさんに、先生からご褒美がありまーす!!」
『うわあああぁぁぁい!!』
『よっしゃー!!』

 低身長でちょっとだけころっとした印象の担任たる女性教師は、そうにこやかに言うと、どこからともなくキャンプで使うような本格的なクーラーボックスを取り出した。パカっと上蓋を開けると、中にはドライアイスが入っているのか白い気体がもくもくと出てくる。みんなの喜びの声をにこやかに受けた先生は、ちょいちょいと手招きをする。

「じゃあまず、今日1番の功労者!応援団長の2人来てー」
「「はーい!!」」

 優奈と立花が前に出ると、2人はキラキラと顔を輝かせる。その様子を見て、まだ前に行っていない生徒がご褒美に期待を膨らませ、ごくりと唾を飲み込んだ。

「アイス!!」
『おおぉぉ!!』

 優奈の叫び声を聞いた瞬間、教室からは喜びの雄叫びが上がり、先生はここまでがっついてくるとは思っていなかったのか、少しだけ引いていた。暑さにやられて疲れ切っている、背長期真っ盛りの腹ペコ生徒が、冷たい氷菓子にがっつかないわけがない。もちろん、周囲の生徒よりも暑さに弱くバテまくっている心菜も例外ではない。下手をすれば、周囲の生徒よりも瞳の色が輝いていた。
 優奈と立花がそれぞれ1つずつアイスを選んで帰ると、次の人の名前を先生は呼ぶ。

「次に装飾長の2人!!」
「「はい!!」」

 女の子2人がほくほくとした顔でアイスを持って帰るのを横目に、心菜は自分の番を今か今かと待っていた。

「そしたら次は頑張って走ってくれたグループ対抗リレーの選手の4人!!」
「「「「はい!!」」」」

 次の瞬間、心菜に待ち侘びた瞬間がやってきて、心菜は大きな返事をする。歓喜で舞い上がりそうな心菜は、ヘトヘトの身体を叱咤して、チョコレートオタク兼スイーツオタクの心菜は、まだ見ぬアイスに思いを馳せて先生のいる方へと足を進める。


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読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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