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122 心菜と優奈の放課後

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▫︎◇▫︎

「あああぁぁぁぁああああ!!おわったああああぁぁぁぁ!!」
「ゆ、ゆーなちゃん。う、うるさい………!!」

 放課後の文化祭準備、隣の優奈の悲鳴でびっくりして飛び上がった心菜は、未だにどくどくとイヤな音を鳴らしている心臓を押さえて、ぎっと優奈を睨みつけた。

「あ、ごめん。怖がりここな」
「ひ、ひどい………!!」

 半泣きで文句を言った心菜は、今日も今日とて下校が遅くなって真っ暗になっている学校の中で怯えているが故に、音に敏感になってしまっていた。そして、優奈はそれに気がついて、意地悪く笑ったのだ。

「はいはい、一緒に帰ってあげるから!!」
「そ、そんなもので釣られるわけないでしょう!?」
「はははっ!!」

 教室に残っているのはたったの5人。昨日はいつのまにか心菜だけが残っていたから、昨日よりも少しだけ多い人数残っていることになる。

「にしても、昨日よく1人で下校時間ギリッギリまで残ろうと思ったね。怪談好きの私でもちょっとこの学校の雰囲気はイヤだなって思う、この学校で」

 辺りを見回してあははっと笑った優奈に、心菜は居心地悪くそっぽを向く。

「………しゅ、集中しすぎて、時間忘れてたの」
「あぁー、」
(ざ、残念な子を見る目が痛い………!!)

 心菜はしょんとしょげながら、ぶーぶーと優奈を見つめる。

「………ここなはさー、立花のこと好きなの?」
「好きだよ、友人として」
「………………そっかー、」
「なあに?」
「ううん、なんでも」

 優奈の質問に即決した心菜は、優奈の真意が知りたくて、じっと彼女のことを見つめる。

「ーーーここ最近さ、ゆーなちゃん、いたく私を立花に近づけようとしてるよね」
「そ、そうかな~?」
「そうだよ」

 じっと見つめても、暗くなった教室では優奈の表情がよく見えない。心菜はそれがもどかしくて、ずいっと優奈に視線を近づけた。

「ねえ、どうして?」
「………………、」

 優奈は答えてくれない。不可思議なところで頑固な幼馴染は、本当に心菜が教えて欲しいことほど、絶対に教えてくれない。それどころか、自分で考えて見ろと言わんばかりに、ポイっと試練として与えてくる始末だ。
 心菜はゆっくりとくちびるを湿らせて、優奈に暗くなった教室で、真っ直ぐな視線を投げかける。

「ーーー教えて、ゆーなちゃん」

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読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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