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序
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『月のない夜、星の光だけでは心許ないほど闇が濃いなら……山の端から朝陽がのぞくまで、決して家から出てはいけない』
――というのは、半年前に亡くなった母が、生前に何度もくり返していた言葉だった。
(寒い……)
古い襤褸にくるまって筵の上で寝ていたはずの朔は、いつの間にかそこからはみ出てしまった肌寒さで、夢の世界から現へひき戻された。
薄っぺらな木の壁越しに感じる家の外の空気は、キンと冷えていて静かだ。
おそらく夜明けまでにはまだほど遠い時刻だろう。破れた障子から見える空は黒い。
(…………)
朔は、母の戒めめいた言葉を思い返し、もう一度筵の下へ潜りこもうとしたが、すぐ隣で猫のように体を丸めて縮こまっている双子の弟の姿を見、思いとどまった。
(まあ……いいか)
弟に襤褸布をかけ直し、自分はその隣に寄り添う。
くうくうと寝息をたてている弟の望は、髪の長さ以外は、朔とまったく同じ容姿をしている。
男女の双子で、年が明けたらもう十五になるというのに、ここまでそっくりなのはおかしな話だと、近くに住む末吉やお梅などは首を傾げるが、朔自身は嬉しく思っていた。
望の顔を見れば、自分が一人きりではないことをすぐに確認できる。
話をして、顔を見あわせて笑い、励ましあいながら山を登れば、生業にしている山草採りも、辛さよりも楽しさが勝る仕事だと感じられた。
女手一つで育ててくれた母を半年前に亡くし、他に身寄りもなく、この世に二人きりの家族になってしまったが、かけがえのない存在が隣にいるということが、確かに、お互いの支えになっている。
望は生まれつき病弱で、常に、いくつまで生きられるかわからないと言われてきた。
それでも朔と共に、ここまで大きくなった。
生前の母がそうしていたように、望の体調を何よりも優先するというのが、朔にとっての生きる指標だ。
(夜が明けたら、あったかい粥を作ってあげるね)
背中からひしひしと感じる冷たい空気を意識の外へ追いやり、最愛の弟に寄り添ってそっと瞼を閉じた時、異変を感じた。
(――――!)
嫌な感じがする。
その感覚は、他に言い換えようもなく、ただひたすらによくない感じがするのだ。
こういう時は、いったん閉じた瞼を絶対にもう一度開いてはいけないとも、朔は母から言い含められていた。
(どうしよう……!)
母がいる頃は決まって、こんな時、母も朔と共に何かを感じ取っており、いつも朔の手を取って落ち着かせてくれた。
『大丈夫……大丈夫よ、朔』
その手の温もりと、穏やかながらも頼りがいのある声を聞けば、朔は瞼を閉じたままでも安心していられた。
けれど――。
(母さまはもういない……)
温かな指が触れることはない手をぎゅっと握り拳の形に変え、朔は唇を噛んだ。
(大丈夫……大丈夫だ……)
声には出さず心の中だけで、母がよく唱えていた文言を真似する。
(混沌の時代、同じ骨片から生まれて分かたれし魂の片割れよ……あるべき場所へ還れ。こちらへ来てはならぬ。此処は生者の生きる世界。陽の神の統べる世。闇の世界で生きるべき隠者は、常夜へ帰れ)
言葉にあわせて指を様々な型に組み替え、最後の願いと共に額へ指先をつけ、こめる気持ちを強くする。
『言葉は言霊』
――母の教えのとおり、雑念を排して言葉に念をこめると、肌に纏わりつくようだった嫌な感じが、ふっと消失したような気がした。
(消えた?)
母のように『それ』を退けることができたのだろうかと、胸を撫で下ろす思いで朔が瞼を開きかけた時、家の入り口のほうから最奥へ向かい、凄まじい風が吹いた。
痩せて棒きれのように軽い朔の体は、簡単にその風に巻き上げられる。
「うわあ――――っ!」
古い木製の家屋が崩れ落ちる轟音が、背後へ飛び去るように遠くなる。朔はその中から攫われ、家から少し離れた場所で地面へ叩きつけられた。
「つ――っ!」
とても瞼を閉じたままではいられず、うっすらと開いた双眸にまず映ったのは、バラバラに崩れた家を形作っていた木材の山と、その上で蠢く黒い霧のような塊だった。
「な、に……?」
いったい何が起こったのか。今目の前にあるものは、果たして何なのか。
思考を開始する前に、朔にとって最も大切なたった一つの面影が脳裏を過ぎる。
「望っ!」
必死に地面を蹴り、変わり果てた我が家へ駆け寄ろうとした瞬間――何者かに腕を掴まれた。
(えっ?)
