大鳥居横あやかし宅配便~ワケアリ荷物お届けします~

シェリンカ

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9 昨日までとは違う日々

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 高卒で入社した『そよ風宅配便』で、たった一人の上司として出会った雅司とはすぐに意気投合し、つきあうようになった。
 八歳年上だが、それを意識させない少年のような性格で、それが私の目には魅力に映ったが、三年が過ぎてもただそれだけだった。

 この春にアルバイトで営業所に入った理加ちゃんと、若い子の間で流行っている話題で盛り上がると、雅司はあっさりと私から彼女に乗り換えた。
 その程度の関係。
 その程度のつきあい。

 だから雅司に突然別れ話をされて、とても腹は立ったが、落ちこんでいる自覚は私にはなかった。
 でも二人を前にすると、やはり心にひっかかるものがある。

「…………」

 複雑な気持ちで、コンビニから少し離れた場所で待っていた私に、店から出てきたシロが笑顔で駆け寄る。

「お待たせー」

 袋を片手に出てきたクロも黙ったままその隣に並び、美青年二人に目の前に立たれて、私は少し焦った。

「どうしたの……?」

 背の高い二人に阻まれて、コンビニの出入り口が見えない。
 雅司と理加ちゃんが仲良く帰っていく姿なんて、特に見なくていいはずだが、どうしても気になる私を邪魔するかのように、二人は目の前から退いてくれない。

「ちょっと、シロくん? ……クロさん?」

 二人の間をかき分けようと私が腕を伸ばした時、シロが身を屈めて、私に顔を近づけた。
 白い柔らかそうな髪が、私の頬に触れそうなほど近い位置で揺れる。

「お望みなら俺の得意技、今すぐまたここで始めようか?」

 意味深に肩に腕をまわされ、私は焦った。

「いらない! いらないから!」

 私が何に気がついて、どういう気持ちでコンビニを飛び出したのか、ひょっとすると察してくれたのかもしれない。
 大学の友人たちと綾音さんに向かってしたように、恋人のふりをしようかとシロに持ちかけられ、私は全力でお断りする。

(だってそんなの虚しいだけじゃない! あっちは本物の恋人同士だけど、こっちは完全にニセモノなんだから……!)

 ぶるぶると首を振る私を見て、シロがにやりと笑った。

「だったら……」

 彼がくるりと踵を返して私から離れると同時に、クロが手にしていた荷物をシロに押しつけ、私へ手を伸ばす。

「わかってる」

 黒シャツに包まれた広い胸に頬を押しつけるような格好で、私はクロにしっかりと抱きしめられた。

(きゃあああああ)

 あまりのことに心の中で悲鳴を上げる私を、クロはますます腕の中に抱きこむ。

「うるさい。少し黙っていろ」
(私、声に出して叫んでないよね!?)
「心の声がうるさい」
(…………)

 言葉を発さなくても会話が成立していることに、もはや疑問を感じる心の余裕もない。
 心臓がけたたましく鳴り、軽いパニック状態だった私は、次のクロの呼びかけで、はっと我に返った。
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