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5 ふしぎな間借り人
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しばらくして出来上がった料理は、炊きたてのご飯に煮物にお浸しに味噌汁という、完璧な家庭料理の和食の定番だった。
「おいしい……!」
思わず呟く私に、クロは何も言わないが、少し得意げに眉が上がっていることが、長い前髪越しにうっすらとわかる。
代わりに、自分もがつがつとご飯を口にかき込みながら、シロが自慢する。
「だろー? クロの料理はなんでも美味しいんだ。洋食も中華もいけるけど、やっぱり和食が一番だなー。作ってる歴が違うからなー」
手作りと思われる漬物をぱりぱりと食べながら、シロは三杯目のご飯を食べ終わり、ポットと急須と湯呑みを持ってきて、熱いお茶を淹れている。
私もそれを分けてもらい、ほっと一息ついた。
(あー落ち着いた……)
初対面の若い男性二人と食卓を囲んでいるというのに、場所のせいなのか、建物のせいなのか、不思議と祖母の家にでも遊びに行った時のような安心感がある。
それも普通の人間ではないかもしれない二人なのに――。
食べ終わった二人は、台所で並んで洗い物をしている。
私も手伝おうとすると、いいから座っていろと言い渡された。
「俺たちが勝手に作って勝手に食ってるんだから、お前は気にするな」
「わかりにくいかもしれないけど、これでもクロはとっても喜んでるんだよ。俺たちがいるってわかる人に、自分の料理を美味しいって食べてもらえて……」
「っ……余計なことを言うな」
「えー、だって本当じゃーん。まったく……照れちゃって」
「シロ!」
二人のやり取りをうしろから眺めながら、なんとも不思議な気持ちだった。
こうして見ていると、二人とも普通の若い男の人にしか見えない。
服装のせいもあるのだろうか。
営業所の奥の部屋で宅配便の受付をしていた時は和服だったのにと思い出し、あの部屋についてもう少し詳しく説明してはもらえないだろうかと思った。
「あの……」
しかし、台所の片づけが終わったらしい二人は、私がいる部屋を素通りし、さっさと玄関へ向かい始める。
「どこか行くんですか?」
訊ねた私を、クロが苛立たしげにふり返った。
「仕事に決まってるだろ」
「仕事って……」
詳しい説明もせず、行ってしまおうとするクロに代わり、シロが笑って私をふり返る。
「俺たちの場合、預かった荷物を自分たちで届けるまでが仕事だから、さっき預かった荷物を全部、今夜中に配り終わらなくちゃいけないんだ」
「え? 夜にですか?」
説明のために足を止めてしまったシロの肩を掴み、玄関へと向かわせながら、クロが吐き捨てるように私に答える。
「あやかしから預かった、あやかし宛ての荷物なんだから、夜に届けるのが当然だろう」
「あやかし!」
夕暮れ時の営業所の奥の部屋に集まっていた異形の者たちは、やはりその類のものだったのだと、私は今更ながらに背筋がぞっとした。
玄関を出ていこうとしている二人の背中に、慌てて問いかける。
「シロくんとクロさんは? 二人もあやかしなんですか?」
見た目は普通の人間にしか見えないことに一縷の望みを託し、訊いてみたのだったが、一瞬顔を見合わせて同時にこちらをふり返った二人の瞳が、怪しく煌めく。
「「さあ、どうでしょう(だろう)?」」
その顔の造形が人間離れして整っていることと、思わず目を奪われる不思議な魅力に溢れていることを鑑みて、私は自分で自分に返事をした。
(人間じゃない! きっと人間じゃないわ!)