長い髪を翻して背後をふり返った朔がまず目にしたのは、黒い夜空を斜めに横切る大きな星だった。
(流星……)
亡き母は、星の位置や動きでこれからで起こる出来事を予想するという、不思議な業を持っていた。
それは持って生まれた能力ではなく、多くの学びによって得た知識なのだと語ってくれたが、共に過ごす時間を突然断たれたため、朔はその知識の全てを伝授してもらうことは叶わなかった。
しかし教えてもらえたことは、深く心に刻んでいる。
(星が流れるのは、物事が動く時! ……しかもあれだけ大きな星なら、それはとても重要な岐路だ……)
家の残骸がある位置と、遠くにかすかに見える山の位置から、星の流れた方角を予想し、それがよい変化であるということまでは朔にも読めた。
そこまでに要した時間は一瞬――。
次の瞬間には、朔の大きな瞳は、自分の腕を掴んだ背後の人物を視認していた。
(誰?)
見たことのない人物だった。
上背のある若い男で、長い髪を頭の高い位置で結っている。眼光鋭く、厳しい表情の美丈夫で、袖の短い着物に袴という和装の出で立ちだ。
腰に長い刀を佩いているところまで確認した時、男の大きな手がすらりとそれを抜いた。
「え……」
まるで吸い寄せられるかのように、男の背後で瞬く星の光が、鈍く輝く刀の刀身へと集まっていく。黒い空を流れ落ちる大小幾つもの星々が、次々と――。
(綺麗……)
朔が呆けたようにその輝きに見入った隙に、掴まれていた腕を、まるで後方へ投げ捨てるかのように放された。
「きゃあっ!」
咄嗟のことにも地面に突っ伏さず、朔はすかさず受け身を取り、その反動で地面を蹴った。
歩き去ろうとしている男の背中を、すぐに追う。
「待って!」
男が何をしようとしているのか、本能で理解した。
今尚、流れる星の光を集め続けているあの不思議な刀で、おそらく、壊れた家の上に蠢く闇を切るのだろう。
そういうことが可能なのかなど、知らない。
ただ、そう、だとわかり、朔は男を止めようと必死に追い縋った。
「待って! 待ってください! あそこにはまだ弟が……!」
家の中を凄まじい風が吹き抜けた時、朔はそれに攫われて外へと投げ出されたが、望はおそらく家の中に取り残された。
そうなのだと、感覚でわかる。
瓦礫の下敷きになっているとは思いたくないが、周囲に彼らしき姿はないので、信じたくはないが、そうなのだろう。
だとすれば、ただでさえ安否が心配な望に、これ以上危害が及ぶかもしれない行為は、絶対に見過ごせない。
「やめてください!」
力の限りに掴んだ男の着物の袂は、あっさりとふり払われた。
「下がっていろ」
高い位置から睨んでくる鋭い目と、凄みのある声には思わず怯んでしまいそうだったが、朔は自分を奮い立たせた。
(望……!)
たった一人の、かけがえのない弟のためなら、朔はどんなことでもできる。やってみせる。
山で猪を罠へ追いこむ時にやるように、体勢を低くして精一杯早く駆け、男に先んじて家の残骸へと駆け寄った。
それを背に庇うように男と向きあって立ち、大きく手を左右に広げる。
「邪魔だ、どけ!」
怒気をはらんだ男の声にも、目の前へ突きつけられる切っ先にも怯むことなく、朔はそっと瞼を閉じ、素早く踵を返した。
「やめろ! それに近づくな!」
男が必死に制止しようとしているのも道理で、朔がこれから向かおうとしている先には、あの闇の塊が蠢いている。
それは十分に承知している。
(大丈夫……大丈夫だ……)
目を開けていればこれまで見たこともない恐ろしい現象でも、いったん目を閉じてしまえば、朔が幼い頃から何度も感じてきた、あの嫌な感じと同じものだ。
『大丈夫……大丈夫よ、朔』
そう勇気づけてくれながら、母が何度も退けてくれたものだ。
朔自身も、ほんのつい先ほど、その気配を遠ざけることに成功した。
(出来る……私にも出来る……)
母に教えてもらった型に、次々と指を組み替えながら、心に刻まれた文言を言葉にする。
「混沌の時代、同じ骨片から生まれて分かたれし魂の片割れよ……あるべき場所へ還れ……」
「お前……!」
