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第137話 タケミとユイ
しおりを挟むタケミとユイは魔神王デウス・ソリスと戦闘を始めた。
魔神王の実力を目の当たりにするも果敢に挑む二人。
しかし、突然現れた邪神によってその戦いは大きく変えられてしまう。
邪神からあふれ出した泥に反応し変貌したタケミとユイと対峙する事となったデウス・ソリス。二人の破壊的な攻撃によって身体を大きく損傷させるデウス・ソリス。
そんな彼の側に誰かが転移し現れた。
「随分と賑やかかと思えば」
「バアルか!」
身体を再生させた彼が現れたバアルに顔を向ける。
「やあ、来てしまったよ。うむ……泥、あれは女神や死神にしか作用しない筈だ、どうなっている?」
バアルは軽く挨拶をし、タケミとユイに纏わりついている泥を指差す。
「恐らくネラとの戦闘でヤツ魔力を浴びすぎたのだろう。魂の性質がネラに近づいたのだろう。元々彼らの中にはネラの魂が一部とはいえ含まれているからな」
デウス・ソリスはバアルの質問に答えた。
「死神一人でも厄介だと言うのに、二人とはな」
バアルが頭を横に振る。
「本気を出さざるを得ないな。バアル、結界は解除するな」
「わかっている、最悪の事態を想定したつくりではあるが、どこまでもつかな」
デウス・ソリスの横に立つバアル。
「我々も参ります」
「まったく、手がかかる弟子だ」
バアルに続いてフォルサイトとマリスも現れた。
「まて、手出し無用だ。これは神と呼ばれる者の務めだ。神は人々の負の感情を受け入れるものだ、行き場のないものであれば尚更な。それが俺がここにいる理由だ」
バアル達の前に手を出してそう言った。
「ふぅん、そうなのか」
前に出された手をくぐって前にでるバアル。
「おい」
「なんだ?我らは友だろ?ならば隣に立つことは何もおかしくない」
そう言ってバアルは腕を組む。
「バアル様のご友人は私達にとっても大事なお方、一人で重荷を背負わせる訳にはいきません」
「そうそう、私はユイの先生だからな。という訳でデウス様失礼しまーす」
フォルサイトとマリスもデウス・ソリスの腕をくぐって前に出る。
「お前らなぁ、ん?また増えるのか……」
デウス・ソリスがため息をつく。
「私達もいますわ!」
「タケミ様もユイ様も我ら一族に欠けてはならないお方。ご助力させて頂きます」
空からマートル姫とベロニカが降って来た。
「弟子が暴れまわってる時に、師匠が知らんぷりはできんだろう」
少し遅れてプロエもその場に現れた。
「プロエまでか!」
「あやつらは勝手に参加しているだけだ。気にすることはない」
デウス・ソリスにニヤリと笑いながらそう伝えるバアル。
「はぁ、カッコつけさせてはくれんか。わかった。連中の一撃は可能な限り回避しろ。防ごうとするとやられるぞ」
大きくため息をつきデウス・ソリスが皆にアドバイスをする。
「オレ……ヲ……ウヂドッテミロォォォォッッ!」
タケミが雄叫びを上げる。
声だけでも吹き飛ばされてしまいそうになる程の衝撃。
「ィンドラ」
ユイが空に手を向けると天候は急変、分厚い黒雲が現れ、昼間にもかかわらず真夜中のように周囲が暗くなる。
「急にヤバそうなのが来たな」
プロエがそう言って黒くなった空を見上げる。
黒雲の中を紫の稲光が走った。
「なんという魔力、量だけではない、質も、今まで見たことがない」
バアルが目を見開く。
「魔力だけで言えば私やバアル様をも超えてる。それもそうか、元から底なし、そのうえで引き上げられてんだからな」
マリスはニヤリと笑うが驚きを隠せない様子だ。
「それで、あれをどう避けろと」
「当たらぬことを願うしかないな」
バアルがプロエにそう答えた。
「来たぞ!奴の魔術は魔術では防げないからな!魔力に分解され術の養分にされてしまうぞ!」
周囲に落雷が発生し始める。
