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No.29 灰色の軍団との戦いが始まりました!

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技術力の国のマドボラ、彼の策略によって連れ去られてしまうアギ―。

彼は最も警戒すべきはアギ―だという、そしてまだ彼の企みは終わらない。


「さぁ行ってこい!俺の自慢の軍隊たちよ!!蹂躙しろ!!」
彼が光の板を空中に発生させそれを操作する。

「一体こんどは何を……?」
アギ―は光の檻の中で浮遊しながら、そんな彼をみていた。

「ひっひっひ、裏切り者の粛清さ」
不気味な笑みを浮かべるマドボラ。


経済力の国。国を囲う壁の前にグラドは立っていた。

「さぁ、来たな」

「グラド様、あれは一体!?」

彼らの目線の先には、白銀の雪景色を塗り替えるように灰色の集団が、こちらに向かって押し寄せてきていた。

「詳細は分からん、しかし我々が討つべき相手。皆の者!準備はいいか!私が先陣を切る。敵を何人たりとも壁の中に入れさせるな!」

剣を抜き、他の者にそう伝えるグラド。

「まずは挨拶でもしておこう。連中に大砲をお見舞いしてやれ」
グラドが合図をすると壁の上に並べられた大砲が発射準備に入る。

迅速に行われ、全砲門が迫りくる軍勢に照準を合わせる。

「てェーッ!!」
指揮官が号令、すると全ての大砲が一斉に轟音と共に砲弾を放った。

「よし、そのまま続けるのだ!」
グラドは単身、敵軍勢に向かって突撃。

「ハァァァァッ!!ブロック・ドゥ・グラスッ!」
巨大な氷塊を生み出し、投げつける。

敵陣の真ん中に降り立ったグラド。

よく見える灰色の軍団の正体。

機械だ、技術力の国にいたものと同じ外見をしている、少し違う所を上げるとしたら
恐らくこの者達の中にも人間が入っているのだろう。

「機械の兵士ッ!アイツが考えそうなことだが、なんと悪趣味」



一方その頃武力の国。

「ウオオラァッ!!」
ティターノの豪快な一撃、機械兵は焼き払われていく。

「マドボラめッ!!このような兵士を我が国にけしかけるとは!どこまでも不快な奴だ!!人を部品のように扱いおって!!」

「ティターノ様!どうやらこの機械の軍団は我々の国以外にも現れているようで」
彼の部下が敵を切り倒しながら現れる。

「やはりそうか。わが国には優秀な兵がおる故に問題ないが、他の国は果たしてどうだろうか。早々にこやつらを蹴散らし、他の国に援軍に行くぞ!」

背後から迫って来た機械兵を掴んで止めるティターノ。

「残念ながらこやつらはもう手遅れのようだ、そうとなれば俺の側から離れていろ!巻き込まれんようにな!ふん!」

爆炎で機械兵を焼き飛ばす。


彼らの戦闘を映像越しに見ていたアギ―は驚いていた。
「あれほどの数……!?」

これだけの兵士を作るのに一体何人、犠牲になったのか。

「まだまだ改良の余地はあるが、素晴らしいだろ?外殻は強固な鎧に覆われ、剣だって達人のような腕前は要らないんだ。あの剣は特殊でな、細かい刃がいくつも鉄の紐で繋がっていて高速で刀身を回っているのさ。だから叩きつけたり押し当てるだけで切れるんだ」

自信作の自慢をするマドボラ、彼は頭をポリポリとかいている。

「しかし妙だな。連中はコアを取り除かれた筈。なのになぜあれほどの魔力があるんだ?それにティターノの所の兵士ごときに何で斬られてるんだ?もしや……」

マドボラは斬られた機械兵を注意深く観察する。

すると斬られた断面が熱を帯びている事に気付く。

「やっぱりそうだ!剣に熱を帯びさせているのか!!という事はティターノもグラドも、コアを抜かれた後に魔力を与えられているな?あの魔王達から。でもどうして、お前らは敵対関係の勢力の筈。どうしてそんな事をするんだ?」