背後から男の驚いたような声が聞こえるが、それに気を取られてはいけない。言葉にどれだけの念を込められるかが、祈りの成否を決めると、朔はこれまでの経験から知っている。中途半端に念じた時は、いくらやってもそれを退けることなど出来なかった。
「こちらへ来てはならぬ。此処は生者の生きる世。陽の神の統べる世界。闇の世界で生きるべき隠者は、常夜へ帰れ」
最後の言葉まで力を込めて念じきり、額に押しあてた指を前方へ向け直す。
すると、息が詰まるほどに重苦しく感じていた嫌な空気が、ふっと周囲から消え失せた。
その間、朔は目を閉じたままなので、あの闇の塊がどうなったのか、確認しようもない。
しかし、瞼を閉じていてもはっきりと感じられる温かな光を、前方から感じた。
「望!」
その光が、最愛の弟を示すことを朔は知っている。
あの、嫌な感じを退けている時、母も朔が光として瞼に映ると言っていた。
その母から指の組み方や文言を一緒に倣った望も、朔のことをそう感じると語った。
自分のことは自分ではわからないが、朔にとっての光は、唯一無二――望だ。
「望!」
瞼を開き、涙ながらに家の残骸へ駆け寄ると、柱と屋根の隙間から、自分と同じ顔が這い出てきた。
「朔……!」
朔と同じようにこちらへ手を差し伸べて、必死に自分の名前を呼ぶ双子の片割れを、無我夢中で瓦礫の下からひっぱり出し、両腕でしっかりと抱きしめて、共に地面に座りこんだ。
「よかった……望……よかった」
自分と同じようにやせ細った体に縋り、泣き崩れてしまっているのは朔のほうだ。
望はそんな朔を宥めるように、優しい笑顔で、嗚咽に震える背をぽんぽんと叩いてくれる。
「大丈夫……大丈夫だよ、朔」
母と同じ言葉を、望の優しい声が紡ぐと、自分がどれほどほっとするかを朔は深く自覚している。
何より大切な存在を、失わずに済んだことに安堵し、溢れ出した涙が止まらない。
「あれ? ひょっとして俺たち……余計なお世話だったんじゃないの?」
先ほどの男とはまた違う声が、場違いに明るくその場に響かなければ、朔は望を抱きしめたまま、まだ涙に暮れていたかもしれなかった。
「えっ?」
しかし、ふいに聞こえた声に飛び上がりそうなほど驚いて――それでも、望を自分の背に庇うことは忘れず――声の聞こえた方を、咄嗟にふり返る。
刀を手にした男と並ぶようにして、そこにはもう一人の男が立っていた。
背格好は刀の男と同じくらいで、こちらも和装。しかし、着こなしはまったく異なる。着流しの上に華やかな色あいの打掛を羽織った、いかにも洒落ものといった雰囲気の男だ。
目鼻立ちの整った美しい顔をしているが、それより更に目を惹くのは、肩より少し長いくらいに切り揃えられた髪。
これほど明るい色の髪をした者を、朔はこれまで見たことがない。
(まるで、陽の光のような……)
そう思いかけた時、遠くの山の稜線から、ちょうど朝陽が顔をのぞかせた。
さっと射しこんだ光に照らされ、着流しの男の髪は、黄金色に煌めく。
異質とも感じるその輝きに、朔は不安を覚えた。
「あなたたちは、いったい……」
何があっても望を守らなければと、朔は必死で背に庇うが、望もまた同じように考えているのか、朔を抱きしめる腕に力を込める。
どんな返答があっても即座に対応できるようにと、固唾を呑んで男たちの動向を見つめる双子を無視し、着流しの男は刀の男の肩を叩いた。
「光流さあ……だからいつも言ってるじゃない、勝手に先走るなって」
「な……!」
刀の男は目を剥いて、手にしていた刀の切っ先を、着流しの男の鼻先へ突きつけた。
「お前が俺より先に、とりあえず……とか言って、家ごと吹き飛ばしたんだろう! 天晴!」
「そうだっけ?」
とぼけた返答をしながら、薄く笑って切っ先を交わした着流しの男が、金色の髪をさらりと揺らし、首を傾げた。
笑顔であるのに、笑っているようには感じられない瞳が、真っ直ぐに朔と望を見つめる。
「しかし……まさか術が使えるとは思わなかったなぁ……しかも、うちの流派とは全然違う系譜みたいだ……」
懐から出した扇を広げ、口元を隠した男の顔は、もう笑顔には見えない。
朔と望のお互いを掴む手が、更に力を増す。
「よせ、恐がらせてどうする」
刀の男が着流しの男の肩を掴み、排除するように押し退けて、朔と望の前に立った。