「忍術みたいな事ができるのか。まぁユイは忍者を側でみてるからな、それぐらい出来てもおかしくない」
マリスが前に出る。
「だったらこれだ。マーテル・オムニウム!これは海そのもの!海水は電気を通しやすい、雷だって散らせる!」
大量の海水が発生し、彼女らの前方に壁を形成した。
「……ッ!マリスさん避けて!」
何かを予見したフォルサイトがマリスに向かって叫ぶ。
次の瞬間、紫の雷は海水の防壁を突き破り、マリスに襲い掛かった。
マリスは何が起きたのかすぐに理解した。
雷の表面に炎が走っていた、その炎が海水を蒸発させてしまう事で雷を海水で分散することが出来なかったのだ。
「まじか!……っち、少しかすった」
警告があったお陰で彼女は直撃だけはなんとか免れた。しかし、脇腹を大きく抉られてしまった。
「雷が炎を纏うだとぉ?味なまねしてくれるな。ちょっぴりだがビリっときたぞ」
マリスは失った胴体の一部を復元させながら話す。
「まだまだ来るぞ!」
プロエが空を指差す。
「海がだめなら、木はいかがでしょうか!」
「それだ!」
マートルが地面に斧を突き立てる。それに合わせてマリスが地面を大きく隆起させる。
「マートル姫の木をこの土で強化する!」
紫の雷が木に直撃、木は勢いよく燃え始める、しかしその内側から更なる木が急速に生え完全に焼き切れるのを防いだ。
「その木は生命の証!内側から次々と新たな木を生み出す!燃やし尽くすことはできない!」
マートルが生み出した木々はユイを目掛けみるみるうちに成長していく。
「捕まえた!」
木々はタケミとユイを包み込む。
「マダダッ!」
タケミは拳を連続で繰り出した。
強烈な連撃が生み出した衝撃は木々と雷雲を散らした。
「あの雷雲もろとも消すとは。流石の破壊力だ」
プロエが雲が散った空を見てそう言った。
「消したわけではないようだ」
バアルがそう言ってタケミに向けて指を差す。
「なんとそう来たか。これは面倒だ」
デウス・ソリスが顎に手を当てる。
タケミはユイが作り出した黒雲を身体に纏っていた。
「おいおい、タケミのパンチにあの雷がついてくるのか?」
プロエが構える。
「あんな状態でもチームワークはバッチリってか」
マリスが槍を構えた。
「皆様!次にタケミ殿が我々の正面から、上空からユイ殿が攻撃を仕掛けてきます!回避の準備を!来ます!」
フォルサイトが皆に自身が予見したものを共有する。
「ウチトッテ……ミロォォ!」
タケミは雷雲を纏わせた腕を豪快に振り回す。
彼が放った拳に合わせて紫の雷が放たれた。
「ァグニ!」
同時にユイは上空で巨大火球を生成、発射準備をしていた。
「ひでぇ嵐だな……タケミ!」
プロエが前に出た。
彼は迫りくる雷を全て躱し、タケミの懐に飛び込んだ。
「まったく、世話がかかるな!」
マリスも迫りくる火球に向かって飛びだした。
「何をしている二人とも!不用意にそいつらに近づくな!」
デウス・ソリスが先陣を切った二人に警告した。
「ソリス、その心配はもっともだ、しかし連中には届かん」
バアルが彼の隣でそう言った。
「グアアァッ!」
急接近してきたプロエに対してタケミは迎撃の一撃を放つ。
「素早く破壊力のある一撃だな、しかし」
プロエは鋭い視線をタケミに向ける。
「無駄が多すぎる!教えた事を忘れたのか!」
次の瞬間、彼はカウンターをタケミの顔面に叩き込んだ。
「ガアアアッ!」
飛行し向かって来るマリスに目掛けユイは巨大火球を振り下ろした。
「アグニか、良い火力じゃないか。だがな」
マリスが槍に魔力を込める。
「魔力の流れが乱れ過ぎだ!復習不足かぁ?」
彼女は水の槍を放ち、ユイが放った巨大火球を貫いた。
「な……!はっはっはっは!やるじゃないか!」
デウス・ソリスが笑う。
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