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6 あやかしの宅配便
①
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外へ出ると、彼らの服装が和装に変わっていた。
「ええっ?」
着替える時間などなかったはずなのに、不可解なことが多すぎて、私はもう考えることを放棄する。
(もういい……もう何が起きても、夢でも見てるんだと思うことにする……)
私の決意が通じたわけでもないのだろうが、「これが仕事着だから」と簡単な説明をして、シロが私に問いかける。
「これから二手に分かれるんだけど、瑞穂ちゃんは俺とクロ、どっちと一緒に……」
おそらく、どちらに同行するか、希望を聞いてくれようとしたのだろうが、その言葉の途中でクロのほうはさっさと先に行ってしまった。
「って……おい、クロ!」
呼び止めようとしたシロはすぐにそれを断念し、私に肩を竦めてみせる。
「まあ、俺のほうがいいだろうね……初心者としては……」
(初心者としては……?)
首を傾げながら玄関に鍵をかける私を待って、シロが連れて行ってくれた宅配便営業所の裏には、十個ほどの荷物が置かれていた。
「半分は、もうクロが持って行ってくれたから」
言いながら彼が懐から布のようなものを出して、荷物の上にふわりと広げて掛けると、そこにあったものは全てなくなり、布がふぁさりと地面に落ちる。
「えええええっ!?」
いちいち驚いて大きな声を上げる私の反応が、面白くてたまらないらしく、シロは満足そうに笑いながら布をもう一度畳み、大切に懐にしまう。
「瑞穂ちゃんといると飽きなさそうだなー」
「こっちは、何が何だかわからな過ぎて、もう考える気力もないんですけど……」
「あはは、それでいいと思うよ」
屈託なく笑って、シロは私から少し距離を取った。
街灯の途切れた大鳥居前は、とても暗くて、一メートルほどの距離でも、離れてしまうと闇に沈み、何も見えない。
そこに彼が居る気配はあるが、目には何も映らない。
「シロくん……?」
不安になって呼びかけると、「なあに?」と答える声があった。
ほっとして闇の中に目を凝らすと、ぼんやりと白い影が見える。
しかしそれが、再びこちらへ近づいて来るにつれ、思わず上げそうになった悲鳴を、私は両手で口を覆うことで必死に我慢した。
(何これ? 何これ! 何これーーーーっ!?)
闇の中から現われたのは、白い着物姿の青年ではなく、大きな獣だった。
人が乗れるほどの大きさで、全身を白い毛に覆われており、尖った耳に、長いしっぽ、裂けたような口。
(犬? とはちょっとちがうような……狼? って、本物見たことないけど……何? 何いっ?)
私は決して声に出して言っていないが、どうやら反応と表情でだいたいわかるらしい。
獣が切れ長の大きな金色の目を細め、口を少し開けて、笑うように首を傾げた。
「狐だよ、狐」
「――――!」
ちらりと鋭い牙がのぞく口から、普通に人間の言葉が出てきたことに、思わず息を呑む。
よく見ると、尖った耳の先で赤いピアスがきらりと煌めいていた。
「シ……ロ……くん?」
恐る恐る問いかけた私に、獣はますます嬉しそうに大きな口を開く。
「そうそう。さすが瑞穂ちゃん、順応力高いねー」
その口から聞こえる声は確かにシロのものだったが、私は決して彼が言うように『順応力が高い』などという状態ではなかった。
脚から力が抜けて、へなへなとその場に座りこみそうになる。
「おっと」
シロが素早く走りこんで、背中で私を受け止めてくれた。
「ありがとう……」
なんとも言えない気持ちで真っ白な毛を掴んだ私を、下から掬い上げるようにして、背中に乗せてしまう。
「しっかり掴まっててよ」
私が返事もできないでいるうちに、シロは走り出す。
周りの景色が飛び去っていくようなものすごいスピードで――。
「ひええええええええっ」
振り落とされてはたまらないと、背にしがみついた私を「あはは」と軽く笑いながら、白い狐に変貌したシロは、夜の山道を駆け抜けた。
「ええっ?」
着替える時間などなかったはずなのに、不可解なことが多すぎて、私はもう考えることを放棄する。
(もういい……もう何が起きても、夢でも見てるんだと思うことにする……)
私の決意が通じたわけでもないのだろうが、「これが仕事着だから」と簡単な説明をして、シロが私に問いかける。
「これから二手に分かれるんだけど、瑞穂ちゃんは俺とクロ、どっちと一緒に……」
おそらく、どちらに同行するか、希望を聞いてくれようとしたのだろうが、その言葉の途中でクロのほうはさっさと先に行ってしまった。
「って……おい、クロ!」
呼び止めようとしたシロはすぐにそれを断念し、私に肩を竦めてみせる。
「まあ、俺のほうがいいだろうね……初心者としては……」
(初心者としては……?)
