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51 突然の来訪者
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作業を再開して2時間後、急にお店の中が騒がしくなった。お昼からはクラリッサのみがずっと対応をしている常連さんがやって来たために、クラリッサは対応に行ってしまっていて、周囲の状況がいまいち掴めないマリンソフィアは、それでも我関せずとお洋服を仕立て続けた。
ーーーコンコンコン、
焦ったようなノック音だが、リズムからクラリッサであると当たりをつけたマリンソフィアは、誰であるかも聞かずに入室の許可を出した。
「失礼しますっ、………王太子、殿下がいらっしゃいました」
「そう、じゃあこのお洋服じゃ失礼に当たるわね。着替えなくっちゃ。クラリッサ、ゆっくりわたくしのお洋服の準備をしてちょうだい」
マリンソフィアは満面の笑みで微笑んで、緩慢な仕草で立ち上がった。そして、自室へと足を向ける。
「先触れもなしにきたのだもの、先方が用意できるまで待つのが当然のマナーよね?」
「………そうですね」
「とーっても苦くてまずいお茶と、砂糖がたーっぷりのおやつを殿下のもとに届けるように言っておいて」
自室へと戻ったマリンソフィアは、決して自分でお洋服を用意しなかった。クラリッサが王太子の元へと色々と届けるものの手筈を整えている間にも、簡単に言えば、王太子と会う準備など全く進めていないのであったのだ。
「ふふふっ、『待て』がとーっても苦手な殿下は、いつまで待っていられるのかしら?とっても見ものね。わたくし、怒り狂って出ていく殿下を見るのが楽しみになって来ちゃた」
足をぷらぷらとしたマリンソフィアに、急いで帰って来たであろう汗をかいているクラリッサがイラッとした顔で笑う。
「………そんなことを言っている暇があったら、お洋服の準備くらいご自分でなさったらいかがですか?」
「嫌よ。だって、面倒くさいもの。わたくし、こういうお洋服はメイドが準備するものだってちゃんと理解しているもの」
駄々っ子のような主人に、クラリッサは心底呆れた顔をして、そして真っ赤な薔薇のような豪奢なドレスを手渡した。
「本日はこれを着ていただこうかと思うのですが、構いませんか?」
「ふふふっ、熱烈な色ね。でも、気に入ったわ。早くわたくしに着付けなさい」
マリンソフィアはクラリッサが着せやすいように、自分の身体を動かすのだった。
*******************
読んでいただきありがとうございます😊😊😊
作業を再開して2時間後、急にお店の中が騒がしくなった。お昼からはクラリッサのみがずっと対応をしている常連さんがやって来たために、クラリッサは対応に行ってしまっていて、周囲の状況がいまいち掴めないマリンソフィアは、それでも我関せずとお洋服を仕立て続けた。
ーーーコンコンコン、
焦ったようなノック音だが、リズムからクラリッサであると当たりをつけたマリンソフィアは、誰であるかも聞かずに入室の許可を出した。
「失礼しますっ、………王太子、殿下がいらっしゃいました」
「そう、じゃあこのお洋服じゃ失礼に当たるわね。着替えなくっちゃ。クラリッサ、ゆっくりわたくしのお洋服の準備をしてちょうだい」
マリンソフィアは満面の笑みで微笑んで、緩慢な仕草で立ち上がった。そして、自室へと足を向ける。
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「………そうですね」
「とーっても苦くてまずいお茶と、砂糖がたーっぷりのおやつを殿下のもとに届けるように言っておいて」
自室へと戻ったマリンソフィアは、決して自分でお洋服を用意しなかった。クラリッサが王太子の元へと色々と届けるものの手筈を整えている間にも、簡単に言えば、王太子と会う準備など全く進めていないのであったのだ。
「ふふふっ、『待て』がとーっても苦手な殿下は、いつまで待っていられるのかしら?とっても見ものね。わたくし、怒り狂って出ていく殿下を見るのが楽しみになって来ちゃた」
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「ふふふっ、熱烈な色ね。でも、気に入ったわ。早くわたくしに着付けなさい」
マリンソフィアはクラリッサが着せやすいように、自分の身体を動かすのだった。
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