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11 ふしぎな女の子
①
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誰もいなくなった家で、一人で留守番しているのも暇で、簡単に室内を掃除したあと、私は外へ出てみた。
昨日は暗い中でしか見なかったのでそれほど実感がなかったが、かなり古い木造の建物だ。
(住宅メーカーが建てた家って感じじゃないわよね……いかにも昭和。まさかそれ以上?)
周囲を雑草に囲まれているので、目立つものだけでもと抜いていると、次第に止まらなくなってきた。
家から営業所へと続く空地――配送車が車を横付けする場所と私が車を停めている場所も含めて――を真剣に草むしりし始めると、額にじんわり汗が浮かんでくる。
(なかなかの重労働……これって終わらなくない?)
たいした準備もせずに作業を始めたことを後悔していると、営業所の入り口がある参道のほうから聞き覚えのある声がした。
「瑞穂ちゃん? 草むしりしとるの? 帽子を被らんと日射病になるよ」
顔を上げて見てみると、昨日焼き芋をくれたお婆さんだった。
「あ……ですよねぇ……」
雑草を踏みしめながら傍までやってきたお婆さんは、自分が被っていた麦わら帽子を脱いで、私に被せてくれる。
つばの広い帽子で、固定用の二本のリボンが付いており、それを私の顎の下で結んでくれた。
「私はもう今日の畑仕事が終わったところじゃけぇ、貸してあげる。時々は休憩もせんといかんよ」
営業所の隣にある自動販売機を指さされ、確かにその通りだと、私は頷く。
「はい、そうですね。ありがとうございます!」
お婆さんは腰の後ろで手を組んで、ニコニコ笑いながら帰って行った。
「若い人が住むようになったら、このへんも少し活気づくねぇ……」
その言葉を聞いて、私ははっと気がつく。
「あ……」
私はまだ、この社宅に住むと決めたわけではなかった。
昨日はすっかり暗くなってしまい、夜道を運転するのが怖かったので、ひとまずここに泊ることにしたのだった。
それなのに昨夜からの成り行きで、まるでこれからここで暮らすかのように、草むしりなど始めてしまっている。
(しかもちゃっかりと、今晩のおかずのリクエストもしてるし……住むにしても、必要なものを取りに、いったん街のアパートへ帰ったほうがいいかな?)
古い建物と、営業所横に停めた愛車を交互に見ていると、背後から視線を感じた。
(…………?)
ふり返って見てみると、営業所の斜め前に聳え立つ、御橋神社の大鳥居の陰に、四、五歳くらいの女の子がしゃがんでいる。
(……ん?)
肩の位置で切り揃えたおかっぱ頭の、色の白い可愛らしい女の子だった。
顔の半分ほどもある大きな目を輝かせて、私を見ている。
周りを見渡してみても、親らしき人影はない。
(ええっと……)
あまりにまじまじと見られていることが照れ臭くて、手を振ってみると、女の子はぱっと笑顔になって、一生懸命に手を振り返す。
(すごい可愛い子だな……)
何度かそれをくり返した末に試しに手招きしてみると、待ってましたとばかりにぱたぱたぱたと足音を響かせて、私のもとへ走ってきた。
神社の巫女さんが着ているような、紅い袴と白い着物を着た子だった。
昨日は暗い中でしか見なかったのでそれほど実感がなかったが、かなり古い木造の建物だ。
(住宅メーカーが建てた家って感じじゃないわよね……いかにも昭和。まさかそれ以上?)
周囲を雑草に囲まれているので、目立つものだけでもと抜いていると、次第に止まらなくなってきた。
家から営業所へと続く空地――配送車が車を横付けする場所と私が車を停めている場所も含めて――を真剣に草むしりし始めると、額にじんわり汗が浮かんでくる。
(なかなかの重労働……これって終わらなくない?)
たいした準備もせずに作業を始めたことを後悔していると、営業所の入り口がある参道のほうから聞き覚えのある声がした。
「瑞穂ちゃん? 草むしりしとるの? 帽子を被らんと日射病になるよ」
顔を上げて見てみると、昨日焼き芋をくれたお婆さんだった。
「あ……ですよねぇ……」
雑草を踏みしめながら傍までやってきたお婆さんは、自分が被っていた麦わら帽子を脱いで、私に被せてくれる。
つばの広い帽子で、固定用の二本のリボンが付いており、それを私の顎の下で結んでくれた。
「私はもう今日の畑仕事が終わったところじゃけぇ、貸してあげる。時々は休憩もせんといかんよ」
営業所の隣にある自動販売機を指さされ、確かにその通りだと、私は頷く。
「はい、そうですね。ありがとうございます!」
お婆さんは腰の後ろで手を組んで、ニコニコ笑いながら帰って行った。
「若い人が住むようになったら、このへんも少し活気づくねぇ……」
その言葉を聞いて、私ははっと気がつく。
「あ……」
私はまだ、この社宅に住むと決めたわけではなかった。
昨日はすっかり暗くなってしまい、夜道を運転するのが怖かったので、ひとまずここに泊ることにしたのだった。
それなのに昨夜からの成り行きで、まるでこれからここで暮らすかのように、草むしりなど始めてしまっている。
(しかもちゃっかりと、今晩のおかずのリクエストもしてるし……住むにしても、必要なものを取りに、いったん街のアパートへ帰ったほうがいいかな?)
古い建物と、営業所横に停めた愛車を交互に見ていると、背後から視線を感じた。
(…………?)
ふり返って見てみると、営業所の斜め前に聳え立つ、御橋神社の大鳥居の陰に、四、五歳くらいの女の子がしゃがんでいる。
(……ん?)
肩の位置で切り揃えたおかっぱ頭の、色の白い可愛らしい女の子だった。
顔の半分ほどもある大きな目を輝かせて、私を見ている。
周りを見渡してみても、親らしき人影はない。
(ええっと……)
あまりにまじまじと見られていることが照れ臭くて、手を振ってみると、女の子はぱっと笑顔になって、一生懸命に手を振り返す。
(すごい可愛い子だな……)
何度かそれをくり返した末に試しに手招きしてみると、待ってましたとばかりにぱたぱたぱたと足音を響かせて、私のもとへ走ってきた。
神社の巫女さんが着ているような、紅い袴と白い着物を着た子だった。
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