《完》わたしの刺繍が必要?無能は要らないって追い出したのは貴方達でしょう?

桐生桜月姫

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25 素敵な便箋

「いってらっしゃい」

 もう消えてしまったユエに対して、アイーシャは静かに声をかけた。届かないことが分かっていても、アイーシャはいつも呟くことにしている。何故なら、アイーシャは両親を失ってから送り出す人がいないからだ。精霊達にでも言っていないと忘れてしまいそうだったからだ。「いってらっしゃい」という当たり前の挨拶の言葉ですら言えなくなってしまいそうで怖かったからだ。

 コンコンコンというノックの音が鳴った。

「ベラです」

 ノックの音は等間隔で力加減も絶妙だった。几帳面な性格が目に見えて、アイーシャは微笑んだ。ベラらしいノックだとも思った。

「どうぞ」
「失礼します。便箋、いただいて参りました。何種類かいただいてきましたので、お選びください」
「ありがとう」

 アイーシャは5種類の便箋を前にしてう~んという唸り声を上げた。アイーシャは手紙など今までの人生で1度も書いたことがなかった。だからこそ、少しワクワクもしていた。
 アイーシャがベラから受け取った色とりどりの便箋は金箔が貼ってあったり、透かしが入っていたり、和紙という異国の紙であったりとどれもこれもとても凝っていた。

「ベラ、あなたはどれがいいと思う?」
「お嬢様が選ぶことに意味があると思います。どれを選んでも問題ありませんよ」
「………………」

 アイーシャは悩みに悩んだ末に、透かしが入った花形の金箔がふんだんに貼られた便箋を選択した。

「こ、これにするわ」

 上目遣いにアイーシャはベラを見やった。その視線は、合ってる?と問いかけているようでもあった。

*******************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

感想 24

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