「俺たちはある人物に頼まれて、お前たちを捜しに来た。家を壊してしまったことは謝る。すまなかった……火急の事態だと感じたので、この馬鹿が勝手にやった」
「ちょっと光流?」
不満そうな声を上げた着流しの男と、頭を下げた刀の男を、朔は代わる代わる見つめる。
「ある人物……?」
「ああ」
頭を上げた刀の男は、着物の袂から小さな包みを取り出した。
布に包まれていたのは印籠で、大きく欠けた月の紋が描かれている。
「あっ!」
朔は急いで、いつも首から提げている守り袋を胸もとからひっぱり出した。
同時に望も同じことをしている。
それらは擦り切れた小さなものだったが、母の手作りで、印籠に描かれているのと同じ紋が、糸で縫い取られていた。
守り袋と印籠を見比べる双子に、刀の男が語りかける。
「お前たちの父親は名家――月照院の出で、月照院家はずっとその行方を捜していた。ようやく見つけたと思ったら、既に亡くなっており、その遺児が身寄りなく生活しているようなので、ぜひひき取りたいと、俺たちが迎えに遣わされた」
「月照院……」
初めて聞く名に、朔は首を傾げたが、望は何かを考えこむような顔をしている。
「望?」
望は朔の呼びかけには応えず、刀の男へ真摯な眼差しを向けた。
「それは、二人揃ってですか?」
「それは……」
望の問いかけは、どうやら答え難いものだったようで、刀の男が言葉を濁す。
それ以上は答えをもらえないと判断したのか、望の顔つきが変わった。
「二人揃ってでないのなら……」
決意を秘めたような望の言葉は、最後まで続けることが出来なかった。
「もちろん、二人揃ってだよ」
扇で口もとを隠したまま、あっさりと言い放った着流しの男を、刀の男がふり返って睨みつける。
「おい、天晴! 勝手なことを!」
怒鳴り声をものともせず、着流しの男は言葉を重ねた。
「二人揃ってだ。俺が保証する」
(…………)
笑顔であるのに笑っていないように見える男の言うことなど、どこまで信用できるものかと朔は反発心を大きくしたが、どうやら望の判断は違っていたようだ。
それまで朔を抱きしめていた腕を解き、代わりに手を繋いで、男たちへ向かって深々と頭を下げる。
「では、よろしくお願いいたします」
「望!?」
朔は驚いて望の顔を覗きこんだが、その表情を見れば、反対の言葉はもう出てこなかった。
望は体が弱くて力仕事は苦手だが、そのぶん頭がいい。母が残した書物は全て覚えてしまっているし、新しいことも土が水を吸うようにどんどん覚える。
その上、勘がいい。望が大丈夫だと判断して、うまくいかなかったことなどこれまで一つもない。朔はこの世の誰よりも望を信頼している。
(望が決めたのなら……)
朔も彼に倣い、男たちへ向かって頭を下げた。
「お願いします」
渋々といったふうの朔の態度が面白かったのか、着流しの男が声に出して笑いながら、歩き始める。
「あはは、これは面白いことになりそうだ」
地面に座りこんだままの双子に、行くぞとばかりに顎で進行方向を示し、刀を鞘へ納めてから、刀の男も着流しの男の後を追う。
「やっかいなこと、のまちがいだろ」
並んで歩く男たちはそれから声を潜め、二言、三言会話を交わした。
「どちらかが、あれ、なのか?」
「いや、俺にはどちらも人の子に見える。光流は?」
「俺もだ。じゃあ、あれ、はどこへ?」
「さあ……」
顔を見あわせた二人は、うしろをついてくる双子をふり返った。
同じように古びた着物を着た、同じ顔の双子。
薄汚れているが、磨けばかなりの器量良しであることは、目鼻立ちの可愛らしさからわかる。
それは、これから彼らが飛びこんでいく世界でも、すぐに噂の的になることは間違いないほどに――。
「どう? あれ、を退けた不思議な術も含め……やっぱり、面白いことになりそうだろ?」
「…………そうだな」
深々とため息を吐いた刀の男と、その隣を踊るように軽やかな足取りで歩く着流しの男を、朔は望としっかり手を繋ぎながら追いかけた。
――それは、朝陽に煌めく金色の髪と、星の光を集めた刀の輝きが、記憶の底にしっかりと刻まれた、新しい出発の朝の出来事だった。
