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95 心菜は確かめる

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 頭を撫でられたからか否か、心菜は自分の頬がかーっと熱くなるのを感じながら、ぽてぽてと先を歩く立花の後をついて歩く。疲れた足を叱咤してちょっとだけ早歩きをして彼の隣に並び立つと、心菜は立花を罵倒する。これくらい行っても、絶対にバチは当たらないと判断してのことだ。それに、言葉には少しだけおちゃらけた嘘の響きを混ぜ込んである。

「………意地悪。碌でなし。馬鹿」
「ーーーもろもろの手酷いひょーかをどーも」

 懲りた様子のない立花に、心菜はむっと赤みのさした頬を更にリスのようにぷくぅーっと膨らませて目線を鋭くする。そして、自分の仮定と考察が正しいかどうかを証明するために、1つの質問を投げかける。

「………ゆーなちゃんがあなたのこと、好きだって知ってるくせに」
「………………」
「どうして私に構うわけ?人でなし」

 お互い以外には聞こえないような小さな声での罵倒を受けてなお、微笑みを崩さずにいる立花は、ふっと心菜の方を振り返った。

「知っているから構うんだよ。俺は高梨とは付き合えないから」
「っ、」

 心菜は自分の仮定と考察の正しさを証明して、殊更悲しくなった。どうして質問をしてしまったのだろうかと言う後悔に苛まれるが、それでも、今日というクラス中、否、学校中の生徒や教師が浮ついた日に聞くべきだと、心菜はそう判断したのだ。そうすれば、一瞬の感情の迷いだったと切り捨てることが可能だと思ったから。けれど、そうではなかった。心菜は自分の判断が間違っていたんだとくちびるを噛み締める。

「………やっぱり君は、碌でなしで、人でなしで、愚か者だ」
「それを断言する君も十分きつい性格をしてるよね。みんな君のことを、品性方向の高嶺の花だって言ってるのに」
「それはみんなの勝手な評価。というか、私、その評価知らなかったんだけど?」

 心菜はこてんと首を傾げて、そんな似合わなすぎる評価をもらっていたのかと嘆息する。なんともまあお姫様チックなあだ名だことだ。『お嬢さま』でもだいぶ無理があると思っていたのにも関わらず、『高嶺の花』などと言われれば場違い感に苦しくなってしまう。
 心菜は早々にこのあだ名を消失させるべくして動くことを決意し、そして驚いたような表情をしている立花に向き合った。

「あ、マジで?」
「えぇ、マジよ」


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