私の表情がよほど面白かったのだろう。
シロが笑顔で誘う。
「よかったら瑞穂ちゃんも一緒に行く? そしたら答えがわかるかもよー」
「シロ!」
咎めるようなクロの声に、「いいじゃん、いいじゃん」とシロはバンバン彼の肩を叩く。
二人のやり取りを見ながら、私は自然と一歩を踏み出していた。
「行きます」
「そうこなくっちゃ」
「…………っ」
笑顔で頷くシロと、不機嫌そうにそっぽを向くクロ。
どこまでも対照的な二人のあとをついて玄関を出た。
「おいしい……!」
思わず呟く私に、クロは何も言わないが、少し得意げに眉が上がっていることが、長い前髪越しにうっすらとわかる。
代わりに、自分もがつがつとご飯を口にかき込みながら、シロが自慢する。
「だろー? クロの料理はなんでも美味しいんだ。洋食も中華もいけるけど、やっぱり和食が一番だなー。作ってる歴が違うからなー」
手作りと思われる漬物をぱりぱりと食べながら、シロは三杯目のご飯を食べ終わり、ポットと急須と湯呑みを持ってきて、熱いお茶を淹れている。
私もそれを分けてもらい、ほっと一息ついた。
(あー落ち着いた……)
初対面の若い男性二人と食卓を囲んでいるというのに、場所のせいなのか、建物のせいなのか、不思議と祖母の家にでも遊びに行った時のような安心感がある。
それも普通の人間ではないかもしれない二人なのに――。
食べ終わった二人は、台所で並んで洗い物をしている。
私も手伝おうとすると、いいから座っていろと言い渡された。
「俺たちが勝手に作って勝手に食ってるんだから、お前は気にするな」
「わかりにくいかもしれないけど、これでもクロはとっても喜んでるんだよ。俺たちがいるってわかる人に、自分の料理を美味しいって食べてもらえて……」
「っ……余計なことを言うな」
「えー、だって本当じゃーん。まったく……照れちゃって」
「シロ!」
二人のやり取りをうしろから眺めながら、なんとも不思議な気持ちだった。
こうして見ていると、二人とも普通の若い男の人にしか見えない。
服装のせいもあるのだろうか。
営業所の奥の部屋で宅配便の受付をしていた時は和服だったのにと思い出し、あの部屋についてもう少し詳しく説明してはもらえないだろうかと思った。
「あの……」
しかし、台所の片づけが終わったらしい二人は、私がいる部屋を素通りし、さっさと玄関へ向かい始める。
「どこか行くんですか?」
訊ねた私を、クロが苛立たしげにふり返った。
「仕事に決まってるだろ」
「仕事って……」
詳しい説明もせず、行ってしまおうとするクロに代わり、シロが笑って私をふり返る。
「俺たちの場合、預かった荷物を自分たちで届けるまでが仕事だから、さっき預かった荷物を全部、今夜中に配り終わらなくちゃいけないんだ」
「え? 夜にですか?」
説明のために足を止めてしまったシロの肩を掴み、玄関へと向かわせながら、クロが吐き捨てるように私に答える。
「あやかしから預かった、あやかし宛ての荷物なんだから、夜に届けるのが当然だろう」
「あやかし!」
夕暮れ時の営業所の奥の部屋に集まっていた異形の者たちは、やはりその類のものだったのだと、私は今更ながらに背筋がぞっとした。
玄関を出ていこうとしている二人の背中に、慌てて問いかける。
「シロくんとクロさんは? 二人もあやかしなんですか?」
見た目は普通の人間にしか見えないことに一縷の望みを託し、訊いてみたのだったが、一瞬顔を見合わせて同時にこちらをふり返った二人の瞳が、怪しく煌めく。
「「さあ、どうでしょう(だろう)?」」
その顔の造形が人間離れして整っていることと、思わず目を奪われる不思議な魅力に溢れていることを鑑みて、私は自分で自分に返事をした。
(人間じゃない! きっと人間じゃないわ!)
私の表情がよほど面白かったのだろう。
シロが笑顔で誘う。
「よかったら瑞穂ちゃんも一緒に行く? そしたら答えがわかるかもよー」
「シロ!」
咎めるようなクロの声に、「いいじゃん、いいじゃん」とシロはバンバン彼の肩を叩く。
二人のやり取りを見ながら、私は自然と一歩を踏み出していた。
「行きます」
「そうこなくっちゃ」
「…………っ」
笑顔で頷くシロと、不機嫌そうにそっぽを向くクロ。
どこまでも対照的な二人のあとをついて玄関を出た。
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