――というのは、半年前に亡くなった母が、生前に何度もくり返していた言葉だった。
(寒い……)
古い襤褸にくるまって筵の上で寝ていたはずの朔は、いつの間にかそこからはみ出てしまった肌寒さで、夢の世界から現へひき戻された。
薄っぺらな木の壁越しに感じる家の外の空気は、キンと冷えていて静かだ。
おそらく夜明けまでにはまだほど遠い時刻だろう。破れた障子から見える空は黒い。
(…………)
朔は、母の戒めめいた言葉を思い返し、もう一度筵の下へ潜りこもうとしたが、すぐ隣で猫のように体を丸めて縮こまっている双子の弟の姿を見、思いとどまった。
(まあ……いいか)
弟に襤褸布をかけ直し、自分はその隣に寄り添う。
くうくうと寝息をたてている弟の望は、髪の長さ以外は、朔とまったく同じ容姿をしている。
男女の双子で、年が明けたらもう十五になるというのに、ここまでそっくりなのはおかしな話だと、近くに住む末吉やお梅などは首を傾げるが、朔自身は嬉しく思っていた。
望の顔を見れば、自分が一人きりではないことをすぐに確認できる。
話をして、顔を見あわせて笑い、励ましあいながら山を登れば、生業にしている山草採りも、辛さよりも楽しさが勝る仕事だと感じられた。
女手一つで育ててくれた母を半年前に亡くし、他に身寄りもなく、この世に二人きりの家族になってしまったが、かけがえのない存在が隣にいるということが、確かに、お互いの支えになっている。
望は生まれつき病弱で、常に、いくつまで生きられるかわからないと言われてきた。
それでも朔と共に、ここまで大きくなった。
生前の母がそうしていたように、望の体調を何よりも優先するというのが、朔にとっての生きる指標だ。
(夜が明けたら、あったかい粥を作ってあげるね)
背中からひしひしと感じる冷たい空気を意識の外へ追いやり、最愛の弟に寄り添ってそっと瞼を閉じた時、異変を感じた。
(――――!)
嫌な感じがする。
その感覚は、他に言い換えようもなく、ただひたすらによくない感じがするのだ。
こういう時は、いったん閉じた瞼を絶対にもう一度開いてはいけないとも、朔は母から言い含められていた。
(どうしよう……!)
母がいる頃は決まって、こんな時、母も朔と共に何かを感じ取っており、いつも朔の手を取って落ち着かせてくれた。
『大丈夫……大丈夫よ、朔』
その手の温もりと、穏やかながらも頼りがいのある声を聞けば、朔は瞼を閉じたままでも安心していられた。
けれど――。
(母さまはもういない……)
温かな指が触れることはない手をぎゅっと握り拳の形に変え、朔は唇を噛んだ。
(大丈夫……大丈夫だ……)
声には出さず心の中だけで、母がよく唱えていた文言を真似する。
(混沌の時代、同じ骨片から生まれて分かたれし魂の片割れよ……あるべき場所へ還れ。こちらへ来てはならぬ。此処は生者の生きる世界。陽の神の統べる世。闇の世界で生きるべき隠者は、常夜へ帰れ)
言葉にあわせて指を様々な型に組み替え、最後の願いと共に額へ指先をつけ、こめる気持ちを強くする。
『言葉は言霊』
――母の教えのとおり、雑念を排して言葉に念をこめると、肌に纏わりつくようだった嫌な感じが、ふっと消失したような気がした。
(消えた?)
母のように『それ』を退けることができたのだろうかと、胸を撫で下ろす思いで朔が瞼を開きかけた時、家の入り口のほうから最奥へ向かい、凄まじい風が吹いた。
痩せて棒きれのように軽い朔の体は、簡単にその風に巻き上げられる。
「うわあ――――っ!」
古い木製の家屋が崩れ落ちる轟音が、背後へ飛び去るように遠くなる。朔はその中から攫われ、家から少し離れた場所で地面へ叩きつけられた。
「つ――っ!」
とても瞼を閉じたままではいられず、うっすらと開いた双眸にまず映ったのは、バラバラに崩れた家を形作っていた木材の山と、その上で蠢く黒い霧のような塊だった。
「な、に……?」
いったい何が起こったのか。今目の前にあるものは、果たして何なのか。
思考を開始する前に、朔にとって最も大切なたった一つの面影が脳裏を過ぎる。
「望っ!」
必死に地面を蹴り、変わり果てた我が家へ駆け寄ろうとした瞬間――何者かに腕を掴まれた。
(えっ?)
