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5 ふしぎな間借り人
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「あれー、電気が点いてると思ったら瑞穂ちゃんじゃーん。あ! 今日からここに住むの? じゃあ、よろしくー」
驚きのあまりに座りこんでしまった私に手をさし伸べ、その場に立たせてくれながらニコニコ笑っているのは、白いパーカーに細めのジーンズを穿いた白髪の青年だ。
耳朶で揺れる赤いピアスを凝視しながら、私は乾いた唇を動かす。
「シ、シロくん……?」
彼はにっこりと嬉しそうに笑って、ぽんと軽く私の頭を叩いた。
「そう、シロでーす」
赤いスニーカーを脱いで彼が家の中へ入っていってしまうと、買い物袋を下げた背の高い男が私に迫る。
「邪魔だ、どけ。こんなところにつっ立ってないで、さっさと中へ入れ」
「は、はいっ!」
威圧感のある声に、思わず反射的に返事をしてしまってから、私は黒シャツ黒パンツのやけにスタイルのいい男に、おそるおそる問いかけた。
「……クロさん?」
彼は若干目に被りぎみの前髪ごしに、ギロリと私を睨む。
「そうだ」
さもあたりまえというふうに家の奥へ入っていく背中を、私は慌てて追いかけた。
「ここって、お二人が住んでる家なんですか?」
だとしたら勝手に上がりこんで申し訳なかったと、謝ろうと思ったのだ。
しかし、台所から続いている右奥の部屋で、畳に座って大きなクッションを抱きしめ、卓袱台に広げた雑誌をぱらぱら捲っているシロは、それから目線を上げずに、軽く答える。
「違うよーん」
提げていた買い物袋を台所のテーブルの上に置き、椅子にかけられていた紺色のエプロンをつけているクロは、呆れたように言い捨てた。
「お前の家だろう。何言ってるんだ」
さも当然というふうに言われても、私はわけがわからない。
「え? でも……なんで? どうして?」
完全に混乱して頭を掻きむしる私に、ようやく雑誌から顔を上げたシロが、すっと真っ直ぐな視線を向ける。
それは、吸いこまれてしまいそうなほどに綺麗な、薄い金色の瞳――。
「確かに俺たちは、この家ができた五十年前からここに住んでるけど、あくまでも間借り。正式な住人じゃないよ。その間ここに住んだ正式な住人は、俺たちが居るってだーれも気づかなかったけどね……居るんだけど、居ないのと同じ……瑞穂ちゃんがさっき入ってきた、狭間の時間の宅配便屋と同じようなものだよ」
「…………」
どうやら説明をしてくれたらしいのだが、ますますわからない。
沈黙する私に、台所で何か作っているらしいクロが、振り向きざまにびしっと菜箸の先を向けた。
「すぐに嫌でもわかる。それより俺たちと一緒に晩飯食べるのか、瑞穂。食べないのか」
いきなり呼び捨てにされて戸惑いながらも、台所から漂ってくるいい匂いに、お昼から焼き芋一つしか食べていないお腹が敏感に反応してしまい、私は素直に頷く。
「食べます……」
「よし」
再びこちらへ向けられたクロの背中は、これまで見た彼のどんな表情よりも、嬉しそうに感じた。
驚きのあまりに座りこんでしまった私に手をさし伸べ、その場に立たせてくれながらニコニコ笑っているのは、白いパーカーに細めのジーンズを穿いた白髪の青年だ。
耳朶で揺れる赤いピアスを凝視しながら、私は乾いた唇を動かす。
「シ、シロくん……?」
彼はにっこりと嬉しそうに笑って、ぽんと軽く私の頭を叩いた。
「そう、シロでーす」
赤いスニーカーを脱いで彼が家の中へ入っていってしまうと、買い物袋を下げた背の高い男が私に迫る。
「邪魔だ、どけ。こんなところにつっ立ってないで、さっさと中へ入れ」
「は、はいっ!」
威圧感のある声に、思わず反射的に返事をしてしまってから、私は黒シャツ黒パンツのやけにスタイルのいい男に、おそるおそる問いかけた。
「……クロさん?」
彼は若干目に被りぎみの前髪ごしに、ギロリと私を睨む。
「そうだ」
さもあたりまえというふうに家の奥へ入っていく背中を、私は慌てて追いかけた。
「ここって、お二人が住んでる家なんですか?」
だとしたら勝手に上がりこんで申し訳なかったと、謝ろうと思ったのだ。
しかし、台所から続いている右奥の部屋で、畳に座って大きなクッションを抱きしめ、卓袱台に広げた雑誌をぱらぱら捲っているシロは、それから目線を上げずに、軽く答える。
「違うよーん」
提げていた買い物袋を台所のテーブルの上に置き、椅子にかけられていた紺色のエプロンをつけているクロは、呆れたように言い捨てた。
「お前の家だろう。何言ってるんだ」
さも当然というふうに言われても、私はわけがわからない。
「え? でも……なんで? どうして?」
完全に混乱して頭を掻きむしる私に、ようやく雑誌から顔を上げたシロが、すっと真っ直ぐな視線を向ける。
それは、吸いこまれてしまいそうなほどに綺麗な、薄い金色の瞳――。
「確かに俺たちは、この家ができた五十年前からここに住んでるけど、あくまでも間借り。正式な住人じゃないよ。その間ここに住んだ正式な住人は、俺たちが居るってだーれも気づかなかったけどね……居るんだけど、居ないのと同じ……瑞穂ちゃんがさっき入ってきた、狭間の時間の宅配便屋と同じようなものだよ」
「…………」
どうやら説明をしてくれたらしいのだが、ますますわからない。
沈黙する私に、台所で何か作っているらしいクロが、振り向きざまにびしっと菜箸の先を向けた。
「すぐに嫌でもわかる。それより俺たちと一緒に晩飯食べるのか、瑞穂。食べないのか」
いきなり呼び捨てにされて戸惑いながらも、台所から漂ってくるいい匂いに、お昼から焼き芋一つしか食べていないお腹が敏感に反応してしまい、私は素直に頷く。
「食べます……」
「よし」
再びこちらへ向けられたクロの背中は、これまで見た彼のどんな表情よりも、嬉しそうに感じた。
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