脳筋転生者はその勇まし過ぎる拳で世界にケンカを売ります。

きゅりおす

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第115話 開戦

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「先行した部隊は全滅か……流石だな」
 グロリアは報告を受けて頷いた。

「この魔力量、相手は地平線の向こうだと言うのに、圧倒的な存在感!魔神王か、凄まじいな!
 彼女の後ろでミディカが興奮気味に話した。

「先行した者たちは、いずれもが限界までエリクサーを使用した者達。それが一瞬で壊滅……やはりスケールが違うか!」

「ミディカ、興奮してるとこ悪いが聖騎士たちの準備は?」
 興奮しているミディカを止めるグロリア。

「ごほん!失礼……出来ている」
 咳払いをするミディカ。

「さあ聖騎士諸君!並びに上級女神に選ばれし者達よ!怨敵をその力で討ち滅ぼし、この世界に平穏をもたらすのだ!」
 ミディカが呼びかけると勇者達は武器を掲げた。

「ウオオオオッ!」
 

 その中で唯一、黙っている者がいた。

「……」
 円盾を背負うイサムだ。

「どうした?緊張してるのか?あー、お前なんて名前だっけ」
「どうも、イサムって言います」
 小さく頭を下げるイサム。

「しけたツラすんなよ。このハイエリクサーがあれば俺達は無敵だ!あんな魔神軍なんて大した敵じゃねぇんだ。だって言うのに、お前みたいな根暗くんがいると気が萎えるぜ」

 勇者が一人イサムに絡んで来た。

「そういうのは実力に見合った者が言うべきよ」
「なに?」
 イサムに絡む勇者を引き剝がすリペリオ。

「リベリオ様!」

「ダーリンに気安く話しかけないで」
「あらリベリオ、私の勇者になにか用?」
 リベリオの後ろから別の女神が呼びかける。

「いいえ、用だなんて大層な。同族殺し様。聖騎士様のお膳立てをしなくていいの?行きましょダーリン」
 リベリオはイサムの手を掴んで引っ張っていく。
 

「行くよ」
「え?あいつらを追うのか?」
「グロリア様からの命だ」
 先ほどの女神と勇者がリベリオたちを追いかけた。

「リベリオ様、先程の女神は」
「アイツは元下級女神、同族殺しで魔石かき集めて出世したやつよ。彼女みたいな存在がいれば他の下級女神も魔石集めに力を入れるだろうって、実験的に上級女神になったの」

「同族殺しって……」
 イサムは唾をのむ。

「そういうやつも少なくない。はやくこれを取り除かないと、準備するから手伝ってねダーリン」
「はい!」
 リベリオは何かを始めるようだ。


「アイツ何をしているんだ?配置にも使ないとは」
 物陰から覗いていた女神。

「やはり裏切るつもりか貴様!」
「どうだろうね」
 物陰から現れリベリオに詰め寄る。

「さっさと配置につけ!」
 そういう女神に向かってリベリオは剣を抜いた。

「うるさいわね」
「そんなこけ脅し、なんの意味も無い」
 そう言うものの女神は身構えた。

「さあ、どうでしょ」

「な……に!?」
 次の瞬間リベリオの剣は勇者の胸を貫く。

「ば、バカな!貴様は同族に手は出せないハズ!」
「うーん、ちょっーと情報が古いわね」
 リベリオは剣を引き抜いた。

「何をしているの!倒れてないでさっさと起き上がって!」
 女神は倒れた勇者に呼びかけた。

 勇者は倒れたままだ。

「回復しない!?」
「もうごまかす必要もないね」
 リベリオが剣を振ると黒い刀身が現れる。

「黒い刃!」
「テルーおばあさんに感謝しないとね」
 女神に向かってウィンクするリベリオ。

「丁度良かった、今斬った彼、壊死させる猛毒を散布する能力だったけ?場を荒らしてきそうな子を処理できて良かった」

「っ!クソ!解呪したな!」
 女神は懐に手を伸ばす。

「なら早々に見せてや……る……?!」

「ここであなたの変身を見届けるのがお約束なんだろうけど。お生憎さま、そんなに暇じゃないの」
 相手の意識の隙を突いたリベリオ。
 標的の頭部を一突きにした。

「薬に意識を向けた時点であなたの負け」
「そんな……」
 女神は手元から瓶を落とし倒れた。 

「これで私も同族殺しね」
「でもリベリオ様は誰かのために行動しました。自分の出世の為じゃない」
 消えていく女神をみてそう話すリベリオ。

「そうね、でも殺しは殺し」
「……それでもぼくはあなたを尊敬しています」
 イサムはリベリオの眼をまっすぐとみつめてそう伝えた。

「はあー、何その素敵なセリフ。状況が状況でなければ今すぐにでも最大限の愛情表現をしたい」
 リベリオはイサムにキスをした。

「今はこれで許してね」
「ッ~!は、はいぃ」
 顔を真っ赤にするイサムであった。


「魔神軍!結構な数だな」
「臆するな!かかれ!」
 魔神軍の軍勢に向かって進んでいく勇者たち。

「さあ来たぞお前ら!勇者様をもてなしてやれ!」
 魔神軍の兵たちも装備を携え、勇者たちの進行を食い止める為に構えた。


「おい見ろ!もう始まってるぞ!」
「ああ、出遅れたな」
 両軍の兵がぶつかる様子を見ながらタケミとネラが話す。

 他の者たちも彼らに続いて走っていた。

「魔神軍って結構いるんだな。あんなに集まってるの初めてみた」
「皆さんの行く先々では、彼らを下がらせてましたから」
 アスタムの説明をきいて頷くタケミ。

「へぇーおれたち避けられてたってよ」
「そりゃあお前、山に引きこもってた奴がいきなり現れて、大領主の隊長1人素手で倒したって話が出たら避けるだろ」
 ネラがタケミにそう返した。

「ちなみにですが、女神狩りの死神と尋常じゃない魔力を持つ魔法使いの話も既にこちらでは把握していましたよ」
 アスタムが話を補足した。

「え!?私も?魔力抑えてたのに!」
 ユイが驚いた顔を見せる。

「バアル様達にはお見通しだったようですね」
「あー、人らならしょうがないか」

「さあ、そろそろ到着だぞお前ら!」
 先頭を走るネラが皆に呼びかける。

「よっしゃあ!派手な喧嘩だ!」

 最終決戦の火蓋は切って落とされた。

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