長い髪を翻して背後をふり返った朔がまず目にしたのは、黒い夜空を斜めに横切る大きな星だった。
(流星……)
亡き母は、星の位置や動きでこれからで起こる出来事を予想するという、不思議な業を持っていた。
それは持って生まれた能力ではなく、多くの学びによって得た知識なのだと語ってくれたが、共に過ごす時間を突然断たれたため、朔はその知識の全てを伝授してもらうことは叶わなかった。
しかし教えてもらえたことは、深く心に刻んでいる。
(星が流れるのは、物事が動く時! ……しかもあれだけ大きな星なら、それはとても重要な岐路だ……)
家の残骸がある位置と、遠くにかすかに見える山の位置から、星の流れた方角を予想し、それがよい変化であるということまでは朔にも読めた。
そこまでに要した時間は一瞬――。
次の瞬間には、朔の大きな瞳は、自分の腕を掴んだ背後の人物を視認していた。
(誰?)
見たことのない人物だった。
上背のある若い男で、長い髪を頭の高い位置で結っている。眼光鋭く、厳しい表情の美丈夫で、袖の短い着物に袴という和装の出で立ちだ。
腰に長い刀を佩いているところまで確認した時、男の大きな手がすらりとそれを抜いた。
「え……」
まるで吸い寄せられるかのように、男の背後で瞬く星の光が、鈍く輝く刀の刀身へと集まっていく。黒い空を流れ落ちる大小幾つもの星々が、次々と――。
(綺麗……)
朔が呆けたようにその輝きに見入った隙に、掴まれていた腕を、まるで後方へ投げ捨てるかのように放された。
「きゃあっ!」
咄嗟のことにも地面に突っ伏さず、朔はすかさず受け身を取り、その反動で地面を蹴った。
歩き去ろうとしている男の背中を、すぐに追う。
「待って!」
男が何をしようとしているのか、本能で理解した。
今尚、流れる星の光を集め続けているあの不思議な刀で、おそらく、壊れた家の上に蠢く闇を切るのだろう。
そういうことが可能なのかなど、知らない。
ただ、そう、だとわかり、朔は男を止めようと必死に追い縋った。
「待って! 待ってください! あそこにはまだ弟が……!」
家の中を凄まじい風が吹き抜けた時、朔はそれに攫われて外へと投げ出されたが、望はおそらく家の中に取り残された。
そうなのだと、感覚でわかる。
瓦礫の下敷きになっているとは思いたくないが、周囲に彼らしき姿はないので、信じたくはないが、そうなのだろう。
だとすれば、ただでさえ安否が心配な望に、これ以上危害が及ぶかもしれない行為は、絶対に見過ごせない。
「やめてください!」
力の限りに掴んだ男の着物の袂は、あっさりとふり払われた。
「下がっていろ」
高い位置から睨んでくる鋭い目と、凄みのある声には思わず怯んでしまいそうだったが、朔は自分を奮い立たせた。
(望……!)
たった一人の、かけがえのない弟のためなら、朔はどんなことでもできる。やってみせる。
山で猪を罠へ追いこむ時にやるように、体勢を低くして精一杯早く駆け、男に先んじて家の残骸へと駆け寄った。
それを背に庇うように男と向きあって立ち、大きく手を左右に広げる。
「邪魔だ、どけ!」
怒気をはらんだ男の声にも、目の前へ突きつけられる切っ先にも怯むことなく、朔はそっと瞼を閉じ、素早く踵を返した。
「やめろ! それに近づくな!」
男が必死に制止しようとしているのも道理で、朔がこれから向かおうとしている先には、あの闇の塊が蠢いている。
それは十分に承知している。
(大丈夫……大丈夫だ……)
目を開けていればこれまで見たこともない恐ろしい現象でも、いったん目を閉じてしまえば、朔が幼い頃から何度も感じてきた、あの嫌な感じと同じものだ。
『大丈夫……大丈夫よ、朔』
そう勇気づけてくれながら、母が何度も退けてくれたものだ。
朔自身も、ほんのつい先ほど、その気配を遠ざけることに成功した。
(出来る……私にも出来る……)
母に教えてもらった型に、次々と指を組み替えながら、心に刻まれた文言を言葉にする。
「混沌の時代、同じ骨片から生まれて分かたれし魂の片割れよ……あるべき場所へ還れ……」
「お前……!」
