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11 ふしぎな女の子
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「神社の子?」
鳥居の奥にあるはずの御橋神社のほうを指さしてみせると、細い首が折れてしまいそうにこっくりと頷かれる。
「お父さんか、お母さんは?」
少女は少し悲しそうな顔になって、黒髪をさらさらと揺らして首を横に振った。
(お仕事中なのか、そもそもいないのか……なんにせよこんな小さな子に、根掘り葉掘り聞くことはないか……)
少女が私の隣にしゃがみこんで、真似をして草むしりを始めたので、着物の袖が地面につかないようにたくし上げてやる。
お婆さんに貸してもらった麦わら帽子を被せてやると、ぱあっと笑顔になった。
(本当にお人形みたいに可愛い子だな……)
しばらく二人で草むしりをしていたが、お昼が近くなったこともあり、いったん作業を中断する。
「喉が渇いたよね……何か飲む?」
営業所隣に置かれた自動販売機へ向かうと、少女もぱたぱたとついてきた。
子供の目線では並んでいる商品が見えないので、脇を持って抱き上げてやる。
想像していた以上に軽くて、まるで本当に人形を抱きかかえているかのようだった。
「どれがいいかな?」
少女が指さした小さなオレンジジュースのペットボトルを私も選んで、並んで営業所の入り口の段差に腰を下ろす。
キャップが開けられなくて少女が悪戦苦闘していたので、開けて手渡してやると、少女はすぐに飲み口に口をつけ、嬉しそうな笑顔になった。
「おいしい?」
問いかけには頷くので、意思の疎通はできているが、少女は言葉を話さない。
これぐらいの年齢の子どもが、どれぐらい会話ができるのかに私は詳しくないのでなんとも言えないが、あまりおしゃべりなほうでないのはまちがいない。
小さな喉をこくこくと鳴らしてジュースを飲んでいた少女が、飲み終わって私の隣で立ち上がったので、ちょうど同じ目線になった大きな目を見つめて、私は言った。
「そろそろお昼ご飯だから、お家に帰ったほうがいいんじゃないかな? お家の人が捜してるかもよ?」
少女は長い睫毛をぱちぱちと瞬かせて、神社の鳥居のほうをふり返った。
少女の黒髪を巻き上げて、さあっと一陣の風が吹き、鳥居の下を潜り抜けて行ったような気がした。
(え……?)
私が瞬きする間に、少女がまた私のほうを向く。
「うん……」
可愛らしい声で深々と頷くので、私はカラになったペットボトルをその手から取ってあげた。
「またね。ええと……」
少女の名前を知らないので、なんと呼びかけていいのか困っていると、少女が再び口を開く。
「みや……」
小さな声で名前らしきものを伝えてくれたので、私は笑顔で言い直した。
「またね、みやちゃん」
少女はぱあっと笑顔になって、麦わら帽子を脱いで私に返すと、鳥居の向こうへ帰っていく。
途中何度もこちらをふり返って、手を振っていく仕草が愛らしかった。
その姿が見えなくなるまで見送って、私も腰を上げる。
「ひとまずアパートに帰って、必要なものを取ってこようかな……」
ここに住むか、営業のある日だけ街から通うか迷っていたのだが、草むしりをしているうちに自然と、ここで住むほうに気持ちが傾いていた。
コンビニもないし、人は少ないし、利便性には欠けるが、このゆったりとした時間の流れは嫌いじゃない。
一度会ったらもう身内のような、気持ちのかけあい方も――。
みやちゃんから返された焼き芋のお婆さんの帽子を手に、私は営業所横の空地に停めてある車へ向かった。
「みやちゃんとも、『またね』って約束したしね……」
街の中心にあるアパートへといったん帰る道は、山の上の営業所へ飛ばされたと怒り半分で来た往路より、目に映る木々も鮮やかで、心が浮き立つようだった。
鳥居の奥にあるはずの御橋神社のほうを指さしてみせると、細い首が折れてしまいそうにこっくりと頷かれる。
「お父さんか、お母さんは?」
少女は少し悲しそうな顔になって、黒髪をさらさらと揺らして首を横に振った。
(お仕事中なのか、そもそもいないのか……なんにせよこんな小さな子に、根掘り葉掘り聞くことはないか……)
少女が私の隣にしゃがみこんで、真似をして草むしりを始めたので、着物の袖が地面につかないようにたくし上げてやる。
お婆さんに貸してもらった麦わら帽子を被せてやると、ぱあっと笑顔になった。
(本当にお人形みたいに可愛い子だな……)
しばらく二人で草むしりをしていたが、お昼が近くなったこともあり、いったん作業を中断する。
「喉が渇いたよね……何か飲む?」
営業所隣に置かれた自動販売機へ向かうと、少女もぱたぱたとついてきた。
子供の目線では並んでいる商品が見えないので、脇を持って抱き上げてやる。
想像していた以上に軽くて、まるで本当に人形を抱きかかえているかのようだった。
「どれがいいかな?」
少女が指さした小さなオレンジジュースのペットボトルを私も選んで、並んで営業所の入り口の段差に腰を下ろす。
キャップが開けられなくて少女が悪戦苦闘していたので、開けて手渡してやると、少女はすぐに飲み口に口をつけ、嬉しそうな笑顔になった。
「おいしい?」
問いかけには頷くので、意思の疎通はできているが、少女は言葉を話さない。
これぐらいの年齢の子どもが、どれぐらい会話ができるのかに私は詳しくないのでなんとも言えないが、あまりおしゃべりなほうでないのはまちがいない。
小さな喉をこくこくと鳴らしてジュースを飲んでいた少女が、飲み終わって私の隣で立ち上がったので、ちょうど同じ目線になった大きな目を見つめて、私は言った。
「そろそろお昼ご飯だから、お家に帰ったほうがいいんじゃないかな? お家の人が捜してるかもよ?」
少女は長い睫毛をぱちぱちと瞬かせて、神社の鳥居のほうをふり返った。
少女の黒髪を巻き上げて、さあっと一陣の風が吹き、鳥居の下を潜り抜けて行ったような気がした。
(え……?)
私が瞬きする間に、少女がまた私のほうを向く。
「うん……」
可愛らしい声で深々と頷くので、私はカラになったペットボトルをその手から取ってあげた。
「またね。ええと……」
少女の名前を知らないので、なんと呼びかけていいのか困っていると、少女が再び口を開く。
「みや……」
小さな声で名前らしきものを伝えてくれたので、私は笑顔で言い直した。
「またね、みやちゃん」
少女はぱあっと笑顔になって、麦わら帽子を脱いで私に返すと、鳥居の向こうへ帰っていく。
途中何度もこちらをふり返って、手を振っていく仕草が愛らしかった。
その姿が見えなくなるまで見送って、私も腰を上げる。
「ひとまずアパートに帰って、必要なものを取ってこようかな……」
ここに住むか、営業のある日だけ街から通うか迷っていたのだが、草むしりをしているうちに自然と、ここで住むほうに気持ちが傾いていた。
コンビニもないし、人は少ないし、利便性には欠けるが、このゆったりとした時間の流れは嫌いじゃない。
一度会ったらもう身内のような、気持ちのかけあい方も――。
みやちゃんから返された焼き芋のお婆さんの帽子を手に、私は営業所横の空地に停めてある車へ向かった。
「みやちゃんとも、『またね』って約束したしね……」
街の中心にあるアパートへといったん帰る道は、山の上の営業所へ飛ばされたと怒り半分で来た往路より、目に映る木々も鮮やかで、心が浮き立つようだった。
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