首を傾げながら玄関に鍵をかける私を待って、シロが連れて行ってくれた宅配便営業所の裏には、十個ほどの荷物が置かれていた。
「半分は、もうクロが持って行ってくれたから」
言いながら彼が懐から布のようなものを出して、荷物の上にふわりと広げて掛けると、そこにあったものは全てなくなり、布がふぁさりと地面に落ちる。
「えええええっ!?」
いちいち驚いて大きな声を上げる私の反応が、面白くてたまらないらしく、シロは満足そうに笑いながら布をもう一度畳み、大切に懐にしまう。
「瑞穂ちゃんといると飽きなさそうだなー」
「こっちは、何が何だかわからな過ぎて、もう考える気力もないんですけど……」
「あはは、それでいいと思うよ」
屈託なく笑って、シロは私から少し距離を取った。
街灯の途切れた大鳥居前は、とても暗くて、一メートルほどの距離でも、離れてしまうと闇に沈み、何も見えない。
そこに彼が居る気配はあるが、目には何も映らない。
「シロくん……?」
不安になって呼びかけると、「なあに?」と答える声があった。
ほっとして闇の中に目を凝らすと、ぼんやりと白い影が見える。
しかしそれが、再びこちらへ近づいて来るにつれ、思わず上げそうになった悲鳴を、私は両手で口を覆うことで必死に我慢した。
(何これ? 何これ! 何これーーーーっ!?)
闇の中から現われたのは、白い着物姿の青年ではなく、大きな獣だった。
人が乗れるほどの大きさで、全身を白い毛に覆われており、尖った耳に、長いしっぽ、裂けたような口。
(犬? とはちょっとちがうような……狼? って、本物見たことないけど……何? 何いっ?)
私は決して声に出して言っていないが、どうやら反応と表情でだいたいわかるらしい。
獣が切れ長の大きな金色の目を細め、口を少し開けて、笑うように首を傾げた。
「狐だよ、狐」
「――――!」
ちらりと鋭い牙がのぞく口から、普通に人間の言葉が出てきたことに、思わず息を呑む。
よく見ると、尖った耳の先で赤いピアスがきらりと煌めいていた。
「シ……ロ……くん?」
恐る恐る問いかけた私に、獣はますます嬉しそうに大きな口を開く。
「そうそう。さすが瑞穂ちゃん、順応力高いねー」
その口から聞こえる声は確かにシロのものだったが、私は決して彼が言うように『順応力が高い』などという状態ではなかった。
脚から力が抜けて、へなへなとその場に座りこみそうになる。
「おっと」
シロが素早く走りこんで、背中で私を受け止めてくれた。
「ありがとう……」
なんとも言えない気持ちで真っ白な毛を掴んだ私を、下から掬い上げるようにして、背中に乗せてしまう。
「しっかり掴まっててよ」
私が返事もできないでいるうちに、シロは走り出す。
周りの景色が飛び去っていくようなものすごいスピードで――。
「ひええええええええっ」
振り落とされてはたまらないと、背にしがみついた私を「あはは」と軽く笑いながら、白い狐に変貌したシロは、夜の山道を駆け抜けた。
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