背後から男の驚いたような声が聞こえるが、それに気を取られてはいけない。言葉にどれだけの念を込められるかが、祈りの成否を決めると、朔はこれまでの経験から知っている。中途半端に念じた時は、いくらやってもそれを退けることなど出来なかった。
「こちらへ来てはならぬ。此処は生者の生きる世。陽の神の統べる世界。闇の世界で生きるべき隠者は、常夜へ帰れ」
最後の言葉まで力を込めて念じきり、額に押しあてた指を前方へ向け直す。
すると、息が詰まるほどに重苦しく感じていた嫌な空気が、ふっと周囲から消え失せた。
その間、朔は目を閉じたままなので、あの闇の塊がどうなったのか、確認しようもない。
しかし、瞼を閉じていてもはっきりと感じられる温かな光を、前方から感じた。
「望!」
その光が、最愛の弟を示すことを朔は知っている。
あの、嫌な感じを退けている時、母も朔が光として瞼に映ると言っていた。
その母から指の組み方や文言を一緒に倣った望も、朔のことをそう感じると語った。
自分のことは自分ではわからないが、朔にとっての光は、唯一無二――望だ。
「望!」
瞼を開き、涙ながらに家の残骸へ駆け寄ると、柱と屋根の隙間から、自分と同じ顔が這い出てきた。
「朔……!」
朔と同じようにこちらへ手を差し伸べて、必死に自分の名前を呼ぶ双子の片割れを、無我夢中で瓦礫の下からひっぱり出し、両腕でしっかりと抱きしめて、共に地面に座りこんだ。
「よかった……望……よかった」
自分と同じようにやせ細った体に縋り、泣き崩れてしまっているのは朔のほうだ。
望はそんな朔を宥めるように、優しい笑顔で、嗚咽に震える背をぽんぽんと叩いてくれる。
「大丈夫……大丈夫だよ、朔」
母と同じ言葉を、望の優しい声が紡ぐと、自分がどれほどほっとするかを朔は深く自覚している。
何より大切な存在を、失わずに済んだことに安堵し、溢れ出した涙が止まらない。
「あれ? ひょっとして俺たち……余計なお世話だったんじゃないの?」
先ほどの男とはまた違う声が、場違いに明るくその場に響かなければ、朔は望を抱きしめたまま、まだ涙に暮れていたかもしれなかった。
「えっ?」
しかし、ふいに聞こえた声に飛び上がりそうなほど驚いて――それでも、望を自分の背に庇うことは忘れず――声の聞こえた方を、咄嗟にふり返る。
刀を手にした男と並ぶようにして、そこにはもう一人の男が立っていた。
背格好は刀の男と同じくらいで、こちらも和装。しかし、着こなしはまったく異なる。着流しの上に華やかな色あいの打掛を羽織った、いかにも洒落ものといった雰囲気の男だ。
目鼻立ちの整った美しい顔をしているが、それより更に目を惹くのは、肩より少し長いくらいに切り揃えられた髪。
これほど明るい色の髪をした者を、朔はこれまで見たことがない。
(まるで、陽の光のような……)
そう思いかけた時、遠くの山の稜線から、ちょうど朝陽が顔をのぞかせた。
さっと射しこんだ光に照らされ、着流しの男の髪は、黄金色に煌めく。
異質とも感じるその輝きに、朔は不安を覚えた。
「あなたたちは、いったい……」
何があっても望を守らなければと、朔は必死で背に庇うが、望もまた同じように考えているのか、朔を抱きしめる腕に力を込める。
どんな返答があっても即座に対応できるようにと、固唾を呑んで男たちの動向を見つめる双子を無視し、着流しの男は刀の男の肩を叩いた。
「光流さあ……だからいつも言ってるじゃない、勝手に先走るなって」
「な……!」
刀の男は目を剥いて、手にしていた刀の切っ先を、着流しの男の鼻先へ突きつけた。
「お前が俺より先に、とりあえず……とか言って、家ごと吹き飛ばしたんだろう! 天晴!」
「そうだっけ?」
とぼけた返答をしながら、薄く笑って切っ先を交わした着流しの男が、金色の髪をさらりと揺らし、首を傾げた。
笑顔であるのに、笑っているようには感じられない瞳が、真っ直ぐに朔と望を見つめる。
「しかし……まさか術が使えるとは思わなかったなぁ……しかも、うちの流派とは全然違う系譜みたいだ……」
懐から出した扇を広げ、口元を隠した男の顔は、もう笑顔には見えない。
朔と望のお互いを掴む手が、更に力を増す。
「よせ、恐がらせてどうする」
刀の男が着流しの男の肩を掴み、排除するように押し退けて、朔と望の前に立った。