アギ―の方をみてそう言うマドボラ。

「そ、それは皆さん大事な仲間だからです!信頼してるからです!」

「仲間?信頼?なんだそれ、たった少しの間、一日もあるか無いかの間に出会ってもう大親友ってか?随分と基準が低いんだな、お前も連中も、もっと信頼する相手は選ぶべきだ、私が信頼しているのは魔王様ただ一人だ」

マドボラは自身の作業に意識を戻す。

「さて、アイツらの戦闘力は多少は想定より高かったが。グラドは魔人、ティターノは巨人、元から戦闘力は高く見積もっていたから問題ない」



「っ!なんだ貴様は!!」
弾き飛ばされるティターノ。

彼の眼の前には大男が立っていた。ティターノのような大きな体格、その体の至る所から様々な動物の手足が飛び出ている。

「なんだ、この生き物というには余りにも歪な……」
その者はグラドの元にも現れていた。

「それにその魔力もどういうことだ?なぜ……」

歪な者は手をかざす、そこから大量の氷のつぶてを放つ。

「はやりか!」
グラドは氷の壁を作ってそれを防ぐ。

「私に氷を使うとは」
そう言った矢先、相手の放つ氷が炎へと変わる。

「なに?!」
飛び退くグラド。

「ティターノ、いや、元はフラマーラ殿の魔力か。それが感じられたわけか。幾つもの魔力を組み合わせ、肉体は巨人族ティターノの要素を、魔力のコントロールは私でも参考にしたのか?そして複数の魔力を安定させる為にイビルハンガーで得たデータでも使ったか?」

二人はその歪な者と対峙する。

その様子をみて興奮気味のマドボラ。

「ティターノを参考に生み出された強靭な肉体!複数の魔力をコントロールするためにグラドの魔人としての力!そして適応能力が高いイビルハンガーの肉体!良いぞ!良いぞ!俺が今だせる限りの最高傑作!裏切り者に死をッ!!」


「爆炎刃ッ!!」
ティターノは剣で焼き払うも相手はすぐにからだを再生させてくる。

「ちぃ!めんどうな奴だ!我が兵士たちよ!この怪物は俺に任せろ!それ以外の鉄くずを頼んだぞ!」

炎の剣と拳で絶えず攻撃を食らわせるティターノ。しかし相手の回復力には追い付かず。不毛な消耗戦が続いていく。

(まずいな、フラマーラ様から授かった魔力も有限、このまま消耗戦になったらこちらが不利になる)

周囲の兵士たちに視線を向ける。
「兵士たちよ!可能な限り俺から離れるのだ!!」

「了解!全員聞いたな!ここから離れる事を最優先にしろ!!」
兵士たちは敵を押しのけて退避し始める。

「よし、これだけあれば良いか。この力は加減が少しばかり難しくてな」
ティターノの身体を炎が包む。

その炎は瞬く間に天を焦がすほどに立ち昇り、周囲を明るく照らす。

「ーーーーー!!!」

歪な者が炎に向かって攻撃をしかけようとする。

次の瞬間、歪な者は突然空から飛来した隕石に押しつぶされた。
衝撃で周囲の機械兵たちの多くも吹き飛んでいく。

「ふん、やはり加減が難しいな、到底国の中では使えん代物だな」

隕石かと思ったその一撃はティターノの拳であった。

巨人族の名にふさわしい、規格外の巨体になっていたのだ。


「ふぅ、氷像にしてもこの歪さは直せないな。彼はなんというだろうか」
グラドも歪な者を凍結させていた。

 
「何ぃ!?あんな力を隠してやがったのか!」
マドボラは驚きのあまり、映像を映す光の板に掴みかかる。

「ひっひっひ!すげぇ!あの力、研究してぇッ!ティターノは巨人の力!グラドは魔人の力、あれで昔戦っていたのか!」

「じ、自分の自信作を倒されたのに随分と嬉しそうですね……」

マドボラが振り向く。

「当たり前だろ?これでまた改良の良いアイデアが得られた!興味深い研究対象が生まれたおかげだ」

「それにアイツラはまだまだいるからな」
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