「俺たちはある人物に頼まれて、お前たちを捜しに来た。家を壊してしまったことは謝る。すまなかった……火急の事態だと感じたので、この馬鹿が勝手にやった」
「ちょっと光流?」
不満そうな声を上げた着流しの男と、頭を下げた刀の男を、朔は代わる代わる見つめる。
「ある人物……?」
「ああ」
頭を上げた刀の男は、着物の袂から小さな包みを取り出した。
布に包まれていたのは印籠で、大きく欠けた月の紋が描かれている。
「あっ!」
朔は急いで、いつも首から提げている守り袋を胸もとからひっぱり出した。
同時に望も同じことをしている。
それらは擦り切れた小さなものだったが、母の手作りで、印籠に描かれているのと同じ紋が、糸で縫い取られていた。
守り袋と印籠を見比べる双子に、刀の男が語りかける。
「お前たちの父親は名家――月照院の出で、月照院家はずっとその行方を捜していた。ようやく見つけたと思ったら、既に亡くなっており、その遺児が身寄りなく生活しているようなので、ぜひひき取りたいと、俺たちが迎えに遣わされた」
「月照院……」
初めて聞く名に、朔は首を傾げたが、望は何かを考えこむような顔をしている。
「望?」
望は朔の呼びかけには応えず、刀の男へ真摯な眼差しを向けた。
「それは、二人揃ってですか?」
「それは……」
望の問いかけは、どうやら答え難いものだったようで、刀の男が言葉を濁す。
それ以上は答えをもらえないと判断したのか、望の顔つきが変わった。
「二人揃ってでないのなら……」
決意を秘めたような望の言葉は、最後まで続けることが出来なかった。
「もちろん、二人揃ってだよ」
扇で口もとを隠したまま、あっさりと言い放った着流しの男を、刀の男がふり返って睨みつける。
「おい、天晴! 勝手なことを!」
怒鳴り声をものともせず、着流しの男は言葉を重ねた。
「二人揃ってだ。俺が保証する」
(…………)
笑顔であるのに笑っていないように見える男の言うことなど、どこまで信用できるものかと朔は反発心を大きくしたが、どうやら望の判断は違っていたようだ。
それまで朔を抱きしめていた腕を解き、代わりに手を繋いで、男たちへ向かって深々と頭を下げる。
「では、よろしくお願いいたします」
「望!?」
朔は驚いて望の顔を覗きこんだが、その表情を見れば、反対の言葉はもう出てこなかった。
望は体が弱くて力仕事は苦手だが、そのぶん頭がいい。母が残した書物は全て覚えてしまっているし、新しいことも土が水を吸うようにどんどん覚える。
その上、勘がいい。望が大丈夫だと判断して、うまくいかなかったことなどこれまで一つもない。朔はこの世の誰よりも望を信頼している。
(望が決めたのなら……)
朔も彼に倣い、男たちへ向かって頭を下げた。
「お願いします」
渋々といったふうの朔の態度が面白かったのか、着流しの男が声に出して笑いながら、歩き始める。
「あはは、これは面白いことになりそうだ」
地面に座りこんだままの双子に、行くぞとばかりに顎で進行方向を示し、刀を鞘へ納めてから、刀の男も着流しの男の後を追う。
「やっかいなこと、のまちがいだろ」
並んで歩く男たちはそれから声を潜め、二言、三言会話を交わした。
「どちらかが、あれ、なのか?」
「いや、俺にはどちらも人の子に見える。光流は?」
「俺もだ。じゃあ、あれ、はどこへ?」
「さあ……」
顔を見あわせた二人は、うしろをついてくる双子をふり返った。
同じように古びた着物を着た、同じ顔の双子。
薄汚れているが、磨けばかなりの器量良しであることは、目鼻立ちの可愛らしさからわかる。
それは、これから彼らが飛びこんでいく世界でも、すぐに噂の的になることは間違いないほどに――。
「どう? あれ、を退けた不思議な術も含め……やっぱり、面白いことになりそうだろ?」
「…………そうだな」
深々とため息を吐いた刀の男と、その隣を踊るように軽やかな足取りで歩く着流しの男を、朔は望としっかり手を繋ぎながら追いかけた。
――それは、朝陽に煌めく金色の髪と、星の光を集めた刀の輝きが、記憶の底にしっかりと刻まれた、新しい出発の朝の出来事だった。
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